参加型研修『ケーススタディ』の作り方~リアルな事例で実践力を身につける~

参加型研修「ケーススタディ」の作り方
〜リアルな事例で実践力を身につける〜

参加型研修「ケーススタディ」の作り方
〜リアルな事例で実践力を身につける〜

研修の効果を高めるためには、単に講師が一方的に知識を伝えるだけでなく、受講者自身が考え、意見を出し合い、学びを自分の中に定着させる「参加型」の要素が欠かせません。その中でも特に有効なのが「ケーススタディ」です。

ケーススタディは、実際に起きた、または起こり得る事例をもとに、受講者が解決策や望ましい行動を考える演習方法です。現場の状況を想定しながら思考を深めることで、知識が実務で活きる形となり、研修の成果が格段に向上します。

しかし、やみくもにケーススタディを取り入れても効果は半減します。事例の選び方や質問の仕方を誤ると、議論がまとまらなかったり、結論が曖昧になったりするためです。そこで今回は、ケーススタディを成功させるための具体的な作り方を3つのポイントに分けてご紹介します。

1. リアルな事例を使う

ケーススタディの成否を大きく左右するのは「事例のリアリティ」です。受講者が「自分の職場で起きそうだ」「以前こんな場面を見たことがある」と感じられる事例ほど、学びへの集中度や参加意識が高まります。

大手研修会社では、さまざまな業種に対応するため、汎用的な事例を使用することが多くあります。これも一定の効果はありますが、やはり「自分たちの職場に置き換えられる」事例の方が圧倒的に学びやすくなります。中小企業や独自研修を行う立場であれば、打ち合わせの際に現場の具体的な課題や最近起きたトラブル事例などをヒアリングし、それをもとにオリジナルのケーススタディを作成することをおすすめします。

例えば接客研修であれば、実際のクレーム事例や顧客とのやり取りをモデルにし、「あの時こうすればもっと良い対応ができたのでは?」といった形で議論を促すと、受講者の「あるある!」という共感が生まれ、主体的に考える姿勢が強まります。

2. 「状況 → 結果 → 行動」の順に構成する

ケーススタディを作る際は、必ず 「状況」「結果」「行動」 の順に構成することが重要です。この順番を守ることで、受講者は自然に問題の本質を捉え、解決策を導きやすくなります。

  • 状況:何が起きたのか、事実関係を明確に提示します。
  • 結果:その状況の中でどんな成果や問題が発生したのかを説明します。
  • 行動:その結果を改善、またはより良いものにするために、どのような行動を取るべきかを考えます。

例えば新人研修の事例を考えてみましょう。

状況:配属先の上司から「明日の会議用にこの資料を10部コピーしておいて」と依頼された。
結果:上司の期待に応えたいが、依頼の詳細が分からない。
行動:上司にどんな質問をすれば良いかを考える。

このケースでは、「期日はいつか」「カラーかモノクロか」「片面か両面か」「ホッチキス留めかクリップ留めか」などの質問が挙がるでしょう。こうした演習を通じて、新人は「言われたことだけをこなす」のではなく、「相手の期待を上回る対応を考える」という姿勢を体験的に学べます。

2. 「状況 → 結果 → 行動」の順に構成する

3. 自分事として考えられる質問を設定する

ケーススタディでは、受講者が 「自分だったらどうするか」 を考えられるような質問を投げかけることが重要です。単に「どんな課題がありますか?」と聞くだけでは、議論が他人事になり、表面的な意見しか出てきません。

例えば管理職研修で「部下との接し方」をテーマにしたケースでは、次のような設定が考えられます。

状況:部下の新人・佐藤さんがミスを繰り返し、顧客からクレームが入っている。入社当初は元気に挨拶をしていたが、3か月経った今は疲れた表情で元気がない。
結果:職場の雰囲気にも影響が出始めている。
質問例:「あなたが佐藤さんの立場だったら、上司にどんな言葉をかけてもらいたいですか?」

このように立場を入れ替えて考える質問は、相手の気持ちを想像するきっかけとなり、実際の現場でのコミュニケーション改善につながります。

私自身の経験でも、管理職が新人に「メモを取りなさい」と注意する場面は多く見ますが、自分が新人の頃を振り返ると、必ずしもメモを取っていたわけではありません。そうした体験を思い起こしながら、相手の立場で物事を考えることが、良い指導の第一歩です。

まとめ 〜効果的なケーススタディの条件〜

まとめ 〜効果的なケーススタディの条件〜
  • リアルな事例を使う:職場で実際に起きた、または起こり得る事例を選び、共感と参加意欲を引き出す。
  • 「状況 → 結果 → 行動」の順で構成する:問題の背景から解決策までの流れを整理しやすくする。
  • 自分事で考えられる質問を設定する:立場を入れ替えて考えさせ、深い気づきを促す。

また、ケーススタディの難易度は「少し考えれば答えが出せる程度」が最適です。簡単すぎても、難しすぎても受講者の意欲が下がってしまいます。作成後は研修担当者と事前に内容をすり合わせ、本番でスムーズに進行できるように準備しましょう。

ケーススタディは、現場のリアルな課題を題材にできるため、研修後すぐに実務で活用できる点が大きな魅力です。ぜひ研修プログラムに取り入れ、受講者の思考力と実践力を育む場として活用してみてください。