精神科の薬は危険なの?

精神科の薬は本当に危険?誤解されがちな精神薬について解説

精神科で処方される薬について、「飲んではいけない」といった報道や特集を目にしたことがあるでしょうか。特に抗不安薬や睡眠薬などが、その依存性や副作用についてメディアで取り上げられることが多いです。しかし、「飲んではいけない」という言葉の真意を理解しないまま薬への不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。そこで、よく取り沙汰される精神薬についての誤解とその真実を丁寧に解説します。


デパス(エチゾラム):抗不安薬の誤解

まず、飲んではいけない薬のリストに必ず登場するのが「デパス」です。デパスは「エチゾラム」という成分を含む抗不安薬で、精神的な安定を保つために使用される薬です。多くのジェネリック薬が存在し、抗不安薬として広く処方されてきましたが、依存性があるため「飲み続けてはいけない」と言われることがあります。

デパスの効果と依存性

デパスは非常に効果の強い薬で、摂取後すぐに不安や緊張が緩和されるため、特に初期の症状緩和には有効です。しかし、デパスは依存性を引き起こしやすい傾向があります。とはいえ、すべての人がデパスに依存してしまうわけではありません。薬を飲み続けるかどうかは、その人の体質や性格に依るところが大きく、依存症になるかは個々の問題です。デパスはお酒と似たような側面があり、摂取しても必ず依存症になるわけではありません。

依存性はどうして起こるのか?

依存性が生じる原因は、薬自体の成分というより、薬がもたらす即効性にあるとされています。すぐに効果を感じる薬は、使用者に「頼りたい」という感情を生じさせやすく、心理的な依存が起きやすいのです。また、依存性は個人の体質や性格によっても左右されます。しかし、医師の指示に従い適切に服用すれば問題はありません。医師からの指示を守っている限り、依存症に陥るリスクは低いといえます。


デパスをやめる際に起こりうる離脱症状

デパスの服用を長期にわたって続けた場合、病気が治っても薬をやめることで頭痛や体のだるさといった「離脱症状」が生じることがあります。これは薬を急に中止することで体がデパスの効果を失い、それに反応してしまうからです。離脱症状が心配な場合は、他の依存性が少ない薬に変更するなどの方法があり、医師に相談すると良いでしょう。

なお、「病気が治っていないのに勝手に薬をやめて症状が再発した」というケースは、離脱症状ではありません。薬が症状を抑えていたために、一時的に状態が良くなっていただけの可能性がありますので、こういった場合も医師に相談することが大切です。


デパスが話題となった背景

デパスが特に注目された理由は、ベンゾジアゼピン系の薬の中でもデパスが一時、他の薬に比べて処方規制が緩かったためです。2016年以前は処方の制限がなく、一度に多量の薬が処方されることもありました。その結果、ネット上でデパスが転売されるなど、薬の乱用や悪用が増え、メディアで取り上げられる機会が増えたのです。しかし現在では、他のベンゾジアゼピン系薬と同じように、1か月分の処方制限が設けられ、ネットでの販売も禁止されています。医師の指示通りに服用すれば、安全に使用できる薬です。


サイレース:悪用が問題になった睡眠薬

睡眠薬としてよく知られる「サイレース」も、デパスと同様に話題になることが多い薬です。サイレースは効果が長時間持続する睡眠薬で、不眠症などの治療に有効とされています。しかし、アメリカでは悪用されることが増え、問題視されています。サイレースをお酒に混ぜて飲ませることで相手を眠らせ、不正な性的行為を行うという事件が多発したため、アメリカでは持ち込みと使用が禁止されました。

現在、日本でもサイレースを水や酒などの液体に溶かすと青色が出るように着色されています。この色素は食品にも使用される安全なものですが、悪用を防止するための対策として施されています。


睡眠薬に対する誤解と不安

睡眠薬は一般的に不安を引き起こしやすい薬です。特に、1960年代にドイツで製造されたサリドマイドという薬が原因となり、「睡眠薬は危険である」という認識が広まりました。当時、サリドマイドは妊婦に投与された結果、死産や障害のある子どもが生まれるという被害が発生しました。これを受けて睡眠薬に対する審査基準が厳しくなり、現在では十分な試験を経た後に市場に出回るようになっていますが、睡眠薬に対する不安は根強く残っています。


睡眠薬で認知症になる?ネット上の誤解

最近、ネット上で「睡眠薬を飲むと認知症になる」という情報を見かけることがあるかもしれません。確かに、睡眠薬には「逆行性健忘症」という副作用がある場合があります。逆行性健忘症とは、睡眠薬で眠っている最中に起こされた際に、行動を覚えていないという一時的な症状です。これは認知症ではなく、睡眠薬による一時的な健忘現象で、特にお酒と併用すると起こりやすいと言われています。


睡眠薬とアルコールは絶対に併用しない

睡眠薬を服用する際、アルコールとの併用は厳禁です。アルコールは薬の作用を強め、逆行性健忘症のリスクを高める可能性があります。また、健忘症が気になる場合には、医師に相談して、ベンゾジアゼピン系以外の健忘症のリスクが少ない睡眠薬を処方してもらうと良いでしょう。


精神科薬の安全な使い方

精神科で処方される安定剤や睡眠薬は、適切な指導とともに使用すれば危険な薬ではありません。一部の副作用や、薬の誤用・乱用の事例が話題性を伴って報道されるため、「危険だ」と誤解されがちですが、医師の処方通りに服用することで安全に効果を得られるものです。不安なことがあれば、ネットの情報に頼るのではなく、医師に直接相談することが重要です。精神科薬に対する偏見や誤解を解消するためにも、正しい知識を持ち、医師と協力して治療を進めていくことが大切です。