
~謝罪場面で信頼を失わないために~
ビジネスの現場において、電話応対は日常的に行われる重要なコミュニケーション手段の一つです。特にお客様への謝罪やミスの報告を行う際には、言葉の選び方や声の調子一つで相手の受け取り方が大きく変わります。本稿では、過去の実例をもとに、電話応対で陥りやすい誤りと改善すべきマナーについて解説していきます。
電話応対で最初に耳に入るのは、名乗りと挨拶です。たとえば「お世話になります。○○会計事務所の△△です」と口にする際、語尾を伸ばしてぼそぼそと話すと、相手には覇気のない印象を与えてしまいます。謝罪や報告といった気が重い内容を伝える前であっても、第一声は明るくはっきりと発声することが欠かせません。
電話は対面と違い、表情や身振りが見えません。そのため声の明瞭さが唯一の印象材料となります。落ち着いたトーンでありながらも、元気さを意識して名乗ることで、誠実な姿勢を感じ取ってもらえるのです。
謝罪の際に「すみません」と軽く伝えて済ませてしまうのは適切ではありません。日常会話であれば許されるかもしれませんが、ビジネスの場では責任の所在を曖昧にし、誠意が伝わらない恐れがあります。
謝罪の基本は 「申し訳ございません」「失礼いたしました」 です。特に相手に迷惑をかけた場合には「申し訳ございません」が最も適切な表現となります。形式的に繰り返すのではなく、声の調子や間の取り方で誠意を込めることが大切です。
人間である以上、誰しもミスをすることはあります。しかし、重要なのはその後の対応です。誤りが発覚した時点で、誠実かつ迅速に行動するかどうかが、お客様からの信頼を回復できるか、それとも失うかを分ける分岐点となります。
「迷惑をかけた時こそ、誠実な対応が求められる」という意識を常に持つことが、長期的な信頼関係を築く上で欠かせません。

(1)「ちょっと」の乱用
「ちょっと間違いがありまして」といった表現は砕けた印象を与えます。ビジネスの場では「少々誤りがありまして」や「一部誤りがございました」のように、落ち着いた言葉に置き換えるのが望ましいでしょう。
(2)「させていただく」の多用
「させていただく」は、相手の許可を得て自分が恩恵を受ける行為に使う敬語です。しかし、「資料を送らせていただきます」のように乱用すると、文章がもたつき、伝わりにくくなります。適切に言い換えるなら「修正した資料を送ります」で十分です。敬語は使えば使うほど良いのではなく、正しく簡潔に使うことが信頼につながります。
(3)略語や専門用語の使用
「源泉を出させていただいた」といった言い回しも注意が必要です。業界人には通じても、一般のお客様には「源泉徴収票」と補足しなければ伝わりません。専門用語や略語を無意識に使うと、相手に「理解できない言葉で説明された」と不快感を与える可能性があります。常に相手の立場を意識し、分かりやすい言葉で伝えることが基本です。
会話中に「はい、はい、はい」と連呼するのも避けるべきです。何度も繰り返されると、相手は「馬鹿にされているのでは」と感じかねません。相づちは一度で十分です。「承知いたしました」「かしこまりました」といった表現に置き換えることで、信頼感を損なわずに会話を進められます。
謝罪を伴う場面では、相手に協力をお願いしなければならないこともあります。その際は一方的に依頼するのではなく、**「大変恐縮ですが」「恐れ入りますが」**といったクッション言葉を添えることが有効です。
たとえば「従業員の方に直接お詫びをしたいのですが、御社に伺ってもよろしいでしょうか」と尋ねると、誠実さと謙虚さが伝わります。もし断られた場合には「それでは恐れ入りますが、○○様からお伝えいただけますでしょうか」と代替案を提示すれば、柔軟かつ丁寧な印象を残すことができます。
相手から納期を尋ねられた際に「明後日には届くかなと」といった曖昧な言葉は不安を与えます。「本日発送いたしますので、明後日までにはお手元に届きます」と、言い切る形で明確に伝えることが信頼につながります。

ビジネスマナーを意識しすぎて言葉が硬くなりすぎても、逆に馴れ馴れしすぎても、相手にとって心地よいコミュニケーションにはなりません。大切なのは、相手に合わせて柔軟に言葉を選び、誠意を持って伝えることです。
普段から正しい表現を練習し、自然に口から出せるようにしておくことが必要です。いざというときに慌てず、相手の信頼を失わずに済むためには、日頃の準備が欠かせません。
電話応対におけるビジネスマナーは、単に形式的なルールを守ることではなく、相手に誠実さと安心感を与えるためのものです。
名乗りは明るくはっきりと
謝罪は「申し訳ございません」「失礼いたしました」が基本
ミス後の対応で信頼回復が左右される
「ちょっと」「させていただく」などの乱用を避ける
専門用語や略語は補足を添える
相づちは一度で十分、明確な言葉で伝える
クッション言葉で依頼を柔らかくする
曖昧表現を避け、明確に言い切る
これらを意識することで、謝罪の場面であってもお客様に誠意が伝わり、信頼を維持・回復することができます。ビジネスの成功は小さなマナーの積み重ねにあります。悪い実例に出会ったときこそ、自分自身の言葉遣いを振り返る良い機会と捉え、日々改善を重ねていきたいものです。