精神科・心療内科・カウンセリングの違い

はじめに

メンタルヘルスに関する問題を相談しようと医療機関を探していると、「精神科」「心療内科」「神経科」「神経内科」「メンタルヘルス科」など、さまざまな診療科名が目に入るかと思います。では、これらの中でどこに相談すればよいのでしょうか。この記事では、各科の役割や違いを詳しく解説いたします。

心の病気を診療するのは精神科

心の病気を診療するのは精神科

メンタルヘルスの問題に対して、基本的に診療を担当するのは「精神科」です。精神科は、正式には「精神神経科」と呼ばれることもあり、時に「神経科」と表記されることもあります。これらは同義で、心の病気を専門的に診療する医療機関です。

一方、「神経内科」は脳や神経に関連する身体的な病気、たとえば脳梗塞、パーキンソン病、アルツハイマー病などを診療する内科です。したがって、心の病気の治療は対象外です。

よく混同される「心療内科」

よく混同される「心療内科」

精神科とよく混同されがちなのが「心療内科」です。心療内科とは、ストレスによって生じる体調不良や身体症状に対して治療を行う内科の一分野です。心療内科は日本独自の診療科で、約50年前に設立されました。身体的な病気に対して、心の面からのアプローチを加える「全人的医療」を行うもので、もともとはストレスの影響が大きい気管支喘息や胃潰瘍など「心身症」の治療を中心に行っていました。

その後、軽症の摂食障害やうつ病など、身体症状を伴う軽度の精神疾患も対象とするようになり、精神科と心療内科で診療内容が一部重なる部分も出てきました。特に1996年以降、病院の看板に「心療内科」と表記することが許可され、社会的な認知度が一気に高まりました。また、1997年には「心療内科医 涼子」というテレビドラマが話題を呼び、一般の認知度がさらに高まりました。こうした背景により、精神科と心療内科が混同されるケースが増え、「心療内科は軽度の精神疾患を診療し、精神科はより重度の精神病を治療する」というイメージが定着したのです。

心療内科医は非常に少ない

心療内科医は非常に少ない

心療内科の専門医は日本全国で約300人と、非常に限られた数しか存在しません。そのため、病院の看板に「心療内科」と表記があっても、実際には精神科医が心療内科として診療しているケースも多いのが現状です。精神科は「薬物療法」「入院治療」といったイメージがつきやすく、敷居が高いと感じる方もいるため、「心療内科」の表記で通院しやすくしている病院もあります。しかし、内科医がメンタルヘルス分野の診療を行う場合もあり、その際には専門性の観点から注意が必要です。

専門医制度の影響とメンタルヘルス科の新設

専門医制度の影響とメンタルヘルス科の新設

精神科と心療内科の混同が生じる背景には、日本の専門医制度が他国に比べて曖昧であったことが挙げられます。かつては医師が自らの専門を自由に名乗ることができましたが、2018年に日本でも専門医制度が統一され、現在では医師が専門分野を名乗る際には厳密なルールが適用されるようになっています。このため、精神科や内科医が「心療内科」を名乗ることは基本的に制度上認められていません。最近では、精神科のイメージ改善を目指し、「メンタルヘルス科」という名称を使用する医療機関も増えつつあります。

精神科とカウンセリングの違い

精神科とカウンセリングの違い

メンタルヘルスの問題を相談する際、精神科医とカウンセラーの違いについても知っておくとよいでしょう。精神科医は心の病気を診療・治療することを主な業務とし、医療保険の適用も受けられます。一方、カウンセラーは主に心の悩みに対する相談を行いますが、医療行為ではないため保険は適用されません。しかし、悩みと病気の境界線は曖昧で、両者の役割が重なることも多いのが実情です。近年ではカウンセラーが認知行動療法などの技法を用いて治療の一部を担うことも増えてきました。

2017年には、日本で初めてカウンセラーに対する国家資格である「公認心理士」資格が創設されました。これにより、カウンセラーも医療分野での活動が可能になり、今後はより多くの場面で医療の一端を担うことが期待されています。

まとめ

メンタルヘルスに関して相談したい場合、基本的には「精神科」を選ぶことが推奨されますが、軽度のストレス関連の身体症状がある場合には「心療内科」が適しています。精神科、心療内科、カウンセリングにはそれぞれ役割と得意分野が異なります。ご自身の状態や希望に応じた診療科を選ぶための参考になれば幸いです。