ASD(自閉スペクトラム症)の中には、いくつかのタイプに分類される傾向があります。その中でも、比較的少数派ながらも周囲との摩擦を生みやすいと言われているのが「尊大型(そんがた)ASD」です。
尊大型ASDの方は、論理的で優秀な一面がありながらも、自分の考えを他者に押しつけるような言動を取ってしまうことがあり、周囲との軋轢を生みやすい特徴があります。そうした態度は本人の悪意によるものというより、発達特性や過去の学習経験によるものが大きく関係しています。
この記事では、尊大型ASDの特徴を3つに整理し、その背景にある心理や学習の過程を丁寧に説明するとともに、周囲がどのように接することが望ましいのかを紹介していきます。
尊大型ASDの方の最も目立つ特徴のひとつが、「自分のやり方が正しい」と強く信じてしまい、それを他者にも押しつけてしまうという行動です。本人の中では、自分のやり方が最も合理的で優れていると確信しており、周囲の意見に耳を貸すことが難しくなってしまうのです。
たとえば、チームで何かを決める場面でも、「自分の案が一番良い」と思い込み、他人のアイデアをすぐに否定してしまったり、話を最後まで聞かずに自分の主張を押し通そうとする場面が見られることがあります。
このような態度の背景には、過去の成功体験があると考えられます。たとえば、自分のやり方で進めたことで問題が表面的にはうまく解決したという経験があると、「この方法で良かった」と学習してしまい、その後も同じスタイルを繰り返すことになります。たとえ実際には周囲が無理をして合わせていたとしても、その点には気づきにくいのです。

二つ目の特徴は、「強圧的な態度が見られやすい」という点です。特に、自分に対して反対意見を述べたり批判をしてくる相手に対して、必要以上に攻撃的な態度を取ってしまう傾向があります。
このような態度は、職場であればパワハラ的な行動と見なされてしまうリスクがありますし、家庭内であればパートナーが心理的に追い詰められる「カサンドラ症候群」に繋がってしまうこともあります。
また、こうした態度によって人間関係が悪化し、次第に周囲の人が離れていってしまうという結果も招きがちです。結果として、自分の居場所がなくなってしまうことも少なくありません。
尊大型ASDの方は、相手の気持ちを汲み取ることが苦手なことが多く、本人は強く言っている自覚がなかったり、「論理的に正しいことを言っているだけ」と思っていたりします。しかし、受け取る側にとっては威圧的に感じられることが多いため、軋轢が生まれてしまうのです。
尊大型ASDの方には、論理的思考力が高く、学力や専門知識に長けている人が多いという傾向も見られます。学校や職場で高い評価を得ていたり、特定の分野で成果を出していたりすることも珍しくありません。
そのため、自己評価が非常に高くなりやすく、「自分は有能であり、他人よりも正しい判断ができる」といった意識が強まっていきます。このような自信が、時として「他人を見下す」という形で現れてしまうことがあります。
たとえ意識して見下しているつもりがなくても、言葉の端々に上から目線な表現が出てしまったり、相手の意見を聞き流す態度が周囲を疲弊させてしまう要因になります。

では、こうした特徴を持つ尊大型ASDの方とどのように接するのが良いのでしょうか。ここでは、具体的な対応のヒントを紹介します。
◆ まずは信頼関係を築くことが第一
尊大型ASDの方は、どれだけ自己評価が高く見えても、実際には内面に悩みや不安を抱えていることも多くあります。そのため、まずはその悩みに耳を傾け、丁寧に聞き取る姿勢を見せることが重要です。
そうすることで、「この人は自分の役に立つ」「自分の問題を理解してくれる」と感じてもらえるようになります。尊大型ASDの方にとって「役に立つ人」「問題を解決してくれる人」は、信頼できる存在として認識されやすくなります。
◆ ストレートな表現を選ぶ
信頼関係が築かれていれば、遠回しな表現よりもストレートに伝える方が伝わりやすく、喜ばれることすらあります。尊大型の方は、言葉の裏を読むのが苦手な場合もあるため、曖昧な言い方よりは明確な表現の方が適しています。
ただし、信頼関係がない段階でストレートな指摘をしてしまうと、かえって反感を買い、関係性が悪化する恐れがあるため注意が必要です。

尊大型ASDの方と接していくうえで、何より大切なのは「無理をしすぎないこと」です。尊大型の方の特性に理解を示すことは重要ですが、自分の心を犠牲にしてまで関わる必要はありません。
相手との関係に悩んだ場合は、一人で抱え込まず、他の信頼できる人に相談したり、複数人で関わる工夫をすることが大切です。時には福祉職や医療職など、専門家の力を借りることも有効でしょう。
尊大型ASDの方は、突出した論理性や知識を持っている反面、人間関係の中で誤解を招きやすい特性も抱えています。その背景には、過去の成功体験や発達特性に基づく認知のズレがあり、本人に悪意があるわけではないことも多くあります。
大切なのは、その人自身の内面に目を向け、信頼関係を築いたうえで、適切な距離感で関わっていくことです。そして、何よりも自分自身のメンタルヘルスを守りながら、必要な支援をチームで行う姿勢が求められます。