
~研修やプレゼンで実力を発揮するために~
人前で話す場面――プレゼンテーション、研修講師としての登壇、会議での発表など――は、多くの人にとって緊張を伴う瞬間です。手や足が震える、冷や汗が出る、頭の中が真っ白になる……そういった経験をお持ちの方も少なくないでしょう。「あれも話そう、これも伝えよう」と準備していた内容が一瞬で飛んでしまい、思うように話せなかったという苦い記憶がある方も多いはずです。
研修講師やスピーカーにとって、緊張は避けられないものです。しかし、過度の緊張は本来のパフォーマンスを引き出す妨げになります。そこで今回は、話すときの緊張を和らげ、自信を持って臨むための具体的な方法として「3S」をご紹介します。これは研修や講演を控えた方、あるいは日常的に人前で話す機会のある方にとって、心強い助けとなるはずです。
1つ目のS:深呼吸(Slow Breath)
最初の「S」は**深呼吸(Shinkokyū)**です。
多くの方が緊張時に深呼吸を試みた経験があると思いますが、効果をより高めるためには「吐く」ことに意識を向けるのがポイントです。
人は緊張すると交感神経が優位になり、心拍数が上がり、呼吸が浅く速くなります。この状態では、ますます緊張が高まりやすくなります。そこで、意識的に息を吐き切ることによって副交感神経が働き、心身がリラックスモードに切り替わります。
手順は次の通りです。
背筋を伸ばし、肩の力を抜く
ゆっくりと口から息を吐き出す(肺の中の空気を最後まで押し出すイメージ)
息を吐き切ったら、自然に空気が吸い込まれるのを感じる
このとき、意識は外ではなく自分の内面に向けます。「話を必ず成功させる」「自分の想いをしっかり伝える」という目的意識に集中することで、周囲の視線や評価に過剰にとらわれることなく、本来の力を発揮しやすくなります。
2つ目のS:ゆっくり話す(Slowly)
緊張すると、無意識のうちに早口になってしまう人が多くいます。早口は、聞き手に「落ち着きがない」「焦っている」という印象を与え、内容が伝わりにくくなる原因にもなります。
そこで意識したいのが「ゆっくり話す」こと。ポイントは口の開け方にあります。日本語には「あ・い・う・え・お」の5つの母音があり、それぞれの母音の形を意識して口をしっかり動かすと、自然と話すスピードが落ち、滑舌も向上します。
たとえば、「皆さん、こんにちは」と口をあまり動かさずに話すと、こもった声になり聞き取りにくくなります。しかし、口を大きく開き、母音を意識して「皆さん、こんにちは」と発音すると、発声が明瞭になり、聞き手に安心感を与えます。
これは単なる速度調整だけでなく、声の響きや説得力の向上にもつながるため、緊張時には特に効果的です。

3つ目のS:スライド(Slide)
最後の「S」は**スライド(Slide)**です。
人前で話す際の緊張要因のひとつは、「多くの人から直接見られている」という意識です。スライドを活用することで、聴衆の視線をスピーカーからスライドへ移し、心理的負担を軽減できます。
さらに、スライドにはもう一つの大きな利点があります。それは「話の道筋を見失わない」こと。発表内容をスライドに整理しておけば、万が一頭が真っ白になっても、画面を見て流れを思い出すことができます。
もちろん、スライドは話の補助ツールですので、常に頼るのではなく、受講者と目を合わせてコミュニケーションをとることも重要です。しかし「今日は内容が飛びそうだ」「少し不安がある」というときには、スライドを安全ネットとして活用するのも有効です。
緊張は悪者ではない
ここで覚えておきたいのは、緊張すること自体は悪いことではないという点です。
緊張は交感神経が働く自然な反応であり、適度な緊張は集中力や瞬発力を高めます。大切なのは、過度な緊張を抑え、自分の力を発揮できる状態に整えることです。
プラスα:準備の重要性
「3S」に加えて、もう一つ強調したいのが準備の大切さです。
ビジネスの世界には「準備八割」という言葉があります。発表や研修においても、事前準備が充実しているほど、本番での自信や安心感が高まり、緊張をコントロールしやすくなります。
準備とは、単に原稿を用意するだけではありません。
内容の流れを理解し、自分の言葉で説明できるようにする
話すスピードや間の取り方を練習する
想定質問への答えを準備する
こうした積み重ねが、自信という最大の緊張対策になります。

人前で話すときの緊張は、誰にでも起こる自然な反応です。しかし、「深呼吸(吐くことを意識)」「ゆっくり話す(母音を意識)」「スライドを活用する」という3Sを実践すれば、緊張を適度なレベルに保ち、本来の力を発揮しやすくなります。
さらに、入念な準備を重ねれば、安心感と自信が生まれ、緊張は味方となってくれるでしょう。ぜひ次の登壇や発表の際には、この3Sを試してみてください。きっと、聴衆の前で堂々と話す自分に出会えるはずです。