自閉スペクトラム症(ASD)は、対人関係やコミュニケーション、こだわり行動などに特性が見られる発達障害の一つです。ASDの人は、対人関係の取り方においていくつかのタイプに分類されることがあります。その中でよく知られているのが以下の4つのタイプです。
今回はこの中でも積極奇異型に焦点を当て、どのような対人関係の特徴があるのか、そしてより良い人間関係を築くためにはどのような工夫ができるのかについて考えてみたいと思います。
積極奇異型ASDとは?
積極奇異型とは、その名の通り、積極的に他人と関わろうとするが、どこか“奇異”に見える行動をしてしまうタイプです。本人に悪気はなく、むしろフレンドリーで人懐っこい性格であることが多いのですが、相手の立場や空気を読む力、社会的ルールの理解が弱いため、対人関係でトラブルになりやすい傾向があります。

1. 積極性と行動力
ASDの中でも、積極奇異型の人は新しいことにチャレンジする意欲が高く、物怖じしない行動力を持っています。ASDの人は一般的に変化に対して不安を感じやすいものですが、このタイプの人は比較的柔軟に対応できることもあります。
2. 好きなことへの深い集中と専門性
自分の興味のある分野に対しては、驚くほどの集中力と探究心を発揮します。何年もかけて知識を深めたり、専門的なスキルを独学で身につける人も少なくありません。時にはその道の専門家と並ぶほどの知見を持つこともあります。
3. 自己発信力
他のASDタイプに比べて、自分の考えや意見、感情を言葉にして発信することができる人が多いのも積極奇異型の特徴です。自分の内面を表現することが苦手な人が多い中、これは大きな強みになります。

1. 一方的な会話
好きな話題について延々と話してしまい、相手の関心や気持ちに配慮することが難しい傾向があります。相手が話したいことや話すタイミングを奪ってしまうこともあり、結果として「自己中心的」「空気が読めない」と誤解されることもあります。
2. 社会的なルールの理解が苦手
暗黙の了解や場の空気、距離感など非言語的なルールを理解することが苦手です。たとえば、初対面でプライベートな質問をしてしまったり、相手の嫌がる話題を深堀りしてしまうことがあります。
3. おせっかいになりがち
本人は善意でしているつもりでも、相手が望んでいないアドバイスや助言を押しつけてしまうことがあります。自分の中に「こうあるべき」というルールや信念がある場合、それを他人にも当てはめようとしてしまい、結果として人間関係がギクシャクすることも。

1. 一度「黙る」ことを覚える
積極奇異型の人は、自分の考えを率直に伝える力がありますが、それが裏目に出てしまうこともしばしば。思ったことをすぐに口にせず、一度黙って考えることで、「本当に今、それを言うべきか?」と内省する時間が持てます。
特に職場などの人間関係では、言わなくてもよいことを口にしてしまい、トラブルにつながるケースが多く見られます。まずは「黙る」習慣を身につけましょう。
2. 発言のペースと量を相手に合わせる
話すことが好きな人に多いのが「一方的な会話」。会話はキャッチボールです。相手がどれだけ話しているかを観察し、自分も同じくらいの長さ、トーン、スピードで話すことを意識しましょう。
また、自分の趣味や興味のある話題でも、相手が興味を示していなければ無理に続けないこと。共通の話題がある相手を選んで話す工夫も有効です。
3. 自分ルールを社会ルールに応用する
積極奇異型の人は、自分なりのこだわりやマイルールを持っていることが多いです。この特性を逆手に取り、「相手を不快にさせないためのルール」として自分用に設定することができます。
たとえば:
このような具体的なルールを決めておくことで、対人関係のトラブルを未然に防ぐことができます。
4. 求められたことだけをする
職場などの組織では、「自分の役割に集中すること」が円滑な人間関係の第一歩です。つい周囲の人の行動が気になってしまい、「こうした方がいいのに」と思うこともあるかもしれません。
しかし、相手が助けを求めていない限りは無理に介入せず、求められた範囲内で動くことを意識しましょう。それが信頼関係につながります。
積極奇異型のASDの人は、行動力や専門性、自己表現力など、社会において大きな力となる資質を持っています。しかし一方で、距離感やルールの理解に課題があり、人間関係で誤解されやすい一面も。
自分の特性を理解し、少しだけ意識を変えることで、ぐっと人間関係は良好になります。大切なのは、「自分を否定する」のではなく、「自分の特性を知ったうえで、周囲と折り合いをつける方法を身につける」こと。
自分らしさを大切にしながら、より豊かで安定した人間関係を築いていけるよう、日々少しずつ工夫していけるとよいですね。