講師という仕事は、自分の経験や知識を「ノウハウ」に変え、それを受講者に伝えることで、人が成長したり変化したりするきっかけをつくる職業です。受講者が「勇気が出た」「成長したい」「行動してみたい」と感じられるよう支援することこそ、講師の大きな役割と言えるでしょう。
一口に「講師」といっても、その活動スタイルには大きく分けて 研修講師・セミナー講師・講演家 の3つがあります。しかし、この3つの違いを明確に理解していない方も少なくありません。
そこで本記事では、それぞれの特徴や求められるスキル、活動の始め方などを整理して解説します。これから講師を目指す方、すでに講師として活動している方の参考になれば幸いです。

研修講師は主に企業を顧客とし、社内研修や社員教育を担当します。人事担当者や経営者が窓口となることが多く、費用は企業が負担します。たとえば「コミュニケーション研修を9時から17時まで実施する」といった形で、企業が社員を集めて行います。
企業研修の参加者は、自ら希望して参加する場合もありますが、業務命令として参加するケースも多く、なかには後ろ向きな姿勢の方もいます。
「研修より仕事を優先したい」「正直あまり参加したくない」という人も珍しくありません。したがって、受講者のやる気を引き出す力が研修講師には不可欠です。
研修講師は、受講者個人の成長だけでなく、企業全体の業績向上を意識する必要があります。研修によって社内の人間関係が改善され、生産性が上がり、結果として売上や利益の向上につながることが理想です。企業にとっては投資である以上、「費用に見合う成果」が求められます。
研修講師として活動するには、企業への営業活動や人脈づくりが重要です。もともと企業とのつながりがある人は有利ですが、そうでない場合は信頼を得るための実績づくりが必要になります。

セミナー講師は、自ら集客し、参加者から直接受講料をいただく形が基本です。参加者は費用を自己負担しているため、非常に意欲が高い傾向があります。講師のファンや、その人の話を聞きたいという目的で集まる人が多く、会場の雰囲気は温かく、進行しやすいのが特徴です。
意欲的な受講者が多く、講師としてのやりがいを感じやすい環境です。初めて講師業に挑戦する人にとっても、やりやすいスタイルと言えます。
最大のハードルは集客です。初回は知人や友人が来てくれるかもしれませんが、2回目以降は参加者を集め続ける難しさに直面します。同じ内容を繰り返すだけでは新規参加者は増えにくく、テーマや告知方法に工夫が必要です。
自分で集客が難しい場合は、セミナー開催会社と契約し、そこが集めた参加者に対して講義を行う方法もあります。この場合、受講料の一部を主催会社に支払うため収入は減りますが、集客負担がないのは大きなメリットです。

「講演家」というと、有名人や著名なスポーツ選手を思い浮かべる人が多いでしょう。彼らは話術の巧みさ以上に、その経歴や実績そのものが人を惹きつけます。名前だけで会場が満席になることも珍しくありません。
しかし、必ずしも有名人でなければ講演家になれないわけではありません。たとえば、企業から「管理職向けコミュニケーション講演をお願いしたい」という依頼を受け、社内の集まりで講演するケースもあります。この場合、講師側が集客する必要はなく、依頼元が聴衆を用意します。
有名であっても、長く講演家として活動し続けるには、人を感動させる構成力や話術が不可欠です。1時間や2時間という限られた時間で、聴衆を飽きさせず、学びと感動を与える内容を作り上げる必要があります。
もし講演が退屈だったり印象に残らなかったりすると、次回の依頼はなくなってしまいます。テーマ選びや構成の工夫、プレゼンテーション力は講演家にとって生命線です。

研修講師・セミナー講師・講演家の3つは、どれか一つだけを選ばなければならないわけではありません。複数のスタイルを並行して行っている人もいれば、ひとつに特化して深めている人もいます。
初心者が始めやすいのは、意欲的な受講者が集まるセミナー講師です。ここで経験を積み、実績を作り、徐々に企業研修や講演へと活動を広げていくのが現実的なステップでしょう。
講師活動は、自分のスキルや人脈、目的に合わせてスタイルを選び、組み合わせることができます。
まずは小規模なセミナーから始め、経験と実績を積みながら活動の幅を広げていくことで、より多くの人に影響を与えられる講師へと成長していけるでしょう。