――原因と対策を理解し、自分に合った健康管理を考える
近年、発達障害という言葉を耳にする機会が増え、大人になってから診断される方も多くなっています。そのような中で、「発達障害のある人は太りやすいのか?」という問いを抱く方もいるのではないでしょうか。
今回は、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)といった発達障害と肥満との関係性、そしてその背景にある要因や対処法について、研究データや実際の支援の現場をもとに丁寧に解説していきます。
発達障害と肥満の関連性──研究データから見えてくること
まず、実際に発表されている研究データから見ていきましょう。
アメリカの研究によると、ADHDを持つ成人は、そうでない人に比べておよそ1.7倍、子どもでは約1.4倍、肥満の割合が高いことが報告されています。具体的には、ADHDの成人の約70%、小児では40%に肥満が見られたとのことです。

また、日本の研究でも、ASD(自閉スペクトラム症)を持つ7歳〜18歳の子どもたちにおいて、全体の約25%に肥満が認められたと報告されています。これは、文部科学省による全国平均である小児肥満率(地域によって異なりますが、11%前後)と比べてもかなり高い数字です。
このように、統計的には発達障害と肥満との間に一定の関係性があることが示唆されています。ただし、発達障害のあるすべての人が太っているわけではありません。現場で多くの当事者を見てきた筆者としては、むしろ痩せている方も多く、個人差が大きいという印象も持っています。

では、発達障害のある人が肥満になりやすいとされる理由は何なのでしょうか。以下に、主な要因をいくつか紹介します。
1. 偏食や食へのこだわり
ASDのある方に特に多い傾向として、食感や味、見た目などに強いこだわりを持つことがあります。その結果、「これしか食べない」「決まったものしか受けつけない」といった偏食が起こりやすくなります。栄養が偏った食生活が続けば、自然とカロリー過多や脂質・糖質に偏った食事になりやすく、結果として肥満のリスクが高まります。
2. 衝動性による過食
ADHDに多く見られる「衝動性」は、食行動にも現れやすい特徴です。満腹にもかかわらず、「目の前にお菓子があるから」「おいしそうだから」と、ついつい手を伸ばしてしまう。そうした衝動的な行動が繰り返されると、必要以上にカロリーを摂取しやすくなります。
3. 満腹感の鈍麻(感覚の過敏・鈍麻)
発達障害の中には、身体の感覚に対する過敏や鈍麻といった特性が見られることがあります。特に「満腹感を感じにくい」という場合、食事量が増えてしまいがちになります。必要以上に食べ続けてしまうことで、結果として肥満に繋がるケースが見られます。
4. 運動量の少なさ
発達障害のある方の中には、運動が苦手だったり、集団でのスポーツに苦手意識を持っていたりする人が少なくありません。そうした経験から運動への意欲が低下し、日常的に体を動かす機会が減ってしまうことも。ゲームや動画視聴など室内で完結する趣味に偏ってしまうと、自然と消費カロリーも少なくなり、肥満リスクが高まります。
5. 薬の副作用
発達障害やその二次障害(うつ病、統合失調症など)に対する治療薬には、食欲を増進させる副作用を伴うものもあります。特に抗精神病薬や抗うつ薬を使用している場合、食欲が増すことで体重増加に繋がることがあります。

発達障害による特性を理解した上で、どのような対策を講じることができるのでしょうか。以下に、具体的な工夫を紹介します。
1. 食事を記録する
まず、自分がどれくらい食べているのかを「見える化」することが大切です。食事の内容や摂取カロリーを記録することで、自分の食習慣の傾向が明確になります。最近では、スマートフォンのアプリなどで簡単に記録・計算ができますので、無理なく継続できる方法を選んでみましょう。
2. 食事ルールを設定する
基礎代謝や日常の活動量に応じて、1日に摂取すべきカロリーの目安を知り、自分なりの「摂取上限」を設定しておくことも有効です。昼食や夕食でどれくらい食べるか、間食は何カロリーまでにするかなど、ルールを設けることで無意識の過食を防ぐ手助けになります。
3. 食材や調理方法を工夫する
偏食がある場合、無理に嫌いなものを食べるのではなく、調理法を工夫したり、他の食材で栄養を代替したりすることが大切です。食べやすい調理方法や味付けを見つけることで、ストレスなくバランスの良い食生活が実現できます。
4. 身近な人に相談する
肥満の背景には、ストレスや情緒的な問題が隠れていることも少なくありません。もし食事に依存する形でストレス発散しているようであれば、まずはその根本原因と向き合うことが必要です。一人で抱え込まず、家族や友人、専門家に相談することで、精神的なサポートと適切なアドバイスを得ることができます。
発達障害のある方が「太りやすい」と言われる背景には、いくつかの研究データと共に、特性に由来する食行動や生活習慣が関係していることが分かっています。
しかし、すべての人に当てはまるわけではなく、大切なのは自分自身の傾向を知り、それに合った対処法を見つけていくことです。無理なく続けられる工夫、ストレスと向き合う姿勢、そして周囲のサポート。これらを組み合わせることで、発達障害があっても健康的な体を維持し、日々の生活をより快適なものにしていくことができます。
誰にでも、できることはきっとある。自分に合った方法を少しずつ、無理なく取り入れていきましょう。