自閉症スペクトラムの発症における先天的要因の重要性と、その疫学的根拠について説明します。
発症年齢
最近の研究により、自閉症スペクトラムの特徴は、一般的に1歳までには現れることが多いとされています。
乳幼児期の発達
自閉症スペクトラムの乳幼児期には、以下のような非定型的な発達特徴が多く報告されています。
これらの特徴は、家庭のホームビデオや兄弟の追跡調査などでも確認されています。保護者が子供の育てにくさを感じるのは、このためです。
保護者の気づき
一般的に、保護者が発達に問題を感じ始めるのは2歳頃ですが、知的障害がない場合は気づきが遅れることが多く、兄弟に自閉症スペクトラムの診断者がいると気づきが早まる傾向があります。
発症原因と発症年齢の違い
自閉症スペクトラムは単一の原因ではなく、発症年齢は原因によって異なることがあります。基本的には非進行性ですが、約3割のケースで発達の退行が見られます。
自閉症スペクトラムの有病率

自閉症スペクトラムの有病率は世界中で上昇しており、地域差はほとんどなく、人口の約2%とされています。この上昇は診断基準の改定や社会的認知の向上によるものが大きいと考えられています。自閉症スペクトラム(ASD)の有病率について、世界的に一貫して増加していることが報告されています。この増加が実際のものなのか、それとも見かけ上のものなのか、あるいはその両方を含むのかはまだ明らかではありません。診断基準やASDの範囲によっても有病率は変動しますが、信頼性の高い研究によると、ASDの有病率には大きな地域差はなく、現時点で人口の2%前後と見積もられています。
【有病率調査】
〇1966年 ~もっとも古い~
1966年の最も古い有病率調査によると、カナー型の中核的自閉症が0.020%、非中核的自閉症が0.025%で、両者を合わせると0.045%と報告されています。また、自閉症とはいえないが部分的な特徴を持つ子どもが0.033%いることが示されており、この時点ですでに自閉症スペクトラムであることが示唆されていました。
〇1970年代までのヨーロッパ及び米国の研究
〇1980年代以降の有病率上昇
1970年代までに行われたヨーロッパ及び米国の研究では、有病率が0.04~0.05%と報告されていますが、1980年代以降は有病率が上昇し、最近のデータでは韓国で2.64%、カナダで1.22%、米国で2.47%と報告されています。これにより、1970年代と比較して有病率は60倍にも達しています。この増加が実際のものか、見かけ上のものかはまだ結論が出ていません。
有病率上昇の要因
有病率上昇の一部には、診断基準の改定により、より多くの人々が含まれるようになったことや、自閉症スペクトラムに対する社会的な認知の向上、医療・教育・福祉サービスの提供体制の整備が関係しています。これにより、以前は診断されなかった人々が診断されるようになっています。
自閉症スペクトラム増加の原因と想定されてきたもの
自閉症スペクトラムの増加の原因として、ワクチン、化学物質、毒素などの環境因子が想定されてきましたが、これらのほとんどは疫学的に否定されています。自閉症スペクトラムの増加が実際にあるかどうかはまだ明確ではなく、安易な原因論には注意が必要です。
有病率の地域差・民族差
報告されている有病率の地域差や民族差は、社会的認知、医療機関へのアクセス、早期介入の体制などの社会的要因によるものが大きいと考えられています。
知的障害の併存率
自閉症スペクトラムの知的障害併存率は1970年代の70%〜90%から現在は約30%に低下しています。これは、自閉症スペクトラムの概念や認知が広がったことが主な理由です。
男女差
自閉症スペクトラムは男性に多く見られ、男女比は3〜4:1です。知的障害を伴わない場合は男女差が大きく、重度の知的障害を伴う場合は男女比が1:1に近づきます。
遺伝的要因
自閉症スペクトラムの発症には遺伝的要因が大きいことが知られています。遺伝率は約50%とされ、一卵性双生児の一致率は高く、二卵性双生児や一般のきょうだい児と比較しても高いことが確認されています。
家族歴と発症リスク

家族歴がある場合、次の子供の自閉症スペクトラムの発症リスクは高く、遺伝的近親度に大きく依存します。これらの研究結果は将来的に遺伝相談への応用が期待されています。
以上、自閉症スペクトラムの疫学的研究についての解説でした。