
〜拒絶している受講者の心を開くための3ステップ〜
研修やセミナーで講師をしていると、受講者の反応は千差万別です。熱心にメモを取りながらうなずく方もいれば、真剣に質問を投げかけてくる方もいます。しかし、なかには明らかにこちらに壁を作っているように見える方も存在します。その典型的な姿勢が「腕を組んで、のけぞって座っている」状態です。
特に中高年の男性受講者、いわゆる“おじ様”に多く見られるこの姿勢は、講師にとっては少しやっかいに思えるサインかもしれません。けれども、この態度の裏側には必ず理由があり、適切に対応すれば心を開いてくれる可能性は十分にあります。
本記事では、心理的背景と具体的な対応方法を3つのステップに分けて解説します。
まず、この姿勢が何を意味しているのかを理解することが大切です。腕を組むという行動は心理学的に「防御姿勢」や「拒絶姿勢」と呼ばれます。身体的に腕で自分の胸部を覆うことで、無意識に相手からの影響を遮断しようとするのです。さらに背もたれにのけぞる行為は、物理的にも心理的にも距離を取ろうとするサインと解釈できます。
こうした姿勢が出る理由はさまざまです。
重要なのは、この姿勢は必ずしも「あなた(講師)個人を嫌っている」わけではないという点です。多くの場合は状況や心理状態の反映であり、関わり方次第で変化します。
ステップ1:話しかけて名前を呼ぶ
最初の一歩は、講師側から心を開く姿勢を示すことです。心理学では「親近効果」と呼ばれる現象があります。これは、相手の名前を呼んだり、直接的なやりとりを重ねたりすることで、心理的な距離が縮まりやすくなるというものです。
例えば、休憩時間やワークの合間に軽く「〇〇さん、先ほどのワークはいかがでしたか?」と声をかけてみましょう。ポイントは、あくまで自然体で、質問も答えやすいものにすることです。無理に深い話を引き出す必要はありません。名前を呼びかけられるだけでも「自分はここに存在を認められている」と感じ、態度が柔らかくなることがあります。
腕を組んでのけぞっている姿勢は、ある意味「心の叫び」が身体に表れている状態です。何らかの不満や疑問、抵抗感があり、それが態度として出ているのです。これを無視すると、受講者はますます殻に閉じこもります。
そこで有効なのが、休憩中や雑談の場で「少し本音を話してもらう」ことです。たとえば「実はこのテーマ、前にも受けたことがあって…」や「現場だとこういうのは難しいんだよね」といった発言を引き出すのです。この段階では、相手の言葉を否定せず、「なるほど、そういうお考えなんですね」と受け止める姿勢が重要です。
本音を口に出すことで、相手は心理的に軽くなります。そして「この講師は話を聞いてくれる」と感じることで、徐々に拒絶感が薄れていきます。

心の扉が少し開き、本音を話してくれるようになったら、次は意見を求めます。いきなり全体の場で指名するのではなく、小さな質問から始めるのがポイントです。
たとえば、「〇〇さんの職場では、このケースはどうされていますか?」と具体的な場面を聞くと答えやすくなります。人は自分の経験や知識を話すとき、承認欲求が満たされます。これによって「自分もこの研修に貢献できている」という感覚が生まれ、態度や姿勢が自然と前向きになります。
3.講師側の心構え
この対応を成功させるには、講師自身の心構えも大切です。

腕を組んでのけぞっているおじ様受講者は、最初は壁を作っているように見えても、その背後には必ず理由があります。そして、その理由を探り、尊重しながら接すれば、心を開いてくれる可能性は高いのです。
この3ステップを踏むことで、拒絶の姿勢から協力的な姿勢へと変化が生まれます。研修やセミナーは、講師と受講者が共に作り上げる時間です。最初は距離を置いていた受講者が、最後には笑顔で感想を述べてくれる――そんな瞬間こそが、講師としての大きなやりがいではないでしょうか。