自分の部屋が散らかっている、片づけがうまくいかない——そんな悩みを抱えている方は少なくありません。しかし、その背景には単なる「だらしなさ」では片づけられない発達の特性が関係している場合もあります。
今回は、「定型発達」と「発達障害」の方の部屋の特徴の違いや、部屋をきれいに保つための具体的な対策について解説します。
発達障害と一言で言ってもその特性はさまざまですが、部屋の状態にも違いが現れることがよくあります。以下では、代表的な5つの違いを紹介します。
まず最初の違いは、「空間の使い方」です。
発達障害の方は部屋が散らかりやすい傾向があり、定型発達の方は比較的すっきりと整理された部屋にしている場合が多いと言われています。もちろん、これは絶対的なものではなく傾向に過ぎません。
この違いの背景には、空間把握能力の差が関係していると考えられています。たとえば、クローゼットの中をどのように使えば効率的か、収納ボックスをどう活用すれば良いかといった立体的な空間のイメージ力が弱い場合、どうしても片づけや整理整頓がうまくいきません。

掃除や片づけという行為は、一見単純に見えて実際には複数の作業を同時進行でこなす必要があります。どこから手をつけるかを決め、順序立てて動き、物を仕分けし、収納していく——これは立派なマルチタスクです。
発達障害、とくにADHD傾向のある方はこのマルチタスクが非常に苦手であり、「何から手をつけてよいかわからない」と感じることが多いのです。そのため掃除や片づけに強い負担を感じやすく、先延ばしにしてしまう傾向がみられます。
掃除や片づけを始めたものの、途中で他の物に気を取られてしまい、結果として掃除が中途半端に終わってしまう。こうした現象も、集中力が持続しにくいという発達特性の一つです。
特にADHD傾向が強い方では、「片づけの途中に出てきた古い雑誌を読み始めてしまう」などのエピソードがしばしばあります。意図せず注意がそれてしまい、タスクの完了まで辿り着かないことがあるのです。

多くの定型発達の方は、「リモコンはテレビの横」「書類は机の引き出し」といったように、ある程度は物の定位置を設けています。
一方、発達障害の方は物の定位置が曖昧だったり、そもそも決めていなかったりする場合が多く、結果として「どこにしまえばいいかわからない」「片づけられない」となってしまいます。
さらにASD(自閉スペクトラム症)の傾向がある方の場合、独特なこだわりが強く、本人にとってはベストな配置でも、他人からは“散らかっている”ように見えることもあります。
片づけや掃除を日常の中で習慣として組み込めているかどうかも大きな違いの一つです。
定型発達の方は、たとえば「週末に掃除をする」「月曜日は洗濯をする」といったようにある程度ルーティンが決まっている場合が多いです。
しかし、発達障害の方ではこの習慣化が難しく、先延ばし傾向やモチベーションの波などによって、掃除そのものが実行されにくくなることがあります。

発達障害の方は、部屋にある物の量そのものが多いという傾向もあります。
ADHD傾向の方では、衝動買いが止められずに物が増えていくことがあります。買ってから後悔するものの、返品や整理ができず、物だけが蓄積していくという悪循環です。
また、ASD傾向の方ではこだわりが強いため、物を捨てられないという特性があります。「まだ使えるかもしれない」「なくなるのが不安」といった思考が強く、物を手放すことに強い抵抗を感じるのです。
ここからは、発達障害の特性をふまえたうえで、部屋を無理なくきれいに保つための具体的な対策をご紹介します。
● 完璧を目指さない
まず大切なのは、「完璧な部屋」を目指さないことです。
自分が困らない程度に整理されていれば十分という考え方に切り替えることで、心理的負担が軽減されます。
● 物の定位置を決める
「何をどこに置くか」を明確にしておくことで、片づけの負担が格段に軽くなります。収納ボックスに色分けをしたり、キートレーや小物トレーを活用したりするのも効果的です。
また、物は「立てて収納する」「使用頻度が高いものは手前に置く」といった工夫も有効です。
● 掃除の範囲を限定して短時間で行う
掃除を始める際は、「今日は床だけ」「今日はクローゼットの一段目だけ」など、範囲を限定して短時間で終わるようにすることが、集中力やモチベーションを保つコツです。
短時間でも継続することができれば、結果的に部屋全体が整っていきます。
● 衝動買いを防ぐ工夫をする
あらかじめ「今日は〇〇を買う」と決めておき、それ以外のものは買わないルールを作るのも一つの方法です。予算以上の金額を持ち歩かない、ウィンドウショッピングを避けるといった物理的な対策も有効です。
「“あれば便利”は買わない」といった自分なりの基準を持つことも、衝動買いの防止に繋がります。
● 周囲のサポートを頼る
一人で対策を継続することが難しい場合は、信頼できる人に相談することも大切です。一緒に掃除をしてもらったり、片づけの仕組みを整えるのを手伝ってもらったりすることで、取り組みやすさがぐっと上がります。
発達障害の特性は、本人の努力だけではどうにもならない部分があるのも事実です。しかし、それを理解し、自分に合った方法を少しずつ取り入れていくことで、無理のない整理整頓や片づけが可能になります。
大切なのは、自分に合ったやり方を見つけ、「完璧でなくてもいい」と許してあげること。少しずつ、自分が過ごしやすい空間を作っていきましょう。