ビジネスの場では、上司や取引先と円滑なコミュニケーションを図るために「敬語」の使い方が非常に重要になります。日常の会話では気にならなくても、いざという場面で「言葉遣いがおかしい」と思われてしまうと、相手からの信頼を失うこともあるかもしれません。
中でも混同しやすいのが「尊敬語」と「謙譲語」です。意味を知っているようでいて、実は曖昧なまま使ってしまっているという方も少なくないのではないでしょうか。
本記事では尊敬語と謙譲語の基本的な違いから、具体的な使用例、そしてビジネスシーンで間違えやすいケースまで丁寧に解説していきます。
社会人として恥ずかしくない、信頼される言葉遣いを身に付けていきましょう。

敬語には主に「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類がありますが、今回はその中でも特に使い分けが難しい「尊敬語」と「謙譲語」に焦点を当てます。
尊敬語は、話し手が相手の行動や状態を高めて表現する言葉です。つまり主語は“相手”であり、相手の立場を上げることで敬意を示す表現になります。
上司やお客様など目上の人に対して使うのが一般的です。
尊敬語を使うことで、相手に対して敬意を払っていることを明確に伝えることができます。
一方で謙譲語は、話し手自身や自分側の人間の行動をへりくだって表現する言葉です。主語は“自分”であり、自分を下げることによって相手を立てる表現になります。
尊敬語とは違い、自分側の行動に使う点がポイントです。
このように、自分を低くすることで相手を高く見せるのが謙譲語の特徴です。
日常の会話や業務連絡の中で、正しく使い分けられているか不安になることもあると思います。以下に、代表的な動詞を例に尊敬語・謙譲語の一覧を紹介します。
| 意味 | 尊敬語 | 謙譲語 |
| 行く | いらっしゃる | 参る、伺う |
| 来る | いらっしゃる | 参る、伺う |
| いる | いらっしゃる | おる |
| 言う | 仰る | 申す、申し上げる |
| する | なさる | いたす |
| 見る | ご覧になる | 拝見する |
| 聞く | お聞きになる | 伺う、拝聴する |
| 食べる | 召し上がる | 頂戴する、いただく |
| 知っている | ご存知です | 存じ上げる、存じる |
例えばお客様に「私がご覧になりました」と言ってしまうと、自分の行動に対して尊敬語を使っていることになり、違和感のある表現になってしまいます。正しくは「拝見しました」と謙譲語を使うのが正解です。

ビジネスの電話対応などで、特に気を付けたいのが「社内の人を社外の人にどう説明するか」という場面です。
例え社内の人が上司や社長であっても、社外の人に対して話す時は「身内扱い」となり、尊敬語ではなく謙譲語を使う必要があります。
お客様:「○○課長はいらっしゃいますか?」
あなた:「○○課長は外出されております」
→“外出されております”は尊敬語のため不適切です。
「課長の○○は、只今外出しております」
→“しております”は謙譲語であり、社外向けに相応しい表現です。
同様に、社内の人が資料を確認したと伝える場合も、
×:「○○課長はご覧になっていました」
○:「課長の○○は拝見しておりました」
と表現を変えることで、社外から見た際に適切な敬語となります。

敬語は単なる形式的なマナーではなく、相手への敬意や配慮を言葉で表す重要なツールです。特に取引先やお客様と接する際、正しい言葉遣いができているかどうかで、その人の印象や信頼感は大きく変わります。
また社内の人間関係においても、正しい敬語を使うことで互いに気持ちの良いやり取りができ、職場全体のコミュニケーションも円滑になります。
普段から敬語に気を配る習慣を身に付けておけば、いざという時にも自然に正しい言葉が出てくるようになります。
丁寧で正確な敬語を身に付けることは、一朝一夕では難しいかもしれません。しかし普段から少しずつ意識して使い続けることで、必ず自分の言葉として自然に身に付いていきます。正しい敬語を身に付け、相手への思いやりを形にできるビジネスパーソンを目指していきましょう。