子供の言葉や心理の発達は、通常1歳半頃から言葉を話し始め、4歳頃には他者の気持ちを理解し、集団行動もできるようになります。しかし、3歳になっても言葉が出ない、または小学生になっても集団行動が苦手な子供もいます。多くの場合は小学校高学年までには平均的な発達に追いつきますが、中には成長しても発達の遅れが残るケースがあります。これを「発達障害」と呼びます。
発達障害にはさまざまなタイプがあり、脳のどの機能に障害があるかによって特徴が異なります。たとえば、言葉を十分に話せなかったり、集団行動が難しかったり、特定の物事に強く興味を示す場合は「自閉症」と呼ばれます。軽度の場合は「アスペルガー障害」とされることもあります。また、感情を抑えられなかったり、集中力が続かない場合は「注意欠陥多動性障害(ADHD)」とされます。これらの障害は育て方によるものではなく、遺伝的な要因や年齢が高めの出産などが関与していると考えられています。

こうした発達障害の特徴は、子供時代に目立たなくても、成長して社会に出たときに顕在化することがあります。社会生活では、他人の気持ちを察したり、職場の環境に馴染んだりすることが求められますが、発達障害があるとそれが難しくなる場合があります。例えば、職場で周りと調和できない、結婚してもパートナーとの意思疎通がうまくいかない、子育てで子供の気持ちが理解できない、といった場面で困難を感じることがあります。
こうした「大人の発達障害」が注目されるようになったのは20年ほど前からで、ハリウッドの著名人が自らの発達障害を公表したことなどが影響しています。そのため、自分も発達障害ではないかと精神科を受診する人が増え、専門外来では予約が半年待ちというケースも珍しくありません。
大人の発達障害の診断には、確定的な方法がありません。主に「ウェイス」と呼ばれる知能検査が用いられ、言語理解力や推理力、作業処理能力といった側面を測定します。加えて、医師が成育歴や学校や職場でのエピソードを聞き取りながら、最終的な診断が行われますが、明確な基準がないため診断にばらつきがあることもあります。
診断がついた場合、積極的な治療法はまだ確立されていません。対症療法として、不安やストレスを和らげる薬を使う場合もありますが、中心となるのは現在感じている「生き辛さ」を軽減するための対策や指導です。たとえば、営業や接客業など対人関係が苦手な人には、より適した職種を選ぶアドバイスが行われます。一般の職場で困難が続く場合には、障害者雇用枠のある企業や就労支援施設を紹介されることもあります。

また、結婚後に配偶者から指摘を受けて初めて自分の障害に気づく人もいます。発達障害を理解し合うことで、夫婦間のコミュニケーションが改善するきっかけになることもあります。子育ての場面でも、家族や周囲からの理解と支援が大切です。子供の気持ちが理解できなかったり、育児が重荷になることで苦悩することがあるため、福祉による子育て支援や親族の協力を得ることが推奨されます。
今回は、大人の発達障害について概要を説明しました。発達障害のある方々が感じる「生き辛さ」は、本人の自覚と周囲の理解によって改善が可能です。職場でのトラブルや家庭での不和などに悩んでいる場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。