
企業研修や社内研修で、参加者同士が机を囲んで話し合う「グループワーク」は欠かせない手法のひとつです。特に机を向かい合わせにした「島型」配置では、受講者同士が顔を見ながら意見を交換でき、学びが深まりやすくなります。しかし、ここで軽視されがちな重要ポイントがあります。それが グループ分け です。
講師の立場から見ると、このグループ分けは研修の成否を左右すると言っても過言ではありません。にもかかわらず、研修の現場では「適当に分けてください」と担当者に丸投げされるケースが少なくありません。実は私自身、研修講師を始めた当初、この工程を軽く考えていました。「人数さえ合っていればいいだろう」と思い、細かい指示もせず、担当者に任せきりにしていたのです。
ところが、実際にやってみると、グループ分けの工夫ひとつで研修の雰囲気や議論の活発さが大きく変わることを痛感しました。バランスの悪い編成では、意見交換が停滞し、講師側も盛り上げに苦労します。逆に、適切な条件で編成されたグループは、自然と会話が弾み、学び合いが促進されます。
そこで今回は、「なめたらあかん!グループ分け」というテーマで、研修担当者に依頼する際の具体的なポイントや注意点を整理してお伝えします。
研修の机配置には、講師の方向を向く「スクール形式」や、ディスカッション向けの「島型形式」などがあります。私はほとんどの研修で島型を採用しています。その理由は次のとおりです。
しかし、このメリットは グループ編成が適切である ことが前提です。もし偏りや相性の悪さがあると、せっかくの島型でも研修効果は半減します。そこで重要になるのが、これから紹介するグループ分け3つのカギです。
人数が多すぎるグループでは、発言しなくても進行してしまうため、参加意欲が薄れる人が出やすくなります。特に7名以上になると、「自分が話さなくてもいいや」という空気が生まれがちです。反対に、人数が少なすぎると意見の幅が狭くなります。
そのため、理想は4〜6名。ペアワークが多い場合は偶数人数(4名または6名)がおすすめです。向かい合った2人同士で作業できるため効率的です。また、時間が限られている場合も4名編成だと議論が早くまとまり、全体の進行がスムーズになります。
担当者への依頼例としては、
「30名参加の場合は5名×6グループ、もしくは6名×5グループでお願いします」
といった具体的な指示をすると良いでしょう。

研修担当者から「職種や部署ごとに同じグループにした方がいいですか?」と聞かれることがありますが、答えは NO です。むしろ、職種や所属、年齢、役職、性別などはできる限り混ぜる方が効果的です。
なぜなら、異なる背景を持つ人同士の方が視点が多角化し、議論が深まるからです。
例えば、男性だけ、女性だけのグループでは意見の傾向が似通いがちですが、混合にすると「そんな視点があるのか」と新たな気づきが生まれます。役職や部署も同様で、管理職と一般社員が同じ場で話すことで、お互いの立場を理解しやすくなります。
多様性のある編成は、受講者全員にとっての学びを広げる鍵なのです。
どれだけ工夫しても、事前の編成では全員の性格や人間関係まで把握できません。そのため、以下のような偏りが生じることがあります。
このような場合、午後からの席替えが有効です。午前中の様子を観察し、「議論が停滞している」「雰囲気が悪い」と感じたら、思い切って編成を変えましょう。
ただし、グループを組んでくれた担当者への配慮は忘れず、
「午後からは多様な意見を聞くために席替えをしたいのですが、よろしいでしょうか?」
と了承を得てから変更します。そのうえで、受講者にはポジティブな理由を伝え、「午後からは新しいメンバーで意見交換しましょう」と案内するとスムーズです。
グループ分けが決まったら、席次表を作ってもらうと講師にとって非常に便利です。
席次表があると、以下のメリットがあります。
たとえば報告書で
「〇〇さんが活発に質問をしてくださいました。積極性があり良かったと思います」
と書けば、担当者や会社側も研修の効果を実感しやすくなります。

グループ分けは単なる事前準備ではなく、研修のスタート地点です。ここでの配慮不足は、1日全体の効果を損なうこともあります。だからこそ、担当者には以下の3点を明確に依頼しましょう。
そして、席次表の用意も忘れずにお願いすること。
研修はグループ編成の瞬間から始まっています。バランスの良いグループを作ることで、受講者同士が刺激を与え合い、講師もより充実した時間を提供できるのです。
まさに「なめたらあかん!」。グループ分けは研修の影の主役です。
事前準備から工夫を凝らし、受講者全員が学びを持ち帰れる研修を実現しましょう。