
2024年11月に施行される「フリーランス新法」(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)。通称「フリーランス保護法」とも呼ばれるこの新しい法律は、フリーランスという働き方が急速に広がる中で生まれたものです。背景を理解するためには、日本社会の労働環境の変化や企業の事情、そして国の狙いを見ていく必要があります。
まず押さえておきたいのは、フリーランス人口の増加です。
クラウドソーシング大手ランサーズの調査によれば、2021年時点で日本の労働人口約7,000万人のうち、1,500万人がフリーランスとして働いているとされています。これは働く人の4〜5人に1人という割合で、決して少なくありません。
さらに注目すべきは、そのうち約40%(およそ600万人)が「専属外注」と呼ばれるタイプです。これは、取引先が1社に限定され、実態としては社員に近い働き方をしている人々です。経済規模にするとフリーランス全体で24兆円と推計され、日本経済における存在感は年々増しています。
ここまで急速にフリーランスが広がった背景にはいくつかの要因があります。
この「企業の事情」が、のちに大きな社会問題を引き起こすことになります。

問題となっているのが「偽装フリーランス」と呼ばれる人たちです。
ある設備会社で長年社員として働いていた人が、突然「来月からフリーランス契約に切り替える」と告げられたとします。契約書上は「業務委託」ですが、仕事内容は以前と変わらず、出勤時間や現場の指示も会社が行う。報酬額もほとんど同じ。
違うのは、社会保険料がすべて自己負担になり、有給休暇や労働時間の規制もなくなる点です。つまり実態は社員と変わらないのに、法的には「フリーランス扱い」になってしまうのです。
この場合、以下のような不利益が生じます。
企業からすれば「安価で融通が利く労働力」ですが、当人にとっては大きな負担です。
偽装フリーランス問題に対処する一手として導入されたのがインボイス制度(2023年10月開始)です。
例えば、企業が外注費を払った場合、その金額は「仕入税額控除」の対象になります。つまり消費税を安くできる仕組みです。
しかし、外注先がインボイス登録していなければ控除が使えないため、企業はフリーランスに「インボイス登録してほしい」と要請するようになりました。
これにより、今まで消費税を払う必要がなかった小規模フリーランスも課税事業者となり、国は税収を確保できるようになったのです。

こうした流れの「第2弾」として制定されたのが、フリーランス新法です。
主な内容は以下の通りです。
自己責任から社会的保護へ
これまでフリーランスは「自己責任」で働く立場とされてきました。
しかし、実態としては社員と変わらない働き方をしながら法的な保護を受けられない「偽装フリーランス」が増え、社会問題化。加えてフリーランスが経済の中で大きな役割を担う存在になってきたことから、国が保護と規制に動いたのがフリーランス新法です。
この法律によって、フリーランスはより安全に働ける環境が整う一方、企業側には契約・支払い・ハラスメント対応といった新たな義務が課されることになります。