ASD(自閉症スペクトラム)の特性と症状を改善させる方法とは

ASD(自閉症スペクトラム)のある人々は、興味や関心が限定され、特定の行動を繰り返すこだわり行為、対人関係が苦手という特性から、社会生活や仕事で困難を抱えることが多いです。
現在、ASD自体の治療法は存在しませんが、その特性から生じる困りごとを軽減するための対処法があります。

今回は、ASDの原因と特性からくる困りごと、具体的な対処法、そして私生活や仕事における悩みを改善するための方法について詳しく説明します。

ASD(自閉症スペクトラム)

ASD(自閉症スペクトラム)

ASDの基本的な特性

・対人関係と社会性の特性
・コミュニケーションの特性
・想像力の特性(興味や関心が限定される/特定の行動を繰り返す)

ASDは発達障害の一つで、主な特性として「人関係と社会性の特性」「コミュニケーションの特性」「想像力の特性」の3つが挙げられます。

ASD Autism Spectrum Disorder (自閉症スペクトラム症)
└広汎性発達障害
 └自閉症障害(自閉症)
 └アスペルガー障害(アスペルガー症候群)

自閉症やアスペルガー症候群なども含む、広汎性発達障害と呼ばれていたグループが、現在はASDに含まれています。
DSMというアメリカ精神医学会の診断基準が、2013年にⅣ-TR(第四版)から5(第五版)に改定されて、これらはASDとして統一されました。
しかし、国によって診断名の使い方は異なります。例えば、イギリスでは現在も多くの機関でアスペルガー症候群という診断名が使われています。日本の厚労省が採用しているICD-10(WHOが規定している判断基準)ではアスペルガー症候群という用語が使われています。

ASDは一人ひとり異なる 対処法も一人ひとり異なる

自分で工夫』『医療機関』『専門機関』

ASDは一人ひとりの特性や困りごとが異なるため、対処法も個別に異なります。自分で工夫する方法もあれば、医療機関や専門機関に相談して支援を受けることもできます。

ASDの特徴や診断方法、相談先についても後半で詳しく紹介します。

ASDの原因は特定されていない

いくつかの原因→脳機能の働きの偏り→行動や考え方の特性

ASDの原因は特定されていませんが、何らかの先天的な脳機能障害が関与していると考えられています。いくつかの要因が組み合わさって脳機能の偏りが生じ、その結果に行動や考え方の特性が現れるのではないかと考えられています。
これらの特性が環境と相互作用することによって、こだわりが強くなってしまったり、人とのコミュニケーションが難しいなどの困りごとが現れます。

ASDの困りごとを軽減する対処法

ASDの特性からくる症状に合わせた
『環境調整』

ASDの根本的な治療法は開発されていませんが、ASDの特性からくる症状を軽減するための対処法の一つが「環境調整」です。
環境調整とは、その人の特性に合わせて物理的な工夫や周囲の協力を得て、困りごとが生じにくい環境を整えることです。

ASDのある人の環境調整のポイント

・視覚的にわかりやすく
・見通しをもちやすくする
・苦手な刺激を減らす

ASDのある人への環境調整のポイントとして「視覚的にわかりやすく」「見通しを持ちやすくする」「苦手な刺激を減らす」などがあります。苦手な状況を減らしたり、スムーズに行動しやすいように環境を整えたりして、困りごとが出にくいように工夫します。
しかし、自分一人では環境の調整が難しいこともあります。その時は、身近な人や職場の人たちに協力を仰いだり、医師や心理士などの専門家にアドバイスを聞くのも一つの方法です。

カウンセリングと心理療法

二次障害  
 └不安障害   
 └うつ病    
 └ひきこもり

・認知行動療法
 自身の考え方や行動のくせを把握して
 対処法を身につけることで私生活や仕事でのストレスを減らしていく

成人期に合併しやすい不安障害などの二次障害には、認知行動療法が有効であるといわれています。
認知行動療法では、自身の考え方や行動の癖を把握し対処法を身につけることで、私生活や仕事でのストレスを減らしていくことができます。

Social Skills Training

コミュニケーションに困難を感じる場合、ソーシャルスキルトレーニングで人との関わり方や望ましい振る舞いを学ぶことができます。わかりやく解説している書籍も多いので、本屋で確認してみるのもいいでしょう。

人間関係やコミュニケーションでの困りごと

・コミュニケーションや人間関係が苦手
 └私生活や仕事に影響する人もいる

ASDのある人の中には、コミュニケーションや人間関係が苦手で、それが私生活や仕事に影響を及ぼすことがあります。
人間関係やコミュニケーションの困りごとは、一人ひとり異なります。そのため、まずは詳しい状況を整理し、その上で自身の特性や状況に合わせた環境調整を行います。
また、自分の考え方や行動の癖を整えるための認知行動療法や、ロールプレイで望ましい振る舞いを学ぶソーシャルスキルトレーニングなどを通じて、改善方法を探ります。

対人関係やコミュニケーションでの困りごと

主な困りごと
・話が止まらず長時間話し続ける
・頻繁に確認しすぎるため「どうして何度も聞くのか」と言われる
・話している時に相手の目を見るのが苦手
・口頭での指示だと理解にズレが出てしまう

対処法
・目ではなく首元あたりを見るようにする
・メモを取ることで何度も聞かなくても済む
・メールやチャットなど文字でのやり取りを増やし 口頭でのやり取りを少なくする

具体的な困りごとが出たら、どうすればうまくいくかを考え、無理をせずにできる範囲の小さな工夫から始めます。
例えば、「目ではなく首元あたりを見るようにする」といった具体的な対策を試してみると良いでしょう。
また、環境調整の面では「メモを取ることで確認ができるようにする」「メールやチャットなど文字でのやり取りを増やし、口頭でのやり取りを少なくする」といった工夫が有効です。
こうして自分にできる対処法をいくつか考え、練習しながら成功体験を積むことで、不安も少なくなっていきます。

周りの人に自分の特性や苦手なことを伝えて正しく理解してもらうことが重要
・「具体的な指示をいただけると理解にズレがなく 仕事が進めやすいです。」
・「あやふやだと不安なので こまめに確認させてください。」
・「話が長引いていることに気づきづらいので 遠慮なく声をかけてください。」

また、周りの人に自分の特性や苦手なことを伝えてやり方を共有し、協力を依頼することも重要です。
ASDの特性は「変わった人」「コミュニケーションがとりづらい」と思われることがあるため、正しく理解してもらうための対話が大切です。

対処法としては、「具体的な指示をいただけると理解にズレがなく、仕事が進めやすいです」「あやふやだと不安なので、こまめに確認させてください」「話が長引いていることに気づきづらいので、遠慮なく声をかけてください」といった形で、協力を依頼します。

ASDのある人の多くは、決まった手順を守ることが得意な一方で変化が苦手なことがあります。その特性が困りごとと繋がっているのであれば、環境を調整したり、考え方や行動の癖を見直して、うまくいく方法を練習することが大切です。

変化によって強い不安やパニックが起きる場合は、医師に相談することも検討しましょう。

こだわりの特性からくる困りごと

主な困りごと
・私生活や仕事で自分のやり方や価値観にこだわってしまい 業務に影響が出る
・優先順位をつけるのが苦手
・新しいことに取り組むのが苦手
・作業の進行がマイペースで 求められるペースに合わない
・急な予定変更があった場合 臨機応変な対応ができずにパニックになる

対処法
・変更はできるだけ早めに伝えてもらい 予定を組み直す時間をもらう
・作業はリスト化してパターンにする
・優先順位をつける
・何をしていいかわからない時に 相談できる人を見つけておく
・期日までに間に合いそうになければ 前もって相談する

ASDのある人は、物事の全体像を客観的に把握してから優先順位を決め、段取りを行うことが苦手なことが多いといえます。
また、その特性から、臨機応変な対応や相手に合わせたスピードが求められる作業が苦手なこともあります。相手には求められていない自分なりのこだわりが、仕事のスピードにも影響することがあります。

対処法としては、「変更はできるだけ早めに伝えてもらい、予定を組み直す時間をもらう」「作業はリスト化してパターンにする」「優先順位をつける」「何をしていいかわからない時に相談できる人を見つけておく」「期日までに間に合いそうになければ、前もって相談する」 などがあります。

仕事では自分での工夫はもちろん、可能な範囲で同僚や上司に自分の特性や得意不得意を伝えて、環境や業務の調整、解決方法の検討などでサポートを得ることも大切です。

環境に関する日常生活の困りごと

環境に関する日常生活の困りごと

『感覚過敏』『感覚鈍麻』

ASDの症状の一つとしてみられる「感覚過敏」や「感覚鈍麻」も日常生活での困りごとを引き起こします。ほとんどの人には問題ない蛍光灯の光やBGM、環境音、匂いなどが、感覚過敏のある人には耐えがたい苦痛に感じることもあります。
また、感覚が非常に敏感な人は、ストレスから頭痛などの身体症状が現れることもあるため、刺激を軽減する工夫をしましょう。

感覚過敏の特徴に関係する困りごと

具体的な困りごと
・周りの音が気になって集中できない
・職場の臭いで体調が悪くなる
・職場の照明が眩しすぎる
・声かけで肩を叩かれるなどすると強い不快感が生じる

対処法
・イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン、サングラスなど苦手な刺激を減らすアイテムを使う
・可能な範囲で照明の種類を変える、明るさを調整する
・光や音、匂いなどが気にならないように、デスクの配置を変えたりパーテーションを活用する
・周囲に急に体に触らないよう伝える

感覚過敏の特徴に関係する具体的な困りごとには、「周りの音が気になって集中できない」「職場の臭いで体調が悪くなる」「職場の照明が眩しすぎる」「声かけで肩を叩かれるなどすると強い不快感が生じる」 などがあります。
そういった場合には、まずは苦手な刺激を避けたり、減らしたりするための環境調整を行います。感覚の特性は多くの人には理解しづらいものであるため、理解と協力を依頼するためにきちんと説明するようにしましょう。

対処法には、「イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン、サングラスなど苦手な刺激を減らすアイテムを使う」「可能な範囲で照明の種類を変える、明るさを調整する」「光や音、匂いなどが気にならないように、デスクの配置を変えたりパーテーションを活用する」「周囲に急に体に触らないよう伝える」 などがあります。

感覚の特性は多くの人には理解しづらいものであるため、周囲の理解と協力を依頼するためにきちんと説明する必要があります。

特性理解と困りごとを減らす工夫

特性の組み合わせや強さ』     『二次障害など合併症の有無』

症状や困りごとの現れ方に個人差がある

・自分の特性をよく理解し「強み」と「弱み」を知ること
・自分に合った環境を作ったり「強み」を活かして「弱み」をカバーできる対処法を見つける

ASDは特性の組み合わせや強さ、二次障害などの合併症の有無によって、症状や困りごとの現れ方には個人差があります。
現在、ASDの治療方法は確立されていませんが、様々な工夫によって困りごとを減らすことができます。
まずは、自分の特性をよく理解し、強みと弱みを把握することが大切です。次に、自分に合った環境を作ったり、強みを活かして弱みである苦手をカバーできる対処法を見つけましょう。

医療機関と支援機関の利用

・18歳以上の人がASDの診断や治療を受けるにはメンタルクリニックや精神科 心療内科を受診
・発達障害者支援センター等の公的な支援機関に相談して、医療機関を紹介してもらう方法もある

大人になってから仕事などで課題に直面し、悩んで診断に至る人も少なくありません。
一人で解決が難しい場合は、周囲の人の協力や専門家のサポートを得ることが重要です。

18歳以上の人がASDの診断や治療を受けるには、メンタルクリニックや精神科、心療内科を受診します。 受診前には、これらの医療機関が発達障害を対象にしているかどうかを確認しておくといいでしょう。
また、発達障害者支援センターなどの公的な支援機関に相談し、医療機関を紹介してもらう方法もあります。 診断や薬物治療は医療機関でしか行えませんが、環境調整や対処法の改善は医療機関以外でも取り組むことができます。
自分一人で解決が難しい困りごとがある場合は、発達障害者支援センターなどの支援機関に相談してみるのも良い方法です。

最後に

以上が、ASD(自閉症スペクトラム)の特性と困りごと、具体的な対処法についての説明です。
困りごとを減らすための工夫や支援を活用して、社会生活や仕事での課題に対処していきましょう。