「先生病」に注意!|講師はお客様との関係性がガラリと変わる

「先生病」にご用心

信頼される講師であり続けるために

信頼される講師であり続けるために

はじめに

講師という職業は、多くの人から感謝され、尊敬される立場です。受講者から「教えていただき、ありがとうございます」と言われる機会も多く、人前で話すやりがいを日々実感できる魅力的な仕事でしょう。しかし、その立場の変化が思わぬ落とし穴を生むことがあります。それが「先生病」です。

先生病とは、講師や指導者が周囲から「先生」と呼ばれるうちに、自分を特別な存在だと錯覚し、態度や言動が傲慢になってしまう状態のことです。一度この状態に陥ると、本人は気づきにくく、気づいた時にはすでに受講者や研修担当者から敬遠され、二度と呼ばれない講師になってしまう危険性があります。

本記事では、この先生病とは何か、そして発症を防ぐための3つの秘訣について詳しくご紹介します。

先生病はなぜ起きるのか

先生病はなぜ起きるのか

営業職として働いていた頃、お客様に向かって「ありがとうございます」と頭を下げていた立場が、講師になると一変します。今度は受講者や担当者から「教えていただき、ありがとうございます」と感謝される立場になります。日常的に「先生、先生」と呼ばれ、周囲から敬意を払われる経験が積み重なると、「自分は特別な人間だ」という思い込みが知らず知らずのうちに強まっていきます。

もちろん、敬意を持たれること自体は悪いことではありません。しかし、これを当然のことと思い始めた瞬間から、危険信号が灯ります。控室や打ち合わせの場でスタッフに対する態度がぞんざいになる、受講者への関心が薄れるなど、小さな変化が積み重なり、やがて信頼を失ってしまいます。

先生病を防ぐ3つの秘訣

先生病を防ぐ3つの秘訣

1. 謙虚な態度を持ち続ける

講師として長く活躍している人ほど、腰が低く、挨拶や言葉遣いが丁寧です。「今日も皆さんから学ばせてもらいます」と開講時に口にする講師もいます。こうした姿勢は、受講者に安心感を与え、信頼関係を築く土台になります。

反対に、中途半端な講師は、受講者やお客様の前では礼儀正しく見えても、二人きりになると態度が急変することがあります。裏と表の差が激しい態度は、意外と早く相手に伝わります。講師業は“見られる職業”です。日々の細かな立ち居振る舞いが、信頼を左右します。

謙虚さとは、形式的な礼儀ではなく「自分はまだ学びの途上にある」という意識を持つことです。この意識がある限り、傲慢さは生まれません。

2. 意見や批判に耳を傾ける

人の意見を聞かなくなった時点で、先生病の初期症状が出ていると考えたほうがいいでしょう。自分の価値観ややり方を受講者に押し付けるだけでは、学びの場は一方通行になり、成長の機会を失ってしまいます。

講師になってからも、受講者や担当者の意見を受け止め、必要に応じて改善していく姿勢が大切です。もちろん、自分のポリシーや専門性を大切にすることは重要ですが、それが常に100%正しいとは限りません。「新しい視点を吸収する余地はある」という気持ちを忘れないことが、講師としての幅を広げます。

例えば、受講者アンケートで「説明が早くてついていけなかった」という声があったとします。そのとき、「集中して聞いていないのが悪い」と切り捨てるのではなく、「スライドの情報量を減らしてみよう」「具体例を増やしてみよう」と改善につなげれば、次回の研修は格段に良くなります。

3. 結果が出ない理由を受講者のせいにしない

研修の成果は、一度の参加で劇的に現れるものではありません。成長は、学び・実践・改善の積み重ねによって徐々に表れます。にもかかわらず、「この人たちはやる気がない」「一回で変わるわけがない」と受講者のせいにしてしまうと、自分の成長の機会を閉ざしてしまいます。

実際の研修現場には、高いモチベーションを持つ人もいれば、そうでない人もいます。講師の役割は、後者のやる気を引き出し、前向きな空気を作ることです。そのためには、導入部分でモチベーションを高めるワークを取り入れる、成功事例を共有するなど、工夫が求められます。

もし研修担当者から「変化が見られなかった」と言われたら、それを受講者批判ではなく、「自分の研修設計や進行方法に改善の余地はなかったか」と振り返る機会にしましょう。この姿勢が、次の仕事にもつながります。

まとめ

講師は、受講者から直接「ありがとう」と言ってもらえる、やりがいに満ちた仕事です。しかし、感謝や称賛の積み重ねは、知らず知らずのうちに慢心を育てます。その慢心こそが先生病の温床です。

先生病を防ぐためには、

  1. 謙虚な態度を持ち続ける
  2. 意見や批判に耳を傾ける
  3. 結果が出ない理由を受講者のせいにしない

この3つを心がけることが何より重要です。講師は「教える人」であると同時に、「学び続ける人」でもあります。謙虚さを忘れず、周囲の声を受け止め、責任を自分事としてとらえる姿勢こそが、信頼され続ける講師の条件です。