昨今、多くの職場で「部下を叱れない上司」が増えているといわれています。部下を育成する立場にあるにもかかわらず、叱ることを避けてしまい、その結果として部下が成長できずに苦しんでいるケースも少なくありません。叱ることが難しい理由や、どうすれば部下を正しく叱れるようになるのか。今回はその核心に迫り、上司としてのあるべき姿や実践すべき具体的な方法について詳しくお話しします。

まず、なぜ「叱れない上司」が増えているのでしょうか。その背景にはいくつかの心理的な要因や社会的な状況が挙げられます。
こうした理由から、多くの上司が「叱る」という行為に対して心理的な負担を感じ、避ける傾向にあるのが現状です。

では、上司が叱らないままでいると、どのような問題が起こるのでしょうか。
一方で、「良い上司」とは「叱らない優しい上司」ではなく、「叱って部下を成長させる上司」であることを改めて認識する必要があります。叱ることを恐れ、放置してしまうことは、上司としての責任放棄にほかならないのです。

叱ることは決して、感情的に怒鳴ったり、ただ強く叱責することではありません。ここでの「叱る」とは、
部下の成長のために、良くない点を具体的に指摘し、部下に気づきを与える行為
を指します。感情的な叱責は部下を萎縮させ、上司の顔色をうかがいながら仕事をするようになり、結果的に成長を妨げます。
叱る目的はあくまでも部下の成長。これを理解することが、叱り方の第一歩となります。
それでは、叱れない上司が叱れるようになるための具体的な5つのポイントをご紹介します。
前述した通り、叱れない上司には多くの理由があります。まずはそれを認識し、なぜ自分が叱れないのかを冷静に自己分析してみましょう。嫌われる恐怖やパワハラを恐れる気持ち、正しい方法が分からないこと、部下への無関心など、自分の心理的障壁を知ることが重要です。
叱らないままにしておくことで、部下は成長できずに不幸になり、組織にも悪影響が及ぶことを深く理解しましょう。この認識が、叱ることへの意識改革のきっかけになります。
叱る基準は「部下の成長のためかどうか」です。感情的に言いたいことを言うのではなく、部下の改善や成果の向上に資する指摘だけを行うことが重要です。例えば「仕事を手抜きしているな」と感じた場合、そのまま見逃さず、適切に指摘して本人に気づきを与えましょう。
叱り方次第で部下の受け止め方は大きく変わります。叱るときは相手の行動を否定するのではなく、自分の感覚や考えを主語にして伝えることがポイントです。
例えば、
NG例:「鈴木さん、今のお客さんへの話し方は友達みたいでダメだよ」
→ 部下の行動を直接否定し、理由も説明していません。
良い例:「鈴木さん、先ほどのお客さんとの電話を聞いていたのですが、私は少し友達と話しているように感じました。お客さんの中にはラフな話し方が苦手な方もいるので、敬語を使うほうが好まれることが多いです。だから仕事では敬語を使ったほうが良いと思います」
→ 自分の感じたことを伝え、理由も添えて納得感を促しています。
また、叱るタイミングも重要です。電話対応の話なら、電話を切った直後に伝えるのが効果的で、時間が空きすぎると指摘の意味が薄れてしまいます。
叱る土台となるのは、日頃からの良好な関係性です。部下との信頼関係があれば、指摘も素直に受け入れてもらいやすくなります。逆に関係性が希薄だと、叱ること自体が難しくなります。
そのために、まずは毎日1回は部下に声をかけることをお勧めします。報告・連絡・相談のための声かけではなく、「今日はどう?」「調子はどう?」といった気遣いや声かけです。朝の挨拶に一言励ましを添えたり、昼休憩に軽い会話をするだけでも、信頼関係は徐々に深まります。関係性作りは一朝一夕にできるものではありませんが、積み重ねることで確実に効果が現れます。

叱ることに苦手意識を持つ方は、まず「叱る」ことそのものに飛びつくのではなく、部下とのコミュニケーションを増やし関係性を深めることに取り組んでみてください。1日1回の声かけを続けることで、部下からも話しかけやすくなり、指摘も受け入れられやすくなります。そうして信頼関係ができてはじめて、建設的な叱りが可能となるのです。
「叱れない上司」は決して特別な存在ではなく、多くの管理職が抱える悩みです。しかし、叱ることは部下の成長のために必要不可欠な役割です。上記のポイントを押さえ、部下の成長を真剣に願う気持ちを持って接すれば、きっと叱れる上司へと変わることができます。
部下を叱れずに悩む上司の方へ、今日からぜひこの「1日1回の声かけ」を試してみてください。叱ることのハードルは確かに高いですが、一歩ずつ着実に踏み出すことが、部下の未来と組織の成長を切り開く鍵となるのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。