
「まさか、この敬語が間違っていたなんて!」
長年何気なく使ってきた言葉が、実はビジネスの場では誤用だった――そんな経験をしたことはありませんか。敬語は、相手を敬う気持ちを言葉として表すための大切な表現であり、社会人としての品格を映す鏡でもあります。
学生時代に尊敬語・謙譲語・丁寧語を学んだ方も多いでしょう。しかし実際の職場では、敬語を体系的に学ぶ機会は限られており、ビジネスマナー研修くらいというケースも珍しくありません。多くの人は上司や先輩の話し方を真似しながら「これでいいかな」と自己流で使っているのが現状です。
筆者は企業研修講師として延べ1,600回以上登壇し、その中で多くのビジネスマナー研修を担当してきました。敬語の指導を行う立場になると、日常生活でも店員やスタッフの言葉遣いが気になるものです。例えば、喫茶店で席に案内された際に「こちらにお座りください」と言われたことがありました。「お座り」は犬のしつけ用語の印象が強く、ビジネスでは不適切。正しくは「こちらにおかけください」です。
本人が誤りに気づかないまま使い続けているケースは少なくありません。相手に違和感を与えたり、自分の評価を下げたりすることもあるため、正しい敬語を身につけることは重要です。敬語を自在に使える人は、普段の会話も柔軟にこなせますが、逆に敬語が不得意な人は必要な場面で不自然な表現になりがちです。今回は、間違いやすい敬語を10例取り上げ、正しい使い方を紹介します。
一見丁寧ですが、「参考」は数ある判断材料の一つという軽い印象を与えます。目上や顧客には「ご意見勉強になりました。ありがとうございます。」と感謝と学びの姿勢を示すのが適切です。
「ご苦労様」は目上から目下に向けて使う表現。上司や先輩には「お疲れ様です」が正解です。意味ではなく、ビジネスの挨拶として覚えておきましょう。
「了解」は同意や許可を与えるニュアンスがあり、上から目線に響く場合があります。お客様や上司には「承知いたしました」または「かしこまりました」が無難です。
「させていただく」は許可を得る場合や自分が利益を得る場合に使います。会議での配布は「配布いたします」で十分。不要な「させていただく」は避けましょう。
意図せず上から目線に感じられる表現です。「ご理解いただけましたでしょうか」と言い換えると、より丁寧な確認になります。
「ご自愛ください」に「お身体」の意味が含まれており、二重表現です。正しくは「ご自愛ください」のみで十分です。
「頂戴する」は物を受け取る際に使うため、名前には不適切です。「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」が正しい表現です。ただし名刺は物なので「お名刺頂戴してもよろしいでしょうか」はOKです。
「〜になる」は変化を表す言葉。資料は変化しないため、「資料でございます」または「資料です」が適切です。飲食店での「コーヒーになります」も同様に見直しましょう。
軽く相槌を打つ若者言葉に近く、時に見下した印象を与えます。ビジネスでは「おっしゃる通りです」や「確かに」が望ましいです。
「ございます」は物に対して用いる言葉です。人に対しては「鈴木様でいらっしゃいますね」が正解です。

これらの誤用は、意味を知らずに習慣で使ってしまうことが多く、本人に悪意はありません。しかし、受け手に違和感を与えたり、無意識に立場を上下させてしまう恐れがあります。ビジネスの場では、第一印象や信頼感は言葉遣いから生まれます。正しい敬語を使えることは、礼儀を尽くすだけでなく、自分自身の評価や信頼構築にも直結します。
日常会話ではそこまで堅苦しく話す必要はありませんが、いざという時に自然に敬語を使えることは大きな武器になります。間違いに気づいたらすぐに修正し、部下や後輩が誤った使い方をしている時には、やんわりと教えてあげましょう。
敬語は単なる形式ではなく、相手への敬意を形にするものです。今日から一つでも正しい表現を取り入れ、信頼される話し方を目指してみませんか。