
敬語は、ビジネスシーンにおいて円滑な人間関係を築くうえで欠かせないコミュニケーションツールの一つです。特に顧客対応や社内での報告、あるいはメールのやりとりやプレゼンテーションなど、あらゆる場面で敬語が用いられます。しかし、その中でも「丁寧に話そう」とするあまり、知らず知らずのうちに「二重敬語」を使ってしまうケースが後を絶ちません。
この記事では、「そもそも二重敬語とは何か?」という基本から、実際によくある間違いの例、そして正しい言い換え方までを詳しくご紹介します。二重敬語の正しい理解を深め、洗練された言葉遣いを身につけていきましょう。
二重敬語とは、すでに敬語表現となっている語に、さらに敬語を重ねてしまうことを指します。一見丁寧に聞こえるため、好印象だと思われがちですが、敬語に精通している方にとっては「不自然」「過剰」と映ることがあります。特に書き言葉やフォーマルなビジネス文書においては注意が必要です。
例
「資料をご覧になられましたか?」
この表現は、一見すると丁寧なようですが、「ご覧になる」がすでに尊敬語であるため、「~られる」を重ねることで二重敬語となります。
ビジネスの現場では、「二重敬語は絶対に使ってはいけない」というわけではありません。ただし、敬語の正しい使い方を理解している相手には「この人、言葉の使い方があやふやだな」と思われてしまう可能性もあります。
言葉遣いは、あなたの知性や誠意を表すものです。特に年齢や立場が上の方とのやりとりでは、正しい敬語を自然に使えることが信頼構築にもつながります。
【 尊敬語に「~られる」を重ねるケース 】
| × 二重敬語の例 | 〇 正しい敬語 |
| 資料をご覧になられましたか | 資料をご覧になりましたか |
| お客様がおっしゃられました | お客様がおっしゃいました |
| 昼食は召し上がられましたか | 昼食は召し上がりましたか |
| お客様がお帰りになられました | お客様がお帰りになりました |
| お客様がお見えになられました | お客様がお見えになりました |
いずれも「~なる」や「召し上がる」「おっしゃる」といった表現がすでに尊敬語であるため、そこに「~られる」を重ねると過剰になってしまいます。
肩書きや敬称に「様」をつけることで、意図せず二重敬語になることもあります。
| × 二重敬語の例 | 〇 正しい表現 |
| 山田社長様 | 山田社長 |
| 関係者各位様 | 関係者各位 |
「社長」や「各位」はそれ自体が敬意を含むため、重ねて「様」をつける必要はありません。
以下は、過剰な謙譲表現による二重敬語の代表例です。
| × 二重敬語の例 | 〇 正しい表現 |
| 資料を拝見いたしました | 資料を拝見しました/資料を見ました |
| 本日、伺わせていただきます | 本日、伺います |
| 頂戴いたします | 頂戴します |
「拝見」「伺う」「頂戴する」はそれ自体が謙譲語です。そこに「いたします」を重ねると冗長になるため、通常は単体で用いるのが正しいとされています。
一方で、「お召し上がりになる」や「お伺いする」といった表現は、形式上は二重敬語に該当する場合もありますが、すでに社会的に定着し、違和感なく使われている表現でもあります。このような言い回しは、状況や相手に応じて柔軟に使用することが認められています。
例
「お召し上がりになりましたか?」 → ○ (定着済み)
「お伺いします」 → ○(自然な謙譲語)
敬語は、時代や社会の変化とともに進化する言語要素です。かつては不自然とされた言い回しが、今では普通に使われているケースもあります。そのため、「絶対にNG」というわけではなく、「現時点で一般的に不自然とされているかどうか」に着目することが大切です。
ただし、ビジネスの場においては、相手に違和感や疑念を抱かせない言葉遣いを心がけることが重要です。

正しい敬語で信頼を得よう
二重敬語は、「丁寧に話そう」という善意から使ってしまうことが多いものです。しかし、その言葉遣いが相手にとって不自然に聞こえると、誠意が伝わらないどころか、マイナスの印象を与えてしまうことにもなりかねません。
正しい敬語を知り、場にふさわしい表現を選ぶことは、あなた自身の信頼性を高め、円滑なコミュニケーションを可能にします。
仕事の場面では、メールや電話、プレゼンテーションなど、敬語を使う機会が数多く発生します。ぜひ今回ご紹介した表現を意識しながら、より自然で丁寧な話し方を目指していきましょう。