
現代のビジネスシーンにおいて、クレーム対応は避けて通れない重要な業務のひとつです。特に電話や対面で直接顧客と向き合う場面では、相手が強い怒りを抱いていることも少なくありません。そのような状況で、どのように対応するかによって企業の信頼は大きく左右されます。今回は、実際の現場経験を踏まえながら「怒っているクレーマーに対応するための4つのポイント」について詳しく解説いたします。
まず大前提として理解しておくべきなのは、相手の怒りに釣られてはいけないという点です。相手が強い口調で責めてきた際、つい感情的に反応してしまったり、言い返したりしたくなることがあります。しかしそれは、火に油を注ぐようなものです。心理学では「同調効果」あるいは「ミラー効果」と呼ばれる現象があり、相手の態度や感情に無意識に影響されやすいとされています。
例えば、仲の良い友人と話していて相手が腕を組めば、自分もつい腕を組んでしまう。相手が笑顔で話しかければ、こちらも笑顔になってしまう。これが「同調効果」です。普段の人間関係においてはプラスに働きますが、クレーム対応の場面では逆に作用することがあります。相手が怒っているときにこちらまで早口になったり、強い口調で返してしまえば、相手の怒りはさらにエスカレートしてしまうのです。
したがって、怒りに飲み込まれず冷静に対応することが、第一歩となります。
それでは、実際に相手の怒りを落ち着かせるための具体的な4つのポイントを解説していきましょう。
① 相手の言い分をまず聞く
怒っている人は、「自分が不当な扱いを受けた」「迷惑を被った」という気持ちを強く抱いています。その感情を受け止めてもらえない限り、怒りは収まりません。したがって、最初にやるべきことは 相手の話を遮らずに聞くこと です。
相手に思いを吐き出させ、「自分の気持ちを理解してもらえた」と感じてもらうことが、鎮静化の第一歩となります。
② 怒っているポイントに限定して謝罪する

クレーム対応で誤解されやすいのは、「全てに対して謝ってはいけない」という点です。顧客の主張が事実と異なる場合や、企業側に責任がないケースも多々あります。そうした場合でも、無条件に謝罪してしまうと責任の所在が曖昧になり、後の対応に支障をきたすことがあります。
大切なのは 相手が怒っている「事実」に限定して謝罪すること です。例えば「届いた商品が動かなかった」という点に相手が怒っているならば、そのことについて「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と謝罪します。それ以外の要素に関しては、冷静に事実確認を進める姿勢を保ちましょう。
③ ゆっくり話す
怒っている相手は早口でまくしたてる傾向にあります。こちらも釣られて早口になってしまうと、興奮状態の相手には言葉が届きにくくなります。ここで有効なのが 「同調効果の逆作用」 です。
あえてこちらがゆっくりとした口調で話すことで、相手のペースが徐々に落ち着いていくのです。冷静さを保ちながら、一語一語丁寧に伝えることが相手の心を鎮める効果につながります。
④ 気持ちに共感する
怒っている人の根底には「自分の気持ちを分かってほしい」という強い欲求があります。そのため、相手の気持ちに共感を示すことは極めて重要です。
例えば、相手が悲しげな声を出しているなら、こちらも同じように声のトーンを落として「ご心配のほど、お察しします」と伝える。声だけのやりとりである電話でも、このように共感を「音」で表現することで、相手は「理解してもらえた」と感じやすくなります。
実際に私が損害保険会社で対応していた際には、「私も〇〇様の立場だったら同じように感じたと思います。お話を伺いながら胸が締め付けられるような気持ちです」と伝えたこともありました。こうした一言が相手の心を和らげ、対話がスムーズになるのです。

怒っているクレーマーへの対応は、心理的にも大きな負担となります。しかし、冷静に次の4つのステップを実践することで、状況を好転させることが可能です。
クレーム対応は一見ネガティブな業務に思えますが、誠実に取り組むことで顧客から信頼を得る大きなチャンスにもなります。怒りをぶつけてきた相手が、最後には「ありがとう」と言ってくださる瞬間こそ、この仕事のやりがいと言えるのではないでしょうか。