2020年6月に施行されたパワーハラスメント防止法により、企業のハラスメント対策は制度的に強化されました。しかし現場では、パワハラがなくならないのが現実です。加害者本人が「自分の指導は正しい」と思い込んでいることも少なくありません。
本記事では、ハラスメント研修の現場で見られる典型的な言動をもとに、パワハラ体質の特徴を分析し、組織全体で取り組むべき防止策を考えていきます。

研修の場で最も多く出る質問の一つに、「自分は厳しく育てられて成長できた。なぜ今は厳しくしてはいけないのか」というものがあります。これは、自身の成功体験を正当化し、同じ手法を他人にも当てはめようとする思考です。
しかし、現代の職場では価値観が多様化し、過去の「厳しい指導」が通用しない場面が増えています。過度な叱責や感情的な対応は、指導ではなく「威圧」となり、モチベーション低下や離職を招くリスクもあります。
ある50代管理職男性は、「自分は上司から厳しくされて今がある。井村コーチのような厳しい指導が必要だ」と語ります。
確かに井村コーチの指導は厳しく、結果を出しましたが、それは選手との信頼関係と共通の目標があってこそ成立したものです。職場でも同様に、
といった視点がなければ、指導はただの強制や押しつけになります。
別の女性管理職は「ミスには厳しく接するのが当然」と話しましたが、実際には彼女のもとで多くの後輩が辞めていました。
調査によると、彼女は怒鳴る、感情的になるといった指導を繰り返しており、部下は萎縮し、能動的に動けない状態に陥っていました。
重要なのは、
という点を常に見直すことです。

パワハラ傾向のある人には以下の特徴が見られます:
「自分はできた」「だからできない相手がおかしい」と、他人を自分基準で評価してしまう。
時代や働き方が変わっても「自分のやり方」を変えようとしない。「これはハラスメントではない」と頑なに主張し、自らを正当化する。


1回きりの講義で終わらせず、定期的なフォローアップや実践的ワークショップが必要です。
問題行動が改善されない場合には、異動、指導役の解除、懲戒などの措置も検討すべきです。
パワハラの被害者だけでなく、周囲の社員にも悪影響が及びます。風通しのよい環境づくりが生産性向上にもつながります。

パワーハラスメントの根絶は、「厳しさの否定」ではなく、「適切な指導と信頼関係の構築」が鍵です。かつてのやり方を正当化するのではなく、今の部下に合った関わり方を考える姿勢が求められています。
指導する側も学び、成長していくことで、より良い職場環境が実現します。法令順守にとどまらず、全社員が安心して働ける職場を目指して、私たち一人ひとりができることから始めましょう。