ビジネスにおいて、電話は最も基本的かつ重要なコミュニケーション手段のひとつです。特に緊急時の電話対応は、迅速かつ的確な対応が求められます。適切な対応ができるかどうかで、問題の解決がスムーズになるか否か、さらには企業の信頼にも関わってきます。今回は、緊急時の電話対応における「悪い例」と「良い例」を比較しながら、電話対応の極意について詳しく解説していきます。
緊急時とは、交通事故や急病、設備トラブルなど、すぐに対応が必要な事態を指します。こうした状況下での電話は、情報が錯綜しやすく、当事者も動揺していることが多いです。だからこそ、電話を受ける側は冷静に状況を把握し、的確に対応することが求められます。
電話対応の第一歩は、相手の話をよく聞くこと。慌てて相手の言葉をさえぎったり、勝手に判断してしまうと、正確な情報が得られず対応が遅れる原因となります。反対に、冷静に聞き取り、的確な質問を投げかけることで、問題の本質を迅速に把握でき、対応策を立てやすくなります。
以下は、実際にあった緊急時電話対応の悪い例です。
悪い例
A:「やばいやばいやばいよやばいよ」
B:「ありがとうございます。○○商事、田中でございます」
A:「課長!中澤です。やばいです」
B:「なんだよ、そんな慌てて」
A:「事故りました。やばいです」
B:「事故?どこで?相手は?けが人は?」
A:「壁です、壁ですよ」
B:「壁?なんだそりゃ。単独事故って事?壁に車で突っ込んだって事?何やってんだよ、まったく。場所は?ケガしてないか?大丈夫か?おーい?聞いてる?単独事故で相手いないんだな?場所はどこだ?おーい、おーい?聞こえてる?とにかくまず警察に電話しろ。おーい、中澤君?」
(Bが電話を切る)
A:「あ、はい。わかりました」

このやりとりの問題点は次の通りです。
このような対応は、相手の信頼を失い、問題解決を遅らせるだけでなく、場合によってはトラブルを悪化させてしまいます。
続いて、良い例を見てみましょう。
良い例
B:「お電話ありがとうございます。△△会計事務所、山田でございます」
A:「あー、山田さん。中澤です」
B:「お疲れ様です」
A:「お疲れ様です。ちょっとやばいこと起こしちゃいまして」
B:「どうされました?」
A:「事故っちゃいました。結構大きく事故っちゃった。どうしよう」
B:「大丈夫ですか?」
A:「いやぁ、大丈夫ではないです。結構精神的にきてます。どうしたらいいですかね。まずいですよね。やっちゃいました」
B:「中澤さん、怪我はしてないですか?」
A:「怪我はないです。でもやばいな、どうしよう」
B:「どんな事故ですか?何とぶつかりました?」
A:「フェンスです、フェンス。近くの駐車場のフェンスを。あぁーまずいなぁ」
B:「中澤さん、警察には?110番は電話しました?」
A:「今さっき事故したばっかりで、まだそこまで頭回っていなくてしてないですね」
B:「わかりました。そしたら警察に電話できますか?110番です」
A:「はい、ちょっとやってみます」
B:「わかりました。じゃあ警察に連絡してもらって事故の届け出をしてもらって、落ち着いたらまた会社に電話ください。それでまた詳しい話聞きますので」
A:「かしこまりました。ありがとうございます」
B:「はい、落ち着いて。またじゃあ電話ください」
A:「はい、ちょっと落ち着きました」
B:「はい、失礼します」
A:「失礼します」

このやりとりから学べるポイントは以下の通りです。
緊急時の電話対応で押さえておきたいポイントを以下にまとめます。
どんなに相手が慌てていても、自分は冷静さを失わず、敬語を使って丁寧に対応しましょう。相手の名前を呼ぶことも重要です。名前を呼ばれることで、相手は「自分をちゃんと見てくれている」と感じ、安心感を得られます。
相手が話すことを遮ると、必要な情報が抜けてしまったり、相手の不安が増したりします。まずは相手に話し切らせ、適宜共感や確認の言葉を挟みましょう。
必要な情報を得るために、聞くべきことは具体的に質問します。例えば、「事故の場所はどこですか?」「けが人はいますか?」など、わかりやすい質問を心がけましょう。
緊急時は相手がパニック状態になっていることが多いので、「落ち着いてください」「大丈夫ですよ」といった励ましの言葉も重要です。
「警察に電話してください」「救急車を呼びましょう」など、必要な行動を具体的に伝えます。その際、相手の状況に応じて指示の仕方を変える柔軟さも求められます。
途中で電話を切ると相手は不安になります。相手が落ち着くまで寄り添い、最後まで責任を持って対応しましょう。
緊急時の電話対応は、企業の信用に直結する重要な業務です。今回ご紹介した悪い例と良い例を通じて、電話対応の極意は「冷静さ」と「相手への思いやり」であることがお分かりいただけたかと思います。

特に緊急時は、相手が混乱しやすく、情報の聞き取りやすさ、精神的なフォローが非常に重要です。電話対応者は、声のトーンや言葉遣いを意識し、相手の話をよく聞く姿勢を持つことが大切です。
また、的確な質問や指示を行い、問題解決に向けて相手を導くことも忘れてはなりません。電話対応スキルは日頃の訓練や経験を積むことで向上しますので、緊急時に備えて普段から意識的に取り組みましょう。