
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、接客の現場でもマスク着用が日常化しました。かつては「マスクをしてお客様と接するのは失礼」という考え方が一般的でしたが、今では感染予防の観点から、マスクの着用がむしろ安心感を与える場面も増えています。
とはいえ、マスク越しの接客には特有の課題があり、そのままでは表情や声が伝わりにくく、お客様との距離を感じさせてしまうこともあります。そこで今回は、マスク着用でも感じの良い接客を実現するための5つのポイントをご紹介します。
コロナ禍以前、特別な事情がない限り接客中のマスク着用は控えるべきとされてきました。お客様の顔をしっかりと見せ、表情を通じて信頼感を築くことが大切だと考えられていたためです。
しかし、感染症が拡大している今、マスクはお客様・従業員双方を守るための配慮として受け入れられています。マナーの本質は「相手への思いやりを形に表すこと」です。相手を不快にさせず、むしろ安心させるのであれば、それは立派なマナーと言えます。
現代の状況においては、マスク着用はマナー違反ではなく、むしろ推奨される行為だと考えるべきでしょう。
マスクには大きく2つの弊害があります。
表情が読み取りにくくなる
人は会話の際、目と口の動きから相手の感情を読み取ります。マスクで口元が隠れると、目だけで感情を判断する必要があり、どうしても印象が伝わりにくくなります。
声がこもって聞き取りにくくなる
マスクが声の通り道を遮るため、特に声が小さい人や滑舌がはっきりしない人の場合、さらに聞きづらくなります。
これらの弊害を放置すると、「感じが悪い」「冷たい」と誤解される可能性があります。次に、これらを解消する方法をご紹介します。

① 目で笑顔を届ける
口元が見えない分、目の表情で笑顔を表現することが重要です。
口角を上げると、目尻も自然と下がり、優しい印象になります。マスクを着けたまま鏡の前に立ち、目の周りの筋肉だけで笑顔を作る練習をしてみましょう。目だけでも「楽しそう」「安心感がある」と感じてもらえるようになると、お客様の受ける印象は大きく変わります。
② 声を2倍の大きさ・明瞭さで
普段から声が小さい人は特に注意が必要です。マスク越しでは、通常の2倍程度の声量を意識しましょう。
また、口の動きをはっきりとし、語尾までしっかり発音することで、聞き取りやすさが格段に向上します。職場の同僚や上司に「聞き取りやすいか」確認してもらうのも効果的です。
マスク着用が一般的になったとはいえ、ひとことの説明や配慮で印象は大きく変わります。
例えば、美容院で「感染予防のため、従業員はマスク着用を義務付けております。ご理解とご協力をお願いします」という案内文を見かけました。お客様の立場からすれば、当然のことと思っていても、その一言があるだけで「丁寧なお店だな」という印象が残ります。
また、あるお店では、お見送りの際にスタッフが2メートルほど離れた場所でマスクを外し、笑顔で「ありがとうございました」とお辞儀をしてくれました。感染対策とお客様への敬意を両立した素晴らしい例です。
風邪気味で研修に参加する際、「本日はマスクを着用したまま失礼いたします」と一言添えた受講者の方がいました。その一言で、周囲への配慮が伝わり、好印象を持たれたのです。
「当たり前だから言わなくてもいい」と思わず、必ず気遣いの一言を添えることが、感じの良い接客の大切な要素です。
マナーとは形だけのルールではなく、「相手への思いやり」を具体的な行動として示すものです。
平時であればマスクは控える方が好ましい場合もありますが、感染症流行時には着用が望ましい場合もあります。重要なのは、時代や状況に応じて柔軟に対応することです。
コロナ禍を経て、お客様のマスクに対する意識は確実に変化しています。今後も、季節性の風邪やインフルエンザの流行期など、マスク着用が必要になる場面はあるでしょう。そのたびに、感じの良い接客をどう実現するかを考え続けることが大切です。

マスク着用の接客は、一見すると不便で制限が多いように感じられますが、工夫次第でむしろ好印象を与えることができます。
マスクは状況に応じて柔軟に捉える
目で笑顔を伝える
声量と明瞭さを意識する
気遣いの一言を忘れない
相手を不快にさせないことを最優先にする
これらを実践すれば、「マスクをしていても感じが良い」とお客様に思っていただける接客が可能です。
マスク越しの接客を単なる制約ではなく、スキルアップの機会と捉え、より豊かなコミュニケーションを築いていきましょう。