
こんにちは。新宿で人材育成トレーナーを務めております、太田章代です。
今回は、企業の教育担当者の方々に向けて、人材育成を考える上で非常に参考になる「70:20:10の法則」についてお話しします。
企業が未来にわたり成長を続けるためには、社員一人ひとりの成長が欠かせません。しかし、現場では「新入社員に早く戦力になってほしい」「既存社員のさらなる成長を促したい」と思う一方で、育成が思うように進まない、あるいは教育方法がわからないという課題を抱えている企業も少なくありません。
この記事では、まず人材育成の基本的な考え方を整理したうえで、問題解決のための研修企画のポイントを解説します。そして、成長を促進するための理論として知られる「70:20:10の法則」をわかりやすくご紹介し、実務にどう活かせるのかをお伝えしていきます。
1. 人材育成とは何か

目的は「組織の戦略達成」と「事業の存続」
私たちは日常的に「人材育成」という言葉を使いますが、「そもそも人材育成とは何を意味するのか?」と問われると、明確に答えられないことも多いのではないでしょうか。
経営学において人材育成は次のように定義されています。
組織が戦略を達成するため、あるいは事業を存続させるために必要なスキルや能力を従業員に獲得させ、そのための学習を促進すること。
つまり、人材育成の最終的な目的は、組織の戦略を実現し、事業を継続させることにあります。そのために必要なスキルやマインドを育み、社員が主体的に成長できる環境を整えることが求められるのです。
研修はこの目的を達成するための「手段」の一つに過ぎません。研修自体を行うことが目的化してしまうと、本来の育成の方向性を見失いかねません。まずは「なぜ人材育成を行うのか」という原点に立ち返ることが重要です。
2. 人材育成の課題を解決する研修企画の考え方

研修を始める前に「原因分析」を行う
現場でよく見られるケースとして、「上司と部下の人間関係がうまくいっていないのでコミュニケーション研修を実施しよう」という発想があります。もちろん研修は有効な手段ですが、注意したいのは**「研修ありき」にならないこと**です。
たとえば、人間関係の不調の原因が「業務の忙しさでコミュニケーションの機会が不足している」ことにある場合、単にコーチング研修を実施しても問題は解決しません。
重要なのは、次の3つのステップを踏むことです。
問題の原因を分析する
現場の声を聞き、何が本質的な要因なのかを把握する。
解決策を検討する
研修以外の方法(業務改善・体制変更など)も含めて考える。
研修が最適なら実施する
本当に必要なテーマと内容を見極め、企画に落とし込む。
この流れを守ることで、研修が単なる「イベント」ではなく、組織課題の解決につながる施策となります。
流行りの研修に流されない
近年、「アンコンシャス・バイアス研修」や「リーダーシップ研修」など流行のテーマが次々と登場しています。もちろん、時代の要請に応じたテーマを取り入れることも大切です。しかし、その研修が自社の現状に合っているかどうかを見極めることが何より重要です。
自社にとって本当に必要な内容か
現場の課題解決につながるか
優先順位は高いか
これらの視点を持って、研修の実施可否を判断しましょう。
3. 「70:20:10の法則」とは

人が成長する3つの要素
人材育成における有名な理論として「70:20:10の法則(ロミンガーの法則)」があります。これは、人が成長するための学習要素を比率で示したものです。
70%:経験(仕事を通じた学習)
20%:薫陶(上司や同僚からの指導・フィードバック)
10%:研修(座学や読書による学習)
調査の結果、人が最も成長するのは日々の業務経験であり、次に他者からの助言や指導、最後に研修であると示されています。
経験・薫陶・研修の相互作用が重要
この法則を見ると「では経験さえ積めば成長できるのか」と考えがちですが、実際には3つが相互に連動することで最大の効果を発揮します。
経験を積んだ後、上司からフィードバックを受けて振り返ることで理解が深まる。
経験したことを研修で体系化し、知識として整理することで応用力が高まる。
研修で学んだ内容を現場で実践し、実務を通じて定着させる。
こうした循環が人材の成長を加速させるのです。
バランスを崩すとどうなるか?
経験のみ:現場に放置されると学びが体系化されず、成長が遅れる。
研修のみ:学んだ内容を実務で試す機会がなければ、知識が形骸化する。
薫陶不足:フィードバックがなければ改善点が見えず、同じ失敗を繰り返す。
したがって、教育担当者は経験・薫陶・研修をどのように組み合わせるかを意識した人材育成設計を行うことが求められます。
4. 実践のためのポイント

現場の声を取り入れる
人材育成の施策を考える際は、人事部や教育担当者だけで決めるのではなく、現場の意見を丁寧に聞くことが重要です。現場でどのような課題が起きているのか、どのスキルが不足しているのかを把握することで、より的確な研修や育成計画を立てることができます。
単発研修で終わらせない
1日の研修を実施するだけでは、人の行動変容にはつながりにくいものです。
研修前後で目標を設定する
上司からのフォローアップを仕組みに組み込む
実践と振り返りを繰り返す仕掛けを用意する
こうした工夫により、研修効果を高めることができます。
人材育成の目的は、組織の戦略達成と事業存続に必要な能力を社員に獲得させること。
研修はあくまで手段であり、課題の原因分析と解決策の検討が不可欠。
成長には70%の経験、20%の薫陶、10%の研修がバランスよく連動することが重要。
人材育成をデザインする際は、この3つの要素をどのように組み合わせるかを考え、研修だけに頼らない包括的な育成施策を検討してみてください。
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この記事が、皆さまの人材育成のヒントとなれば幸いです。