
新年度を迎え、新たに職場に加わった新入社員たちとの関わりが始まる季節。多くの先輩社員や上司にとって、彼らの教育やサポートは大きなテーマとなります。その際、知識やスキルを一方的に伝えること以上に重要なのが、「傾聴力(けいちょうりょく)」です。
本記事では、傾聴力の基本と実践法を、職場での信頼関係構築を軸に掘り下げていきます。

傾聴とは、単に相手の話を聞くのではなく、「相手の立場に立ち、その感情に共感しながら聴くこと」です。自分の固定観念や先入観を一度わきに置き、相手の語る言葉や、その背後にある思いや価値観に耳を傾けることが大切です。
特に新入社員のように、まだ自分の意見を自由に言いづらい立場の人にとっては、「きちんと聴いてもらえている」という実感が、安心感と信頼につながります。話を真剣に聴いてもらえた経験は、その後の人間関係やモチベーションに大きな影響を与えるのです。

新入社員教育というと、上司が業務の進め方やルールを一方的に説明する場面をイメージされがちです。しかし、本来コミュニケーションとは双方向のものであり、一方通行になってしまうと相手との距離は縮まりません。
新入社員は、覚えることが多く日々の業務に追われているため、なかなか自分から意見や悩みを発信しづらいものです。だからこそ、先輩や上司が「あなたの声を聴きたい」という姿勢を見せ、自ら話す機会を与えることが必要です。
そして、その話を傾聴することで、新人は「この人なら話せる」「自分の考えを受け止めてもらえた」と感じ、心を開いていきます。こうした積み重ねこそが、深い信頼関係の土台となります。
傾聴力は、誰にでも備わっている能力ではありません。以下に該当する場合、自分の傾聴スタイルを見直す必要があるかもしれません。
どれか一つでも当てはまる方は、傾聴力を意識的に高めていくことで、職場の人間関係や信頼度に大きな変化をもたらすことができます。
それでは、実際にどのようにして傾聴力を育てていけばよいのでしょうか。すぐに実践できる具体的な方法を紹介します。
別の作業をしていたとしても、話しかけられたら手を止め、体を相手の方に向けましょう。目を見てうなずくだけでも、「あなたの話に関心を持っている」というメッセージを伝えることができます。
「この人はまだ経験が浅いから…」と決めつけず、まずは話の中身を素直に受け取ることが大切です。安心できる場をつくることで、新人はどんなことでも相談しやすくなります。
間違っていたとしても、途中で遮らずに最後まで聴きましょう。話を聴いてもらえたという経験自体が、相手の自信や信頼感につながります。
「なるほど」「そうなんですね」など、相づちやうなずきを効果的に使うことで、関心を持って聴いていることが伝わります。浅いうなずき(リズム)と深いうなずき(共感)を使い分けるのもポイントです。
話している内容に応じて、表情も寄り添いましょう。新人が笑顔で話していれば一緒に微笑み、悩んでいるときは真剣な表情で向き合うことが、共感を深めます。
相手の言葉をそのまま、あるいは少し言い換えて返すことで、「きちんと理解していますよ」というメッセージになります。
例
新人「お客様から“任せてよかった”とお褒めの言葉をいただきました」
上司「 “任せてよかった”とお褒めの言葉をいただいたんですね。お客様から信頼を得られている証拠だと思います。この調子で仕事を進めてください」

傾聴スキル以上に大切なのは、新人に関心を持つこと。「この人はどんな背景を持っているのだろう」「今、何を感じているのかな」といった素朴な興味こそが、自然な共感と傾聴の姿勢を育てます。
人は「自分に関心を持ってくれている」と感じる相手に心を開きます。新人との関係を築く第一歩として、まずは興味を持つことから始めてみましょう。

「頼られる上司」になるために
傾聴は、単なる聞き役ではありません。相手の立場に立ち、その心の声を受け止め、共感し、信頼を築いていく行為です。
新入社員の育成においても、まず「聴くこと」ができる上司は、頼りがいがあり、尊敬される存在となります。
ぜひ今日から、意識して“聴く力”を育ててみませんか?
あなたの一言が、新人の未来を明るく照らすかもしれません。