社会人として働き始めると、避けて通れないのが「敬語」の使い方です。特にビジネスシーンでは、敬語を正しく使えるかどうかで、相手に与える印象が大きく変わります。新人研修やマナー講習で一度は学んだものの、実際に会話の中で使うとなると、正しい表現かどうか不安になる方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、基本的な敬語の中でも特に重要な「尊敬語」と「謙譲語」の応用的な使い方を整理していきます。特に「間違いやすい表現」や「つい使ってしまう不自然な言い回し」を取り上げながら、すぐに実践できる言い換えのコツをご紹介します。

日常会話では「私が行きます」と言えば十分に意味は通じますが、ビジネスの場ではややカジュアルすぎます。
謙譲語を使って丁寧に表現する場合は「私が参ります」が適切です。
たとえば、取引先を訪問する予定を上司に報告する場面で、
と使い分けるだけで、相手に対して謙虚な姿勢が伝わります。「参る」は自分の行動をへりくだって表現する言葉であるため、相手への敬意を含む表現として自然に受け取られるのです。

次に取り上げたいのは「見る」という行為です。単に「見ました」と言うと、どうしても日常的でフラットな表現になります。相手の資料や作品などを確認した場合には、「拝見しました」という謙譲語を用いるのが望ましいでしょう。
例:
「拝見する」は、自分が行う「見る」という行為をへりくだることで、相手のものに対して敬意を表す表現です。ビジネスシーンでは頻繁に使う場面があるため、自然に口から出るようにしておきたいフレーズです。
「知っています」をそのまま敬語にしようとして「知っております」と言ってしまう方もいますが、これは謙譲語としては不十分です。
相手や相手に関わる事柄を知っていることを伝えるときは「存じ上げております」が適切です。
例:
ただし、一般的な事柄(天気や世の中のニュースなど)に関しては「存じております」が自然です。「存じ上げる」は人や相手に関わる対象に対して使い、「存じている」は情報や事実に対して使う、という区別を覚えておくと安心です。

「言う」に関しても、敬語の誤用が目立ちやすい言葉です。「私が言ったように」と言うと、どうしても上から目線に聞こえてしまう可能性があります。謙譲語を用いた「申し上げたように」を使うことで、角が立たず丁寧な印象を与えられます。
例:
このように一手間加えることで、指示や依頼をする際にも柔らかく、相手に受け入れられやすい表現になります。
会社でよく使う場面に「○○さんはいらっしゃいますか」という確認があります。このとき自分がその場に居ることを表現する場合、「おります」と言い換えるのが丁寧です。
例:
「おります」は「居る」の謙譲表現であり、取引先や目上の方に対して自分の所在を伝えるときに欠かせない言い回しです。電話対応でも頻出するため、スムーズに使えるようにしておきましょう。
ビジネスメールなどでよく見かけるのが「お伝えさせていただきます」という表現です。一見、丁寧に思えますが、実は不自然な二重敬語に近い使い方になってしまいます。
正しくは「お伝えします」で十分です。
例:
「させていただく」は本来、相手の許可を得て何かを行うときに使う言葉です。そのため「伝える」という自分の行為に相手の許可が必要なわけではない以上、過度な敬語になり、かえって不自然な印象を与えてしまいます。
では、「させていただく」は全て誤用かというと、そうではありません。正しく使える条件が二つあります。
この二つの条件がそろっていない状況で「させていただく」を使うと、過剰にへりくだったり、不自然に聞こえたりする原因となります。

敬語は「正しい形を知ること」以上に、「相手にどう伝わるか」という観点が重要です。特にビジネスシーンでは、一つひとつの言葉遣いが信頼関係に直結します。
今回ご紹介したポイントを整理すると次の通りです。
こうした基本を押さえることで、不自然さのない洗練された敬語表現が身につきます。初めは難しく感じても、日々の会話やメールの中で意識して使い続けることで、次第に自然に口から出るようになるでしょう。
敬語は単なる形式ではなく、相手への思いやりを言葉に表すツールです。正しく使うことで、円滑な人間関係と信頼を築くことにつながります。