発達障害をもつ方々の社会参加や自立を支援する「障害者雇用制度」は、近年ますます注目を集めています。法整備の進展や社会的理解の高まりを背景に、企業による積極的な雇用や職場での合理的配慮も増えつつあります。本記事では、最新の統計をもとに、発達障害をもつ方の雇用実態や給与の傾向、職場環境、収入向上のヒントまで、丁寧に解説します。
障害者雇用とは、障害のある方が社会で活躍する機会を確保するために設けられた法的枠組みです。一定以上の規模を持つ企業は、全従業員のうち一定割合以上の障害者を雇用する義務があります。この基準は「法定雇用率」と呼ばれ、(令和6年の民間企業における法定雇用率は2.5%)に定められています。
加えて、障害のある従業員が安心して働けるよう、「合理的配慮」の提供が企業に求められています。これは障害の特性に応じて、以下のような配慮を行うことを意味します。
このような配慮を通じて、障害のある方が自身の能力を最大限に発揮できる環境づくりが進められています。

厚生労働省が実施した令和5年版の「障害者雇用実態調査」によると、企業で働く発達障害者の雇用人数は推計9万1千人にのぼり、前回の平成30年調査(3万9千人)から大きく増加しました。一方で、発達障害と診断された人の総数は推計87万2千人であり、依然として多くの方が未雇用、または障害を開示せずに就労している現実もあります。
しかし、ここ5〜6年で、企業に対して発達障害の診断を開示する人が増えている傾向があり、これは社会全体の理解と受容が進んでいることの表れとも言えます。
調査によれば、発達障害のある従業員のうち、男性が約73.9%を占めており、女性は26.3%にとどまります。この男女比は、発達障害の診断を受けている人の人口構成比(男性約7割)とほぼ一致しています。
また、年齢別に見ると、20〜30代前半が中心で、特に20〜39歳の就労率が69.6%と高い一方、40〜59歳では24.8%とやや低下します。これは、近年の発達障害の診断や支援体制の整備により、若年層が早期に診断・就労支援を受けやすくなっていることが背景にあります。
とはいえ、40代以降であっても、業務内容と障害特性とのマッチングが適切であれば、就職は十分に可能です。年齢よりも「自分に合った仕事かどうか」が重視される傾向が強まっています。
働き方についても多様化が進んでいます。調査によると、週30時間以上働く人が約60.7%、10〜30時間未満の勤務が約30.0%とされ、全体の約9割が週20時間以上の労働を行っています。これは、法定雇用率に算定される条件である「週20時間以上の勤務」に基づくものです。
体調や症状と相談しながら、まずは短時間勤務から始め、徐々に勤務時間を増やしていく働き方を選ぶ人も少なくありません。働くこと自体が症状の安定につながる例もあり、自身のペースを守ることが継続の鍵となります。
発達障害のある方が就いている職種として最も多いのが「サービス業(27.1%)」です。ここには接客業だけでなく、調理補助やビル清掃、ポスティングなどの業務も含まれています。次いで、「事務(22.7%)」、「運搬・清掃・梱包(12.5%)」といった職種が続きます。
業務内容が明確であったり、静かな環境で集中できる職場が選ばれる傾向があります。
最新の調査によれば、発達障害者の月収の平均は約13万円です。中でも、週30時間以上勤務している場合は、月15.5万円程度が平均となっています。これは、平成30年調査時の平均(週30時間以上で16.4万円)よりやや減少していますが、これは必ずしも給与そのものが下がったというわけではありません。
実際には、勤務時間の配慮を受けて働く人が増加したために、統計上の平均が引き下げられたと考えられます。なお、障害の有無だけを理由に給与に差をつけることは法律で明確に禁じられており、勤務時間と職務内容が賃金に大きく影響する結果となっています。

障害者雇用において企業が提供している配慮の中で、特に多く見られるのが次の5点です。
これらの配慮は、仕事を長く続けるうえで重要な要素であり、企業側も就業定着率向上のために積極的に取り組んでいます。
体調に合わせて働くことが第一です。無理に長時間労働をするのではなく、自分に合った時間から始めて、徐々に働く時間を増やしていくことが現実的かつ効果的です。
求人情報サイトなどでどのようなスキルや資格が求められているかを調べ、必要な資格を計画的に取得することも収入アップの近道です。事務系や福祉系、IT関連など、発達障害者が活躍しやすい分野は多様です。
障害者雇用では、非正規雇用からスタートすることが一般的ですが、正社員へのキャリアアップが可能な企業を選ぶことも重要です。正社員になれば、賞与や昇給の機会も増え、生活の安定に繋がります。
発達障害を持つ方々の働き方は、社会の変化とともに大きく進化しています。「自分の特性を知り、配慮を受けながら安心して働ける環境」を選ぶことで、長く続けられる職場に出会うことができます。給与や職種だけでなく、「自分らしく働けること」そのものが、何より大切なことなのです。
今後も制度や社会の理解が進むことで、より多くの人が活躍できる社会が築かれていくことが期待されます。