リストカット 家族や友人の方に知ってほしいこと

周囲の支えの必要性

身近な人がリストカットを行っていると聞いたら、どのように感じるでしょうか。驚きや戸惑い、心配が頭をよぎるかもしれません。しかし、こうした自傷行為を止めさせようとするには、まず彼らの背景や心の中を理解することが重要です。リストカットを行う人には、支えとなる家族や友人の理解が必要不可欠です。ここでは、リストカットに関する基本的な知識と、周囲が取るべき対応について詳しく説明します。


自傷行為とは

リストカットは「自傷行為」の一つです。自分を傷つける行為である自傷行為には、リストカット以外にも髪の毛を抜く「抜毛症」や皮膚を焼く、こぶしや頭を壁に打ちつけるなど様々な形があります。さらには、直接的な方法だけでなく、過食嘔吐、薬物乱用、相手を選ばない無謀な性行為、タトゥーや過度のピアスも、自己を傷つける行為として捉えられることがあります。

これらの行為が繰り返される理由として、精神的な苦痛を解消したり、心理的な逃げ場として利用していることが挙げられます。時に、リストカットを行う人は無意識的に癖のように自分を傷つける行動をとることもあるため、「気持ちが不安定だから」「自分に問題があるから」と決めつけず、その背景に耳を傾けることが大切です。


自殺との違いとリストカットの心理

自殺との違いとリストカットの心理

リストカットは、しばしば自殺と混同されますが、異なるものです。自殺は命を絶つことを目的としていますが、リストカットはあくまで「生きていくための逃げ場」を求めて行う行動です。自らを傷つけることで、内面の不安や葛藤が和らいだり、痛みで苦しい感情が一時的に和らぐといった感覚を得るために行われます。特に、血を見ることで「自分が生きている」ことを実感できたり、痛みによって辛さが少し薄れる感覚が得られると述べる人もいます。

ただし、稀にリストカットによって命に関わる傷を負ってしまうケースもあるため、「死ぬわけではないから大丈夫」と楽観視するのは禁物です。周囲が慎重に対応し、見守ることが求められます。


リストカットが引き起こされる背景

リストカットは、様々な原因や背景から引き起こされます。その多くは心理的ストレスや、言葉にできない感情を抱え込んでいることが根底にあります。具体的には、以下のような要因が挙げられます。

  1. 家庭内・恋人からの虐待
    家族やパートナーからの虐待や無視などによって孤立感を感じ、誰にも頼れないという絶望感が背景にあることがあります。
  2. 学校や職場でのストレスや過度の競争
    学校や職場での人間関係のストレス、いじめ、過度の競争にさらされることで自己否定感が増し、自傷行為に至ることがあります。
  3. 喪失体験
    失恋や家族の死など、愛する人との別れによって強い悲しみや虚無感を抱き、リストカットでその感情を解消しようとする場合があります。
  4. 挫折経験
    受験や就職における失敗からの自己否定や絶望が、リストカットにつながることも少なくありません。
  5. メディアの影響
    自傷行為を肯定的に描く映画やドラマ、ハリウッドセレブの体験談が、感受性の強い人に影響を与えることもあります。

リストカットする理由を聞いても明確な答えが出ないことも

リストカットを行う人にその理由を尋ねると、回答が明確でない場合が多々あります。「生きている実感を得るため」「一時的に苦しみが和らぐから」などと答える人もいますが、時には「ただぼんやりと流れる血を見ている」といった反応が返ってくることも。これは、リストカットを行う人が感情を言葉にすることが苦手であったり、自分の行動に対する説明がつかないことが理由です。また、半数以上の人がリストカット中に痛みを感じないという研究もあります。


リストカットを行う人への適切な接し方

リストカットを行う人への適切な接し方

リストカットは、周囲に対する無意識の「SOS」であり、「助けてほしい」「理解してほしい」という心の叫びであることが多いです。しかし、こうした行動は決して周囲に注目してほしいから行われているわけではありません。むしろ「辛い感情を解消する方法が見つからない」という気持ちの現れです。リストカットしている人を叱責したり、無理やり止めさせようとすることは、逆効果になる可能性があります。

自傷行為を行っている人は、感情のコントロールが苦手であることも多いため、安易に「なぜそんなことをするのか」と詰問するのは控えましょう。その代わり、温かく見守りながら、リストカットの背景にある苦しい原因を周囲が推測し、可能であればその原因を取り除く努力をすることが求められます。


リストカットの治療:心理療法やカウンセリングの活用

リストカットの治療には、心理療法やカウンセリングが効果的です。カウンセリングを通じて、家庭環境の見直しや感情の表現方法の支援、そしてリストカット以外の苦痛を解消する方法が提供されます。また、場合によっては家族や周囲の人がカウンセリングを受けることで、本人に対する理解や適切な接し方が身に付きます。しかし、実際にはリストカットを行う本人が治療に消極的である場合も多く、家族や友人がカウンセリングを受けることも多いようです。


精神科での薬物療法が必要なケース

もしリストカットの背後に「強い死への願望」がある場合や、「他の自殺手段も試みている」場合、あるいはうつ病、躁うつ病、統合失調症といった精神疾患が関与していると判断される場合は、精神科での薬物療法が必要になることがあります。また、リストカットの傷跡が本人の苦しみの原因になっている場合、整形外科でリストカット跡を消してくれるレーザー治療や植皮手術を受けることもできます。


リストカットは「生きていくための行動」

リストカットは、自殺と異なり、命を終わらせる目的ではなく、むしろ「生き延びるための無意識的な行為」であるといえます。リストカットをすることで一時的に心のバランスを保ち、現実の苦しみに立ち向かっている人も多いのです。そのため、「何が辛いのか」を理解しようと努め、相手に寄り添うことが周囲にできる最大のサポートです。


家族や友人の理解と支えが、リストカットを行う人の気持ちを落ち着かせる重要な要素になります。リストカットに関する不安や疑問がある場合は、適切な支援を受け、本人や家族全体で心のケアに取り組むことをおすすめします。