発達障害(ADHDやASDなど)のある方にとって、日常生活における「人間関係」は大きな課題のひとつです。とくに、パートナーとの関係性は、本人の心の安定や日々の過ごしやすさに大きく影響します。
発達障害は、本人の努力だけでなく「周囲の理解」や「環境の調整」が大きなカギとなります。どのような人と一緒に過ごすか、どのような関係性を築けるかによって、症状が落ち着いて安定することもあれば、逆に強く表面化し、さらにはうつなどの二次障害につながることもあるのです。
今回は、「発達障害の症状が悪化するパートナーの特徴」と「安心できる、症状が落ち着くパートナーの特徴」を比較しながら、発達障害のある方が健やかにパートナーシップを築いていくためのヒントを考えていきたいと思います。
発達障害のある方が一緒に過ごしていて「苦しい」「つらい」と感じやすいパートナーには、いくつかの共通した特徴があります。以下に、代表的な4つの傾向を紹介します。

ASDやADHDのある方は、「曖昧さ」「ニュアンス」「空気を読む」ことが苦手な傾向があります。遠回しな言い方や、はっきり言わない指示、また「察してほしい」というスタイルのコミュニケーションは、大きなストレスとなる場合があります。
「○○しておいてね」と言われずに「なんとなくそうしてほしい雰囲気を出される」ことは、発達障害の方にとっては「伝えられていない」のと同じです。とくに同棲や結婚など、生活を共にする関係においては、家事の分担や金銭感覚などに明確なルールがないと混乱や摩擦が生まれやすくなります。
大切なのは、「曖昧にするのではなく、具体的に伝える」姿勢です。また、発達障害のある本人側も「察せないことは悪意ではない」「できないことがあるからルールを一緒に作っていきたい」といった意思表示をすることで、歩み寄りが可能になります。

発達障害のある方は、変化への適応が苦手なことが多くあります。特に、ASDの特性として「予測できること」「ルーティン」が安心材料となっている場合、急な予定変更やドタキャンは強いストレスになります。
たとえば、楽しみにしていたデートが当日の朝にキャンセルされたり、決めていた旅行の行き先が突然変えられたりすると、混乱してパニックに近い状態になることもあります。
もちろん、急な事情で予定が変わることは誰にでもありますが、「頻度」や「伝え方」「フォローの仕方」によって、受け取られ方は大きく変わります。計画の変更がどうしても必要なときは、できるだけ早めに伝え、理由を明確にする配慮が重要です。

発達障害の方には、音や光、匂い、触感、味覚などに敏感な「感覚過敏」がある人も多くいます。
たとえば、繁華街のような人混みにいるだけで強い疲労感を覚える人や、香水や料理のにおいで気分が悪くなる人、特定の食べ物の食感が苦手で食事に困る人など、感覚的な「しんどさ」を日常的に抱えている場合があります。
このような感覚に対し、「我慢して」「みんなできてるんだから」などと無理解な態度を取るパートナーでは、安心して生活をともにすることは難しくなってしまいます。
一方で、「人混みが少ない時間帯に出かけよう」「苦手な音の場所は避けよう」など、お互いに歩み寄る姿勢があれば、安心して一緒に過ごすことができるようになります。
発達障害のある方は、一般的には「当たり前」とされていることでも、うまくできないことがあります。たとえば、家事を段取りよく進める、忘れ物をしない、時間に正確に行動するといったことです。
これらは「努力不足」ではなく、脳の特性によって困難さを抱えている行動です。にもかかわらず、「なぜこんなこともできないの?」「普通これくらいはできるでしょ?」という態度を取られると、自己肯定感が大きく傷つき、二次障害(うつ・不安障害など)のリスクが高まります。
もちろん、発達障害のある側にも努力や工夫は必要です。しかし、「できないことを責める」よりも、「どうすればできるかを一緒に考える」姿勢が、長く良い関係を保つためには何より大切です。

では逆に、発達障害のある方が「一緒にいると安心できる」「症状が落ち着く」と感じやすいパートナーにはどのような特徴があるのでしょうか。
ここでは、特に重要な2つのポイントを紹介します。
1.「二人で幸せになれる方法」を一緒に模索してくれる人
発達障害のある方がパートナーに求めるものは、決して「すべてを許してほしい」「自分にだけ合わせてほしい」ということではありません。
むしろ、お互いの違いや困りごとを理解した上で、「どうすればお互いに心地よく過ごせるか」「よりよい関係を築けるか」を一緒に考えてくれる姿勢が、何よりの支えになります。
たとえば、「曖昧な言い方が伝わりにくいから、具体的に伝えよう」「生活のルールを一緒に作ろう」「感覚過敏のある場所には無理に誘わないようにしよう」といった配慮を、我慢ではなく自然な思いやりとして実践できる関係が理想です。
2.相談や話を受け止めてくれる人
発達障害のある方は、日常の中で失敗や不安を感じやすい傾向があります。だからこそ、自分の気持ちを安心して話せる存在がいるかどうかは、心の安定に直結します。
それは、必ずしもパートナーである必要はありません。家族や友人、支援者などでも良いのですが、もしパートナーが「あなたの気持ちを聞いてくれる存在」であれば、二人の信頼関係はより強くなるでしょう。
話を聞くときには、「アドバイスをする」「正す」ことよりも、「まず共感して受け止める」ことが大切です。自分の苦しさを分かってくれる人がいると感じられることは、発達障害のある人にとって、何よりの安心材料です。
発達障害のある方が健やかに生きていくためには、自分自身の特性を理解し、工夫や配慮を重ねることも大切です。しかし、それと同じくらい、身近なパートナーの理解や姿勢も重要な要素になります。
「我慢する関係」でも「どちらかだけが合わせる関係」でもなく、お互いの違いを尊重しながら「二人で一緒に乗り越えていく関係性」が、最も心強く、安心できるものになるのではないでしょうか。
発達障害のある方にとっての「生きやすさ」は、決して一人だけでは作れません。ともに考え、ともに成長していける関係こそが、真の安心につながるのです。