現代のビジネスシーンでは、資料の完成度や話し方のテクニックに注目が集まりがちです。確かに、プレゼン資料が美しく整っていたり、話すテンポが良かったりすることは大切な要素です。
しかし、実際に人の心を動かすものは何か?
それは、**「気持ちをこめて伝えること」**に他なりません。
話し手の情熱や誠実さは、言葉を超えて相手の心に届きます。どれだけ洗練された言い回しや技法を使ったとしても、そこに「本気」がなければ、相手の感情は動きません。
この記事では、ビジネスの様々な場面において、テクニックよりも「気持ち」を大切にする意義と、心をつかむ話し方の具体的なコツをご紹介します。

まずは、いくつかの場面で「気持ちをこめること」がどのような効果をもたらすのかを見てみましょう。
商談や営業の現場では、価格やスペックだけではお客様の心は動きません。
「この人は本当に自社の商品を信じている」「私たちの課題を本気で考えてくれている」と感じてもらえるかどうかが、最終的な購買行動に大きく影響します。
→ 結果:モノが売れる
指導する際に、ただマニュアル通りの言葉を並べるのではなく、部下の成長を本気で願っているという思いを込めることで、相手の受け取り方も大きく変わります。
→ 結果:部下が気持ちよく働けるようになる
つまり、相手の感情を動かしたいなら、自分自身が「感情をこめて語る」ことが必要なのです。情熱は、言葉に宿るもの。そして、それは相手の心を動かす力を持っています。

ここからは、実際に「気持ちが伝わる話し方」をするためのコツを5つご紹介します。テクニックというより、「伝える姿勢」を意識することが大切です。
まず何よりも大切なのは、「自分の言葉」で語ることです。
他人が書いた文章やテンプレートをそのまま読むのでは、聞き手には「他人事」のように聞こえてしまいます。
たとえば、同じ内容でも——
「弊社の商品は高品質です」よりも、
「私自身も使ってみて、本当に効果を実感しました」
というように、自分の実感や気持ちを込めた言葉の方がはるかに伝わりやすいのです。
話しながら、自分の言葉に「気持ちが乗っているか」をぜひ意識してみてください。
体験談には説得力があります。人は抽象的な理論よりも、「実際にあった話」や「自分も同じような経験をしたことがある」という共感できる内容に強く反応します。
たとえば、部下にミスの重要性を伝えたいとき——
「ミスをすると信用を失うから気をつけてね」と注意するよりも、
「私も新人のとき、確認を怠って大事なデータを消してしまったことがある。でも、素直に謝って、上司の信頼を取り戻したんだ」
と、自分の経験を交えて話すことで、相手の受け止め方も前向きになります。
部下指導や信頼関係の構築において、体験談は非常に強力なツールです。
話の中で、特に重要なことを伝えたい場面では、あえて「前置き」を入れることで、聞き手の注意を引き付けることができます。
たとえば——
「ここからが一番大切な部分ですので、よく聞いてください」
「これからお伝えする内容は、私が最も大事にしている考え方です」
このようなワンクッションがあると、聞き手は「これは聞き逃せない」と自然に集中します。
一方で、重要なポイントを何の前触れもなく話すと、せっかくのメッセージが埋もれてしまうこともあります。ポイントを強調する「予告」の力を、ぜひ活用してください。
特に印象づけたいキーワードやフレーズがある場合は、それをゆっくり、繰り返し伝えることが効果的です。
たとえば——
「信頼がすべてです。信頼こそが、チームを動かす力です。私は“信頼”という言葉を何より大切にしています」
このように同じ言葉を繰り返すことで、聞き手の記憶にも残りやすくなります。
また、繰り返しは「話し手の信念」も伝えてくれます。心から大切だと思っていることは、自然と何度も言いたくなるもの。それが聞き手にとっても、「この人は本気だ」と伝わるのです。
言葉だけでなく、身体の動きもまた、伝える手段のひとつです。私たちは相手の話を聞くとき、内容だけでなく、表情、声のトーン、身振り手振りといった非言語的な要素からも多くの情報を受け取っています。
プレゼンの場面でも、ただ棒立ちで話すのではなく、
・両手で大きさを表現する
・胸に手をあてて「本当にそう思っている」ことを伝える
・笑顔で語りかける
このような動作を自然に織り交ぜることで、言葉に感情が宿り、説得力が一気に増します。
大げさなジェスチャーは必要ありませんが、自分の気持ちを身体でも表現することを意識してみましょう。

最後に、話し方や伝え方の根底にあるべき大切な姿勢についてお話しします。
それは、**「相手を人として尊重すること」**です。
上司が部下に対して、ただ命令口調で指導を行ったり、感情的に接してしまったりすると、それはパワハラと捉えられるリスクもあります。
逆に、「この人は私を一人の人間として見てくれている」と部下が感じることができれば、たとえ厳しい指摘であっても、素直に受け入れることができるのです。
テクニック以前に、**「相手を大切に思っている」「成長してほしいと本気で願っている」**という気持ちを言葉に乗せて伝えること。これこそが、あらゆる人間関係の土台になります。

本記事では、「テクニックよりも気持ちをこめる」話し方の重要性についてご紹介しました。
話す内容やスライド資料ももちろん重要ですが、それ以上に求められているのは、話し手自身の情熱と誠実さです。
誰かの心を動かしたいとき、難しい言葉や完璧なスピーチは必要ありません。
自分の言葉で、体験を交えて、熱意をもって語ることで、相手の心は自然と動きます。
ぜひ、次の商談や部下との面談、プレゼンの場で、「気持ちをこめて話すこと」を意識してみてください。
あなたの言葉が、誰かの心を動かす一歩になるかもしれません。