
企業活動において避けられないのが「クレーム対応」です。商品やサービスに不満を持つ顧客からの連絡は、時に理不尽に感じられることもありますが、企業の信頼を守り、顧客満足度を高めるためには避けて通れない業務です。とりわけ、入社したばかりの新入社員にとっては大きな試練となり、ベテラン社員との対応力の差が顕著に現れる場面でもあります。
ここでは「新入社員」と「ベテラン社員」のそれぞれの電話対応のケースを見比べ、その違いから学べるポイントを整理していきましょう。

ある日、顧客から1本のクレーム電話が入りました。
「一か月ぐらい前に買った服を明日着る予定だったが、洗濯したら縮んでしまって着られなくなった。すぐに新しい商品に取り替えてほしい。」
対応したのは入社したばかりの太田さん。状況を聞いた太田さんは、とにかく「謝罪」を繰り返すことに終始してしまいます。
誠意を伝えようと必死に謝る太田さんですが、顧客の感情は収まらず、「誠意を見せろ」「上司を出せ」という要求へとエスカレートしていきます。さらに、顧客から「交通費や新幹線代も出せるのか」といった無理難題が突きつけられた際、太田さんは適切な言葉を見つけられず、言葉を濁してしまいました。
新入社員の対応の特徴
太田さんの対応は、誠実さは感じられるものの「具体性に欠ける謝罪の連続」となり、結果的に顧客の不満を増幅させる形となってしまいました。

次に同じ内容のクレームにベテラン社員の丸山さんが対応したケースです。
顧客が「セーターが縮んでしまった」と訴えると、丸山さんはまず丁寧に話を受け止めます。
単に謝るだけでなく、「顧客の気持ちを理解する姿勢」を言葉でしっかり表現しているのが印象的です。
さらに、丸山さんは落ち着いて状況を整理し、必要な情報を丁寧にヒアリングしていきます。
顧客から「余計なお世話だ」「不良品じゃないのか」と反発されても、感情的にならず冷静に説明を続けます。相手の主張を一旦受け止めながら、「弊社の検査体制」や「洗濯表示タグの存在」を案内し、自然に自社の立場も伝えています。
さらに顧客が「誠意を見せろ」と要求してきた場面でも、丸山さんは安易に約束せず、次のように確認を取ります。
顧客の抽象的な要求をそのまま受け止めるのではなく、「具体化」して把握しようと努めています。結果的に顧客は「新しいセーターと、何か気持ちを表すもの」と回答し、要求が整理されました。
ベテラン社員の対応の特徴
丸山さんは会話の流れを主導し、顧客の感情を受け止めながらも冷静に「対応の枠組み」を築いていました。

新入社員の太田さんと、ベテラン社員の丸山さん。両者の対応を比べると、次のような違いが浮き彫りになります。
1. 「謝罪」か「共感」か
太田さんは謝罪に終始しましたが、丸山さんは「お客様の気持ちを理解する」という共感の言葉を加えました。謝罪だけでは相手の不満は収まりませんが、「理解してくれた」という実感は顧客の気持ちを和らげる効果があります。
2. 情報収集の姿勢
新入社員は「要求に振り回される」傾向がありますが、ベテランは「必要な情報を聞き出す」ことを忘れません。情報が揃って初めて、社内で適切な判断や対応策を検討できます。
3. 要求の具体化
「誠意を見せろ」という曖昧な要求をそのまま受けると、後で大きなトラブルに発展しかねません。ベテランは相手に具体的に言葉にさせ、要求を可視化することで対応可能な範囲を見極めます。
4. 最後の「安心感」
顧客が「上司を出せ」と要求するのは「この人では解決できない」と感じた時です。丸山さんは上司不在を伝えつつも「折り返し必ず連絡する」と約束することで、顧客に安心感を与えました。
クレーム対応は「謝罪の言葉をどれだけ繰り返すか」ではなく、「いかに顧客の気持ちを理解し、整理して、具体的な解決に導くか」が重要です。
これらはすぐにでも実践できる対応スキルです。新入社員はつい謝罪に頼りがちですが、経験を積むことで「顧客と対話し、解決の道を一緒に探す」姿勢を身につけられるでしょう。
クレーム対応は一見マイナスに思われがちですが、実は企業にとって「顧客との信頼関係を深めるチャンス」です。今回の事例を通じて、新人からベテランへと成長していくためのヒントを学び、自分自身の対応力向上に役立てていただければと思います。