~義務と権利のバランスを伝える上司の心構え~
職場において、「権利ばかりを主張する若手社員」への対応に悩む上司や先輩社員は少なくありません。
「有給は当然の権利です」「残業はしたくありません」「もっと自由に働きたいです」――。こうした発言に対して、「言っていることは間違っていないが、何か違和感がある」と感じる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、「義務と権利」の本来の関係を確認しつつ、若手社員に対してどのように伝えていくべきか、また上司としてどのような姿勢が求められるのかを丁寧に解説していきます。

まずは基本に立ち返って、「権利」と「義務」の意味を押さえておきましょう。
つまり、労働契約を結ぶことで、労働者と会社はお互いに「義務を負う」代わりに、「権利を得る」関係になります。
労働者は、会社に対して「労働を提供する義務」を果たすことで、「賃金を受け取る権利」や「休暇を取る権利」などが生まれるという仕組みです。

「働いているのだから有給を取るのは当然」と考える若手社員がいたとします。
その言葉自体は法的にも正しく、誤りではありません。しかし、ここで重要なのは**「義務を果たしたうえでの権利」**という順序です。
出勤していればそれで「労働の提供」になるのか?というと、そうではありません。
例えば、以下のような状態ではどうでしょうか。
このような状況では、形式的に出勤していたとしても、実質的には「労働の提供」とは言えません。
労働者には以下のような義務があります。
これらの義務を果たしてこそ、賃金や休暇の権利が成立するのです。
「義務を果たす → 権利を得る」という順序は、労働関係における大前提だといえるでしょう。

とはいえ、「権利を主張すること自体」が悪いわけではありません。
社員にとって、有給休暇や育児休業、労働時間の管理などは、法的に保障された重要な権利です。
問題は、権利の主張が組織全体の秩序や周囲の人間関係にどのような影響を与えるかを想像できていない場合です。
たとえば――
「旅行に行きたいので、繁忙期ですが有給を取得したい」と言ってくる社員がいたとします。
この主張自体は法的には問題ありません。しかし、次のような問題が生じる可能性があります。
このようなリスクを理解しないまま、「自分の権利だから」と一方的に主張する姿勢は、組織の中では好ましくありません。

若手社員が過度に権利を主張してしまう背景には、次のような要因があるかもしれません。
① 義務についての理解が不十分
働くうえでの「義務」について、誰からも具体的に教わっていないことがあります。
「働いたら給料がもらえる」「有給は使える」といった“結果”ばかりが先行し、“義務の意味”が抜け落ちているのです。
② 権利の解釈を誤っている
「どんな時でも自由に有給が取れる」といった誤解があることも。
労働者の権利には一定の制限があり、周囲への配慮や業務への影響を考慮したうえで運用されるべきものです。

では、上司として若手社員にどのように接すればよいのでしょうか。
一番大切なのは、義務と権利のバランスをわかりやすく伝えることです。
たとえば、以下のような形で伝えると良いでしょう。
また、義務や組織への貢献を果たすことが、自分自身の信頼やキャリアアップにもつながることを伝えるのも効果的です。

そして最後に、もうひとつ重要なポイントがあります。
それは――
「何を言うか」よりも「誰が言うか」が大事だということです。
上司と部下との信頼関係が築けていれば、「義務を果たすことの大切さ」や「権利の意味」を丁寧に説明するだけで、社員は素直に耳を傾けてくれます。
しかし、普段から信頼関係ができていない上司が言っても、「押し付けられている」としか受け取られません。
したがって、日頃から部下に寄り添い、対話を重ねることが極めて大切です。
「権利ばかり主張する若手社員」に頭を悩ませる前に、上司として以下の点を心がけてみましょう。
社会や組織で働く以上、権利と義務は表裏一体です。
「社員の自立と成長を促す指導」とは、決して押しつけではなく、「相手の理解を深める対話」から始まります。
そのためにも、上司自身が義務と権利を正しく理解し、誠実な姿勢で部下と向き合うことが何より求められます。