人材確保が年々難しくなる中で、せっかく採用した新人をどのように育てていくかは、企業にとって重要なテーマです。思うように成長しない新人に頭を悩ませている教育担当の方も多いのではないでしょうか。
そんな時に思い出していただきたいのが、有名なイソップ寓話「北風と太陽」のお話です。この寓話には、新人教育において非常に大切なエッセンスが詰まっています。
今回は、「北風上司」と「太陽上司」という2つの指導スタイルの違いを例に挙げながら、新人教育に役立つ考え方をご紹介します。

まずはお馴染みの寓話を振り返ってみましょう。ある日、北風と太陽が「旅人の上着を脱がせる勝負」をすることになりました。
北風は力いっぱい風を吹きつけますが、旅人は寒さから身を守るために、ますます上着を体に巻きつけてしまいます。
一方、太陽は静かに、しかし優しく暖かい光を当て続けました。すると旅人は「ああ、暑いな」と感じ、自ら上着を脱いでしまいました。
この勝負は太陽の勝利となったのです。
この話は人間関係にも、特に上司と部下の関係に深く通じています。

まずは「北風上司」について考えてみましょう。
「自分の思い通りに動かそう」「早く戦力になってほしい」と焦るあまり、部下に強く当たったり、頭ごなしに叱ったりしていないでしょうか?
そのような指導は、部下の行動を一時的には変えるかもしれませんが、長期的に見れば逆効果になることも少なくありません。
こうした接し方をされると、部下はどうなるでしょうか?
自信を失い、萎縮し、ミスを恐れて本音を言えなくなり、最悪の場合はミスを隠すようになってしまいます。
結果として、成長どころか退職リスクが高まってしまうこともあります。

それでは、「太陽上司」とはどのような存在でしょうか?
それは、部下の意思を尊重し、見守り、支えながら育てる指導スタイルのことです。
時間はかかるかもしれませんが、自発的な行動を引き出すことができ、結果的に部下はしっかりと成長していきます。
このような接し方を受けた部下は、「自分の話を聞いてくれている」「見捨てずに育ててくれている」と感じ、上司に信頼を寄せるようになります。
その信頼関係ができて初めて、部下は自ら考え、自ら動けるようになるのです。

新人が失敗したときこそ、上司の真価が問われる場面です。
たとえば、「部下が納期を守れなかった」といった重大なミスが起きたとします。
その時、「北風上司」のように頭ごなしに叱りつけるのか、それとも「太陽上司」のように、まず話を聞き、原因を一緒に分析するのかで、今後の部下の成長スピードは大きく変わってきます。
部下自身に「次はこうしよう」と考えさせることができれば、ミスを学びに変えることができます。
それが、「自分の成長のために指導してくれている」と感じさせる、本当の意味での指導なのです。
温かい接し方が基本とはいえ、必要な場面では厳しさも欠かせません。
「太陽上司=甘やかす人」ではありません。
部下の成長を本気で願っているからこそ、愛情を持って叱ることも必要なのです。
ただし、その叱責が感情的だったり、自分の怒りをぶつけるだけのものであれば、それは「北風」に逆戻りです。
あくまで愛情を持って、冷静に、相手の成長を願って叱る。それが「太陽上司」の本質です。

最後に、もう一度問いかけます。あなたは「北風上司」でしょうか?それとも「太陽上司」でしょうか?
部下を変えたいと思う前に、まずは自分自身の接し方を見直してみることが、新人育成成功の第一歩です。
「変わってほしい」と思っても、強引に変えようとすれば反発を招きます。
逆に、信じて、支えて、任せて、尊重していくことで、部下は自分の意思で動くようになります。
部下の成長には時間がかかるもの。焦らず、じっくりと向き合っていきましょう。
あなたの接し方ひとつで、部下の未来は大きく変わるかもしれません。