
会社の信頼は、製品やサービスの品質だけでなく、日々の小さなやり取りの積み重ねによって築かれていきます。特に電話対応は、顧客や取引先との直接的な接点であり、担当者一人の対応がそのまま「会社の印象」として相手に伝わってしまいます。
どれほど良い商品を扱っていても、電話での言葉遣いが雑であったり、不正確な表現をしてしまうと、「この会社は大丈夫だろうか」という不安を与えかねません。逆に、丁寧で誠実な対応ができれば、「安心して任せられる会社だ」と信頼を得ることができます。
本記事では、よくある電話対応の「悪い例」と「良い例」を比較しながら、なぜその表現が評価を下げてしまうのかを解説していきます。ビジネスマナーの本質は、相手に敬意を払い、誤解なく意図を伝えることにあります。少しの言い回しの違いが大きな差を生むことを確認していきましょう。

×「先日、送付させて頂いた年末調整の資料についてなんですが」
〇「先日、お送りした年末調整の資料についてですが」
悪い例では、「送付させて頂いた」と文法的に誤った表現が使われています。「さて頂いた」という言葉は正しい敬語ではなく、相手にとっては違和感を覚える原因となります。ビジネスの場面で日本語の誤用があると、「基本的な教育がなされていないのではないか」という疑念を持たれ、会社全体の評価を下げてしまうのです。
良い例では「お送りした」というシンプルで正確な表現が使われています。電話対応では、飾り立てた敬語よりも、正しく簡潔に伝えることが重要です。正確な日本語は、それだけで信頼感を与えます。
×「○○さんの給与の計算が、すみません数字がちょっと間違っておりまして」
〇「申し訳ございません、多田様の給与の計算が一部誤っておりまして」
悪い例では、「○○さん」と呼びかけており、ビジネスの場面では不適切です。取引先や顧客に対しては「様」を付けるのが基本であり、「さん付け」は社内的な呼び方にすぎません。また、「すみません数字がちょっと間違っておりまして」といった表現は軽く聞こえ、相手にとっては誠意を欠いた印象を与えます。
良い例では、「申し訳ございません」と正式なお詫びの言葉を使い、さらに相手のフルネームに「様」を付けて呼んでいます。「一部誤っておりまして」という言い方も、冷静かつ丁寧で誤解を与えません。名前を正しく呼ぶことと、誠意を持って謝罪することは、信頼関係を築く上で欠かせない要素です。

×「再度計算し直したものを送らせていただきたいんですけど」
〇「計算し直したものをお送りしたのですが」
悪い例では「送らせていただきたいんですけど」と、あくまで自分の希望を中心に置いた表現になっています。取引先にとって大切なのは、「すでにどう対応したか」「いつ届くか」といった事実です。担当者の「送りたい」という意向は不要であり、むしろ曖昧な印象を与えてしまいます。
良い例では「お送りしたのですが」と、すでに対応済みであることを明確に伝えています。事実を端的に伝えることは、相手に安心感を与え、無駄な不安や疑念を取り除きます。
×「年末調整の資料で源泉出させていただいたんですけどもの」
〇「年末調整の資料で源泉徴収票をお出ししたのですが」
悪い例では「源泉出させていただいた」と表現されていますが、「源泉」という言葉は不正確で、正式には「源泉徴収票」と言う必要があります。専門的な書類名を誤ると、「この人は知識が不足しているのでは」と不安を与え、会社の信頼性に直結してしまいます。
良い例では「源泉徴収票」と正しい名称を用いており、さらに「お出しした」と丁寧に伝えています。専門用語を正しく使うことは、ビジネスパーソンとしての基礎的な信頼を築く上で不可欠です。
×「従業員様に一度お会いさせていただく、もしくはお伝えしていただくことって可能でしょうか?」
〇「従業員様に一度会わせていただくか、小林様から伝えていただくことは可能でしょうか?」
悪い例では、「お会いさせていただく」「お伝えしていただくことって可能でしょうか」と、回りくどく曖昧な表現になっています。特に「〜ことって可能でしょうか?」は砕けすぎており、相手に不快感を与えることがあります。
良い例では「会わせていただくか」「伝えていただくことは可能でしょうか」と具体的で整理された言い方になっています。依頼はできる限り明確に伝えることで、相手の負担を減らし、信頼を高めます。
×「今日に送りますので明後日には届くかなと」
〇「本日発送いたしますので明後日までには御社に届きます」
悪い例では「届くかなと」と語尾を濁しています。このような曖昧な表現は、ビジネスでは信頼を損ねる大きな要因です。相手は「本当に届くのだろうか?」と不安になります。
良い例では「明後日までには御社に届きます」と断定的に伝えており、相手に安心感を与えます。発送や納期に関するやり取りでは、必ず「いつ」「どこに」届くのかを明確に伝えることが大切です。
×「すいません、よろしくお願いいたします。」
〇「ご迷惑をおかけして申し訳ございません、よろしくお願いいたします。」
悪い例では「すいません」という砕けた謝罪で終わっています。口頭での「すいません」は日常会話ではよく使われますが、ビジネスの場では軽く聞こえてしまい、誠意が十分に伝わりません。
良い例では「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と正式なお詫びの言葉を入れています。そのうえで「よろしくお願いいたします」と締めることで、誠実さと丁寧さが伝わり、相手に好印象を残せます。電話対応の最後の一言は、そのまま会社の印象を決定づける大切な要素です。

電話対応において重要なのは、「正確さ」「誠実さ」「相手目線」です。ほんの少しの言い回しの違いが、会社全体の評価を大きく左右します。
これらを意識することで、電話対応の質は大きく向上します。電話越しのやり取りは目に見えない分、言葉一つひとつが相手の印象を決める要素となります。小さな違いを大切にし、相手に「安心して任せられる」と感じてもらえる対応を心がけましょう。それが、会社全体の信頼と評価を高める第一歩となります。