取引先へ訪問する際、事前にアポイントメント(約束)を取るのは社会人としての基本マナーです。
しかし、その取り方次第で、相手からの信頼を高めることもあれば、逆に失ってしまうこともあります。特に電話でのアポイントは、相手の業務を一時的に中断させる行為であるため、配慮や言葉遣いが重要です。
「今日、たまたま時間が空いたので、本日お伺いしてもよろしいでしょうか?」と、自分本位な依頼をしてしまうと、「この人は相手の都合を考えていない」と思われ、関係性が悪化する可能性もあります。実際、アポイントの取り方ひとつで、その人の人柄やビジネスマナーが判断されることは少なくありません。
私自身、前職で営業職として約500件の顧客を担当していました。すべてを訪問することはできませんでしたが、主要な取引先には電話をかけて日程を調整し、訪問していました。その経験から強く感じるのは、「アポイントの段階からすでに営業は始まっている」ということです。訪問日を決めるやりとりは、売上や信頼関係を築くための第一歩。だからこそ、丁寧で印象の良い対応が欠かせません。
以下では、電話でアポイントを取る際の注意点4つと、スムーズに日程を決めるための基本フレーズをご紹介します。

電話は相手の業務を一旦止めてしまう行為です。だからこそ、「相手が出やすく、負担にならない時間帯」を考えることが重要です。
一般的な企業では、以下の時間帯は避けた方が良いとされています。
例えば、9時~17時の就業時間であれば、10時~12時、13時~16時の間が比較的連絡しやすい時間帯です。さらに、相手の業務内容に応じて調整すると効果的です。
営業職の相手であれば午前中は外出してしまうことも多いため、10時前後の早めの時間にかける。会議が多い部署であれば午後に連絡する。といった工夫が必要です。飲食店であれば、14時~17時のいわゆる「アイドルタイム」が狙い目です。

忙しい取引先が時間を作ってくれるのは、そこに何らかのメリットを感じられるからです。
そのため、訪問する目的と所要時間を明確に伝え、相手に安心感を与えましょう。
例:
「先日ご依頼いただいた見積もりが完成しましたので、内容をご説明に伺いたく存じます。30分ほどお時間をいただければと存じます」
このように目的が具体的で、時間も明確であれば、相手は日程を検討しやすくなります。「何をするために、どれくらい時間が必要なのか」を省略すると、「長く拘束されるのではないか」という不安を与えてしまうので注意が必要です。

日程調整では、相手本位の姿勢が大切です。ただし「いつがよろしいでしょうか?」とだけ尋ねると、相手は範囲が広すぎて答えにくくなります。
そのため、ある程度期間を絞って提示することがポイントです。
例:
「来週中でご都合のよい日程はございますでしょうか?」
このように期限を切ることで、相手はスムーズに候補日を出しやすくなります。
また、相手が提示した日程と自分の予定が合わない場合、無理に合わせる必要はありません。
その際は、丁寧に理由を述べたうえで代替案を出しましょう。
例:
「申し訳ございません。その日は予定が入っておりますが、午後でしたらお伺いできます。いかがでしょうか?」
訪問時に同伴者がいる場合は、必ず事前に知らせておきましょう。
相手は資料や席、お茶などの準備をします。突然人数が増えると、対応に手間がかかり、印象を損ねる恐れがあります。
例:
「弊社課長の〇〇と一緒にお伺いさせていただきます」
この一言を添えるだけで、相手は心構えができ、円滑な対応が可能になります。

以下は、電話でのアポイント例です。実際の会話を想定して練習しておくと、スムーズに話せます。
かける側:
「いつもお世話になっております。〇〇商事の〇〇でございます。〇〇様、今お時間よろしいでしょうか?」
受ける側:
「はい、大丈夫です」
かける側:
「ありがとうございます。先日ご依頼いただきました見積もりが完成しましたので、弊社課長の〇〇と一緒にお伺いしたいと存じます。30分ほどお時間をいただければと考えておりますが、来週のご予定はいかがでしょうか?」
受ける側:
「来週でしたら、27日(水)10時はいかがでしょう?」
かける側(予定が合わない場合):
「申し訳ございません。その時間は予定が入っておりますが、14時以降でしたらお伺いできます。いかがでしょうか?」
この会話例には、先に紹介した4つのポイントがすべて含まれています。何度か練習し、自然に口から出るようにしておくと安心です。
取引先との関係は、必ずしも永続的ではありません。同業他社が存在し、価格や商品が大きく変わらない場合、最終的な決め手になるのは「気持ちの良い対応」です。
その第一歩となるのが、電話でのアポイントの取り方です。
これらを意識すれば、相手に配慮のある印象を与えられ、信頼関係の構築につながります。アポイントの場面は、すでに営業活動の一部です。ぜひ一度、基本フレーズを練習してから電話をかけ、心地よいコミュニケーションで関係を深めていきましょう。