― 新入社員とベテラン社員の比較から学ぶ ―
はじめに
ビジネスシーンにおいて電話対応は、企業の第一印象を左右する重要なコミュニケーション手段です。特に、相手から「すぐに対応してほしい」という要望があった場合には、担当者が不在であったり、即座に解決できない状況であったりと、現場ならではの難しさが生じます。ここでの応対次第で、相手の信頼を得ることも失うこともあるため、適切な言葉遣いや状況説明が求められます。
本記事では、同じ「すぐに対応できない」場面に直面したときに、新入社員とベテラン社員がどのように対応するかを比較し、その違いから学べるポイントを解説していきます。
新入社員の対応例
ある新入社員が電話を受けたケースを見てみましょう。
- 電話の受け答え
「お電話ありがとうございます。株式会社○○の○○でございます。」
ここまでは教科書通りの丁寧な挨拶ができています。
- 相手からの要望
取引先の加藤様から「送られてきた見積書の字が薄く、内容が確認できないので、今すぐ濃いものを送ってほしい」と依頼がありました。
- 対応のつまずき
- 「メールというのは……」と、相手が言っていない「メール」の話を持ち出し、要望とズレた返答をしてしまいました。
- 相手が「担当者に代わってほしい」と求めても、「担当者は不在」と繰り返すのみで、代替案を提示できませんでした。
- 最終的に「話の分かる人はいない」と答えてしまい、相手は強い不満を残したまま電話を切る結果となりました。
課題点
- 要望の正確な把握ができていない
- 代替案やフォロー策が提示できていない
- 相手の焦りや立場への共感が不足している
新入社員にありがちな失敗ですが、これは経験不足だけが原因ではなく、「相手の言葉を正確に聞き取り、整理し、適切に応える」スキルがまだ十分に身についていないことに起因します。
ベテラン社員の対応例
次に、同じ場面に遭遇したベテラン社員の対応を見てみましょう。
- 電話の受け答え
「株式会社○○の○○でございます。」「加藤様ですね、いつもお世話になっております。」
名前を復唱し、相手に安心感を与える一言を添えることで、信頼感を築いています。
- 要望への受け止め方
「字が薄い見積書でご不便をおかけし、大変申し訳ございません。」と、まずは謝罪をしっかり述べています。その上で、
「当社からはメールでお送りしましたか?それともFAXでしょうか?」と確認し、状況を正確に把握しようとしています。
- 社内確認と説明
- 保留にし、上司や担当者に状況を確認。
- 「半日ほどかかる」と伝えつつも、「お急ぎであることは理解している」と共感を示し、誠意を持って説明。
- 相手の苛立ちへの対応
「補助金申請に必要だから今すぐ欲しい」と強い要望があっても、感情的にならず冷静に対応。
「お気持ちお察しいたします」と共感を示し、「担当の山田からすぐ折り返しご連絡させていただきます」と具体的な対応策を提案しました。
良い点
- 相手の要望を正確に把握する力
- 共感と謝罪をバランスよく伝える姿勢
- 代替案を提示し、次の行動を明確にする対応力
- 冷静さを失わない安定感
結果として、相手の不満は残るものの「誠意ある対応をしてくれた」という印象を与えることができました。
新入社員とベテラン社員の違い
同じ状況に直面しても、両者の対応には明確な違いが見られます。
- ヒアリング力
- 新入社員:相手の要望を正確に理解できず、不要な話題(メール)を持ち出してしまった。
- ベテラン社員:FAXかメールかを確認し、情報を整理した上で対応した。
- 状況説明と代替案
- 新入社員:担当者不在を繰り返すのみで、代替案が出せなかった。
- ベテラン社員:半日かかると事実を伝えつつ、折り返しの約束をするなど解決策を提示した。
- 感情面への配慮
- 新入社員:相手の焦りや苛立ちに共感する言葉がなく、感情的な溝が広がった。
- ベテラン社員:「お気持ちお察しいたします」と共感を表現し、相手の立場を理解していることを示した。
- 全体の印象
- 新入社員:不慣れさから「頼りない印象」を与えてしまった。
- ベテラン社員:冷静で誠実な態度により「信頼感」を与えることができた。
学べるポイント
今回の比較から、新入社員が意識すべきポイントを整理すると以下の通りです。
- 相手の要望を正確に聞き取る
途中で自分の解釈を挟まず、相手の言葉をそのまま受け止める姿勢が大切です。
- 謝罪と共感を忘れない
相手が困っているときは、まず「ご不便をおかけして申し訳ございません」と一言伝えるだけで印象が変わります。
- 代替案を提示する
「担当者が不在です」で終わるのではなく、「戻り次第すぐにご連絡させます」「折り返しこちらからお電話いたします」と、次の行動を提示することで安心感を与えられます。
- 冷静さを保つ
相手が感情的になっても、こちらは冷静に対応することで、会話のコントロールがしやすくなります。
まとめ
電話対応は、相手の要望にすぐ応えられるときよりも、「すぐに対応できないとき」にこそ力量が問われます。
新入社員は経験不足からつまずくこともありますが、ベテラン社員の対応例に学ぶことで、少しずつ改善していくことが可能です。
- 正確なヒアリング
- 謝罪と共感
- 代替案の提示
- 冷静な対応
これらを意識するだけでも、相手に与える印象は大きく変わります。
「できないことをできるとは言わない」「できないときは、どう解決に導くかを示す」――この姿勢こそが、信頼される電話対応の本質です。