
人と初めて出会う場面は、誰にとっても少なからず緊張を伴うものですが、発達障害のある方にとっては、そのハードルが特に高く感じられることがあります。今回は、発達障害の中でも代表的なADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の方が、初対面の場面で感じやすい困難や特徴、そして実際に役立つ対処法について詳しく解説していきます。

発達障害と一口に言っても、その特性や困りごとは個人によって大きく異なります。しかし、傾向として「ADHDの人は比較的初対面が得意」「ASDの人は初対面が苦手」と感じているケースが多く見受けられます。
ADHDの方は、社交的で積極的に人と話すのが得意な傾向があります。思ったことをすぐ口に出せたり、興味のある話題に対してエネルギッシュに語れたりするため、初対面の相手にもフレンドリーな印象を与えやすいのです。
しかし、注意すべき点として、初対面の段階ではうまく関係を築けていたとしても、時間の経過とともに人間関係の維持が難しくなることがあります。話の脱線や相手の気持ちへの配慮不足、衝動的な言動が誤解を招いてしまうことがあるため、関係性が深まる過程で困難を感じることも少なくありません。
一方で、ASDの方は、初対面に限らず対人コミュニケーション全般に困難を感じやすい傾向があります。会話の流れを読むことが難しかったり、相手の気持ちや非言語的なサイン(表情やジェスチャーなど)をくみ取るのが苦手だったりするため、初対面の場面では特に緊張や戸惑いが強く出ることがあります。
「話すこと自体は好き」という方も多いのですが、「相手と良好な関係を築けるか」という点になると不安を感じやすく、過去のうまくいかなかった経験がトラウマのように記憶され、それがプレッシャーとなってさらに緊張を招くという悪循環が生まれてしまうこともあります。

1. 緊張しすぎてしまう
ASDの方は、未知の状況や変化への対応が苦手という傾向があります。初対面というのは、まさに未知との遭遇とも言える場面です。そのため「どんな人なのか」「何を話せばよいか」が分からないまま相手と向き合うことになり、過度な緊張や不安を引き起こしてしまいます。
また、過去に初対面でうまく話せなかった経験があると、それが頭に浮かび、さらに緊張してしまうというケースもあります。中には、プレッシャーが高まりすぎて、言葉が出てこなくなる、パニック状態に陥るといった症状を経験する方もいます。
2. 何を話せば良いか分からない
初対面の会話は、まっさらな状態から始まるため、話題の選定には柔軟さが求められます。ASDの方は、この「何もない状態から話を組み立てる」という作業に苦手意識を持つことが多く、会話の糸口がつかめず沈黙になってしまうことがあります。
また、自分の関心のあることには深く話せる反面、相手の興味やその場の雰囲気に合わせた話題選びが難しく、「空気が読めない」と受け取られてしまうこともあるのです。
3. 会話がぎこちなくなる
ASDの方は、相手の意図や感情を読み取る力に困難を抱えていることが多く、特に初対面では相手の性格や話し方にまだ慣れていないため、会話がうまく噛み合わないことが多くなります。
例えば、相手の話をうまく聞き取れない、あるいは自分の考えをうまく伝えられない、適切なタイミングで相づちを打てないなど、非言語的なやり取りが噛み合わないことで、会話がぎこちなくなってしまいます。
また、人との距離感をうまくつかむことが難しいという特性もあるため、相手との適切な物理的・心理的距離を保つのが難しく、結果として「距離感がおかしい」と感じられてしまうこともあります。

初対面の場面をスムーズに乗り切るためには、事前の準備と心構えが大切です。ここでは、発達障害のある方にも実践しやすい「初対面とうまく関わる方法」を3つ紹介します。
ビジネスの面談や紹介を通じて会うようなケースでは、事前に相手の情報を得ることができる場合があります。名前や職業、趣味などの情報が分かっていれば、それに基づいた話題を用意しておくことができ、安心感にもつながります。
また、SNSや会社のプロフィールなどを軽く確認しておくだけでも、「初めて会うけど、なんとなく知っている」という状態になり、緊張を和らげる効果が期待できます。
初対面の会話が不安な方には、あらかじめ話のネタをいくつか用意しておくことをおすすめします。たとえば「出身地」「趣味」「食べ物」「最近見た映画やテレビ番組」など、あまり深くなく、かつ誰もが話しやすいテーマをいくつか覚えておくとよいでしょう。
特に天気の話やその地域の話題などは、当たり障りがなく、最初の会話のつかみに適しています。相手が話しやすくなるように工夫しながら、自分もリラックスして話せる雰囲気を作っていきましょう。
初対面が苦手な人にとっては、「いきなりうまく話そう」と思うこと自体が大きなプレッシャーになります。まずは「挨拶だけする」「目を見て一言だけ話す」といった、できそうなことから始め、小さな成功体験を積み重ねていくことが大切です。
また、最初は信頼できる人に同席してもらい、サポートを受けながら初対面の場に慣れていくのも一つの方法です。徐々に「自分でもできる」という実感を持てるようになると、自信につながり、緊張感も和らいでいきます。
発達障害のある方にとって、初対面は不安の多い場面かもしれません。しかし、その不安には明確な理由があり、適切な対処法を取ることで、少しずつ人との関わりがスムーズになる可能性があります。
特にASDの方は、変化や未知の状況に対するストレスが強いため、事前準備やパターン化された対応が安心につながります。ADHDの方は初対面には比較的強いかもしれませんが、深い人間関係を築く際には慎重さも必要です。
大切なのは、自分の特性を理解し、それに合った方法で無理なく初対面を乗り越えていくこと。小さなステップの積み重ねが、自信と人間関係を築く大きな力になります。焦らず、自分のペースで、少しずつ前に進んでいきましょう。