働くうえで人間関係は大切ですが、その中で「頼まれると断れない」という悩みを抱える人は少なくありません。特に、発達障害のある方の中には「嫌われたくない」「評価を下げたくない」という思いから、無理をしてまで仕事や誘いを引き受けてしまい、疲弊してしまうことがあります。
この記事では、発達障害のある人が「断れない」背景にある理由を整理し、心身を守るための上手な断り方についてお伝えします。

発達障害のある方の中には、これまでの人生経験から「人間関係がうまくいかないことが多かった」「誤解されやすい」といった背景を持つ方が少なくありません。そのため、「これ以上嫌われたくない」「波風を立てたくない」と過度に相手の評価を気にしがちになります。
また、ASD(自閉スペクトラム症)などの特性から、相手の感情や意図を汲み取るのが苦手な方も多く、「断ったらどう思われるだろう?」と不安になり、断るよりも引き受ける方を選んでしまうのです。
発達障害の中でも特にASDの傾向が強い方には、「こうあるべき」「やると決めたら最後までやり抜く」といった強い責任感や完璧主義の傾向が見られます。このような思考のクセは、「頼まれたからにはやらなければならない」「断ることは無責任」と捉えてしまい、自分のキャパシティを超えていても引き受けてしまう要因になります。
また、「人に頼るのはよくない」「全部自分でやるべき」というべき思考が強い方もおり、結果的に仕事や予定をひとりで抱え込み、パンクしてしまうことも。
発達障害のある方の中には、「NO」と言うこと自体に強い抵抗感を持つ人がいます。これは「相手を傷つけたくない」「どう伝えたら角が立たないか分からない」という不安からくるものです。
また、自分の状況や気持ちを言葉にするのが苦手な人は、断りたいという気持ちはあっても「うまく説明できないから、とりあえず引き受けてしまう」といったこともよくあります。
ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある人に多いのが、「今の自分の仕事量や時間の使い方を把握できない」という課題です。計画性が苦手なため、自分がどれだけの仕事を抱えているのか、どの作業を優先すべきかが見えにくく、つい軽い気持ちで仕事や誘いを受けてしまうのです。
気づいたときには「もう間に合わない」「体が限界」となってしまい、最終的に仕事をこなせなかったり、人間関係に悪影響が出てしまうこともあります。

では、どうすれば無理せず、でも関係を壊さずに断ることができるのでしょうか?以下に実践的な方法を紹介します。
まず有効なのが、「自分の中で断るルールをあらかじめ決めておく」ことです。例えば、飲み会の誘いであれば「3回中2回は断る」「月に1回だけ参加する」など、具体的なルールを設定しておけば、誘われたときにも迷わず対応できます。
仕事の場合も、「1日に受ける新しいタスクは2つまで」など、自分の処理能力に見合った範囲で線引きをすることが大切です。ルールがあることで、感情に左右されずに冷静に判断できるようになります。
どうしても計画や優先順位を立てるのが苦手な場合は、自分ひとりで抱え込まず、上司や信頼できる同僚に相談してみましょう。例えば「今週はこの仕事とこの案件があります。新しい業務を受ける余裕があるかどうか一緒に確認してもらえますか?」といった形でサポートをお願いするのも有効です。
「断ることが苦手なんです」と正直に伝えることも、周囲の理解を得るうえで大きな一歩になります。
断ること自体は悪いことではありませんが、伝え方には注意が必要です。ポイントは「理由+謝意+代替案」のセットで伝えることです。
たとえば、
といったように、できない理由を丁寧に伝えた上で、代替案を示せば、相手も納得しやすくなります。また、「ごめんなさい」「誘ってくれて嬉しいです」といった感謝や申し訳なさを言葉にすることで、相手への印象もやわらかくなります。

「嫌われたくないから」と無理を続けた結果、心身を壊してしまっては本末転倒です。自分の限界を知り、必要に応じて「NO」と伝えることは、むしろ自分にも周囲にも誠実な態度と言えるでしょう。
もちろん、理解のない職場や人間関係に悩むこともあるかもしれません。そんなときは、信頼できる人に相談したり、場合によっては転職も選択肢に入れるなど、「自分が安心して働ける環境づくり」を第一に考えてください。
発達障害のある人が「断れない」と感じる背景には、他人の評価を気にしすぎる、不安になりやすい、責任感が強い、優先順位が苦手など、いくつもの要因が重なっています。
しかし、ちょっとしたコツや準備、周囲との連携で「無理なく断る」ことは十分に可能です。あなたの健康と生活を守るためにも、ぜひ“自分に合った断り方”を身につけていきましょう。