ASD受動型がトラブルに巻き込まれやすい理由3選とその対策【大人の発達障害】

ASD受動型がトラブルに巻き込まれやすい理由3選とその対策【大人の発達障害】

ASD受動型がトラブルに巻き込まれやすい理由3選とその対策

〜大人の発達障害における生きづらさへの理解とヒント〜

自閉スペクトラム症(ASD)の中でも「受動型」と呼ばれるタイプの方々は、対人関係において表面的には穏やかで協調的に見えることが多い反面、内側ではさまざまなストレスやトラブルを抱えている場合があります。とくに大人になってからは、職場や家庭などの複雑な人間関係の中で、その特性が悪用されたり誤解されたりすることで、深刻なトラブルに巻き込まれることも少なくありません。

本記事では、ASD受動型の方がトラブルに巻き込まれやすい理由を3つ挙げ、その背景とともに、具体的な対策についても詳しく解説します。

トラブルに巻き込まれやすい3つの理由

1. 自己主張が苦手で悪用されやすい

1. 自己主張が苦手で悪用されやすい

ASD受動型の方に共通する特徴のひとつとして、「自己主張の苦手さ」があります。自分の考えや気持ちをはっきりと表現することが難しく、対人関係の中では自分で決断するよりも、他人の意見に従うことでトラブルを避けようとする傾向があります。

こうした姿勢は、言い換えれば「素直で従順」とも言えるかもしれませんが、場合によっては「流されやすい」と見なされ、悪意のある人に付け入られてしまうリスクもはらんでいます。断ることができない性質から、損な役回りを押しつけられたり、金銭的な利用をされたりするなど、対人関係の中で不利益を被ることがあります。

さらに、パートナーや同僚などとの関係性において、感情を押し殺す傾向から、暴力やハラスメントの被害にあっても声を上げられず、長期にわたり苦しむこともあるのです。

2. 受け身だが、内には強いこだわりを持っている

2. 受け身だが、内には強いこだわりを持っている

受動型のASDの方は一見、何でも「はい」と受け入れているように見えるかもしれません。しかし、ASD全般の特徴でもある「こだわりの強さ」は、受動型の方にも例外なく存在しています。

この「外からは受け入れているように見えるが、実は納得していない」という状況が、周囲との齟齬を生む原因になることもあります。心の中では反発や不満を感じながらも、それを表に出すことができず、結果的に「受動的攻撃行動」と呼ばれるような、間接的な反抗をしてしまうことがあります。

たとえば、約束を忘れたふりをする、わざと無視する、あるいは期限を守らないといった行動がそれに該当します。これは悪意によるものではなく、「表現の仕方がわからない」または「言葉で伝えることができない」という苦しみの現れです。

3. 二次障害のリスクが高い

ASD受動型の方は、人に合わせすぎてしまうことから「過剰適応」に陥りやすい傾向があります。自分の感情や欲求を抑え込み、常に周囲に気を使いながら生活しているため、長期的には大きなストレスを抱え込みがちです。

このような状態が続くと、うつ病や不安障害など、いわゆる「二次障害」を発症するリスクが高まります。しかも、表面的にはトラブルを起こすことが少ないため、周囲から気づかれにくいのが厄介な点です。

本人も、自分が疲弊していることに気づかないことが多く、限界を迎えるまで我慢し続けてしまうことがあります。そして気づいたときにはすでに心のバランスが大きく崩れている……というケースも少なくありません。

トラブルを防ぐための3つの対策

トラブルを防ぐための3つの対策

では、こうしたトラブルを未然に防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。以下に具体的な対策を3つ紹介します。

1. 「断る」スキルを身につける

まず最初に重要なのは、「断ること」に対して過度な罪悪感を持たないようにすることです。受動型の方にとって「ノー」と言うことは非常に難しいことかもしれませんが、断ることは自分を守るために必要なスキルです。

たとえば、相手に対して「今の私の状況では難しい」と自分の状態を伝えた上で、「代わりにこういう方法ではどうですか?」と提案する形で伝えると、角が立ちにくくなります。

断るときには、「ありがとう」や「申し訳ない」という感謝や誠意の気持ちを言葉に添えることも有効です。「気持ちは受け取りましたが、今回は難しいです」といった形で断る練習を、少しずつ積み重ねていくことが大切です。

2. 自己理解と自己表現の力を養う

受動型ASDの方は、他人に合わせることに慣れてしまい、自分の本当の感情や欲求に気づきにくくなっている場合があります。だからこそ、「自分は本当はどう感じているのか?」「何を望んでいるのか?」を理解するための時間を意識的に持つことが大切です。

また、自己表現が苦手な方は、無理に言葉で説明しようとせず、自分に合った方法で気持ちを伝える工夫をしてみるのも良いでしょう。たとえば、メモやメールなどの文字によるコミュニケーションが得意なら、それを活用することも立派な自己表現のひとつです。

周囲に「こういうやり方なら伝えやすい」と相談することで、ストレスの少ないコミュニケーションの環境を作ることが可能になります。

3. 違和感を感じる相手からは距離をとる

人間関係の中で「何かこの人とは合わないな」「話すといつも疲れるな」といった違和感を感じる相手に対しては、思い切って距離を取ることも重要です。

無理に合わせようとして、自分の心身が疲弊してしまうようでは本末転倒です。自分自身を理解し、優先すべきは「自分の心の健康」であるという視点を持ちましょう。

もちろん、すべての人間関係を避けるわけにはいかないかもしれませんが、「この人とは距離を取った方が楽」と感じるのであれば、それは一つの大事な自己防衛です。そうした「感覚」を信じて、自分を守る行動に移す勇気も持ってほしいと思います。

おわりに

おわりに

ASD受動型の方は、周囲から「おとなしい」「扱いやすい」と見られがちですが、内面ではさまざまな葛藤やストレスを抱えていることが少なくありません。自己主張が苦手であることや、こだわりの強さ、過剰な適応などの特性が、時にトラブルを引き寄せる要因となってしまいます。

しかし、断るスキルを身につけること、自分自身の感情を理解して表現すること、そして必要に応じて距離を取ることを意識すれば、少しずつトラブルを減らしていくことは可能です。

自分を大切にしながら、無理のない範囲で社会と関わっていく。そんな生き方ができるように、まずは自分自身の特性をしっかりと理解することから始めてみてください。