【ASD】絶対譲れない自分ルール3選【大人の発達障害】

自分ルールが強くて周囲とうまくいかない理由と、ASD当事者ができる対処法

自分ルールが強くて周囲とうまくいかない理由と、ASD当事者ができる対処法

「どうしてもこの順番でないと落ち着かない」「いつものやり方じゃないと不安になる」。発達障害、とくにASD(自閉スペクトラム症)を持つ方の中には、こうした「自分ルール」に強くこだわる傾向があります。

一見些細に見えるこのこだわりですが、日常生活ではもちろん、職場や家庭など、他者と関わる場面でトラブルの火種となってしまうこともあります。しかし、本人にとっては、単なる「わがまま」ではなく、「心の安定のために必要不可欠なもの」である場合が多いのです。

本記事では、ASDの人がなぜ自分ルールにこだわるのか、よく見られる自分ルールの具体例、そして他者との軋轢を避けながら自分らしく生きるための対処法について、丁寧に解説していきます。

なぜASDの人は「自分ルール」を譲れないのか?

なぜASDの人は「自分ルール」を譲れないのか?

1. ストレスや不安を回避するための自己防衛

ASDの方は、予定外の出来事や急な変更に対して強いストレスを感じる傾向があります。予測不能な状況に直面すると、不安が一気に高まり、極端に緊張したり、パニックになったりすることもあります。

こうした不安を最小限に抑えるために、「いつもと同じパターンで行動する」というルールを自分の中に設け、それを守ることで心の平穏を保とうとしているのです。つまり、自分ルールは安心を得るための「安全装置」と言っても過言ではありません。

2. 過去の成功体験の積み重ねによる強化

「このやり方でうまくいった」「トラブルを避けられた」など、過去に自分ルールによって良い結果が得られた経験があると、それが一種の成功体験として記憶され、以後も同じ方法を繰り返そうとします。

逆に、他人に言われた通りにやって失敗した経験があると、「自分のルールの方が正しい」「他人の言うことは信用できない」という思考に偏りやすくなることもあります。こうして、自分ルールはより強固になっていきます。

3. 自己肯定感とアイデンティティの源になっている

ASDの方の中には、「こだわり」や「得意なやり方」がその人らしさの核になっていることがあります。ルールを守ることによって、自分らしさや安心感を保てるという感覚があり、それが自己肯定感にもつながっているのです。

そのため、「ルールを変えて」と言われることは、単に行動を変えるだけでなく、「自分を否定された」と感じるほどの精神的ダメージになる場合もあります。だからこそ、譲れないのです。

ASDの人によく見られる「自分ルール」の例

ASDの人によく見られる「自分ルール」の例

1. 日常生活の手順や物の配置への強いこだわり

たとえば、「朝起きてから洗顔→歯磨き→朝食→着替え、の順番でないと落ち着かない」「ペンは必ず青・赤・黒の順に並べる」「椅子の位置は決まっている」など、日々の暮らしの中に細かい決まりごとを設けている人がいます。

これらは本人にとってはリズムを保つために不可欠なルールであり、少しでも崩れると不安になってしまう場合があります。家庭内ではある程度柔軟に対処できても、職場や外出先ではその通りにいかないことも多く、葛藤を抱えがちです。

2. 食事・服装・ルートの固定化

「毎朝同じパンしか食べたくない」「このシャツしか着たくない」「駅まではこの道以外通りたくない」といったこだわりもよく見られます。

とくに服装のこだわりには、素材や肌触りに対する感覚過敏が影響しているケースが多く、「この服しか着られない」のは、感覚的な理由が大きいこともあります。周囲には理解されにくいポイントですが、本人にとってはかなり深刻な問題です。

3. 仕事のやり方・順番への固執

「報告は必ず紙で提出」「作業の順番はA→B→Cでないとダメ」「このチェックリストでしかミスを防げない」など、自分なりの業務ルールを持っている人も少なくありません。

職場では、一定の手順や組織ルールに従う必要がありますが、自分ルールを優先してしまうと「マニュアルが守られていない」と指摘され、トラブルになることも。本人に悪気がなくても、「協調性がない」と受け取られやすい難しさがあります。

自分ルールとうまく付き合うための3つの対処法

自分ルールとうまく付き合うための3つの対処法

1. 変化には理由と準備が必要 ——「納得感」がカギ

ASDの方がルール変更に対応するには、「なぜその変更が必要なのか」を明確に理解することがとても重要です。納得感がないまま変化を求められると、不安や抵抗感が強まります。

そのため、新しい手順や変更点については、なるべく丁寧に説明してもらい、視覚的なマニュアルや図解などを活用すると理解しやすくなります。また、変更後のルールに慣れるまでの「練習期間」や「サポート体制」があると、適応しやすくなります。

2. 自分ルールを他人に押し付けない

自分が安心できる方法だからといって、それを他人にも求めると、摩擦の原因になります。特に集団の中では、「自分のルール < 組織のルール」であることを意識する必要があります。

もし、自分のやり方が合理的だと感じる場合は、勝手に実行するのではなく、上司やチームと相談し、正式に認めてもらうプロセスを踏みましょう。「周囲を巻き込む前に確認をとる」という姿勢が信頼関係を築くポイントです。

3. 「譲れないルール」と「妥協できるルール」を分ける

すべてのルールを守ろうとすると、生きづらさが増してしまいます。自分のこだわりを一つひとつ棚卸しして、「本当に譲れないもの」「ある程度なら妥協できるもの」「実はあまり重要でないもの」に分類しておくことをおすすめします。

こうすることで、「ここは絶対守る」「ここは柔軟に対応する」といったバランスが取れるようになります。また、アンガーマネジメントなどの手法を使って、「これは本当に怒るべきことか?」と冷静に自問するのも効果的です。

まとめ:自分ルールを大切にしながら、社会で生きるために

まとめ:自分ルールを大切にしながら、社会で生きるために

ASDの方にとって、「自分ルール」は心の安定を支える大切な土台です。しかし、そのルールに固執しすぎることで、周囲との関係がギクシャクしたり、誤解されてしまうこともあります。

大切なのは、「自分らしさ」と「周囲との協調」のバランスを上手に取ることです。すべてを変える必要はありませんが、「変えられるところ」は少しずつ柔軟に、「譲れない部分」はしっかり守る。このように自己理解を深めることで、ASDの人もより快適に、そして安心して暮らしていくことができるはずです。