
商談や打ち合わせなどのビジネスシーンでは、会話の内容や準備した資料と同じくらい、最初に交わす「挨拶」や「座る位置」が重要です。第一印象は数秒で決まると言われており、最初に相手へどう対応するかによって、その後の関係性が大きく左右されることがあります。
本記事では、誤った例と正しい例を比較しながら、座席マナーと挨拶の基本を丁寧に解説していきます。特に初対面の相手や取引先の経営者など、目上の方との場面では注意すべき点が多いため、しっかりと押さえておきましょう。

ある商談の場面を想定してみましょう。
来訪した担当者が社長室に通されると、案内を受ける前に社長の斜め前に座ってしまいました。社長は「こんにちは」と挨拶をし、「どうぞおかけください」と言葉をかけます。担当者は「失礼いたします」と返しつつも、軽く世間話を始めます。
「今日も暑いですな」
「暑いですね」
一見すると自然な会話の流れに思えますが、ビジネスマナーとしては誤りが含まれています。
座席の位置が不適切
社長がまだ「どうぞ」と勧める前に、勝手に座ってしまう、あるいは上座に近い位置に無断で座ってしまうのは失礼にあたります。
挨拶が形式的すぎる
「こんにちは」という言葉自体は問題ありませんが、初対面やビジネスの場では「お世話になっております」といった一言を添えることで、相手への敬意や日頃の関係性への感謝が伝わります。
会話の切り出し方に注意が必要
「今日も暑いですね」といった天候の話題はアイスブレイクとして有効ですが、座席や挨拶が整わないまま交わすと、軽率な印象を与えることがあります。

正しい例では次のようになります。
社長が入室すると、担当者は立ち上がり、笑顔で挨拶します。
「こんにちは。お世話になっております。」
社長が「どうぞおかけください」と促した後に、「失礼いたします」と一言添えてから着席します。この流れだけでも、相手に対する敬意がはっきりと伝わり、信頼感を得やすくなります。
さらに座席についても、状況を踏まえて判断する必要があります。本来であれば、部屋の奥側が上座となります。しかし、例えば右側に事務所スペースがあり、人の出入りが多い場合には、形式的な上座よりも落ち着いて話せる場所を優先して席を選ぶことがマナーとされます。このように「原則を理解した上で、状況に応じて柔軟に対応する姿勢」も大切です。
座席マナーの基本
ここで改めて、座席の基本マナーを整理してみましょう。
上座・下座の原則
入口から遠い奥の席が上座、入口に近い席が下座とされます。来訪者が案内される際は、基本的に下座に座るのが一般的です。
案内があるまで座らない
相手が「どうぞ」と声をかけてから座るのが正しい流れです。先に座ってしまうと無礼に映ります。
臨機応変な配慮
会議室のレイアウトや通路の位置によって、必ずしも形式的な上座が最適とは限りません。たとえば出入り口に近い席が落ち着かない場合には、相手の状況を考えた位置を選ぶことが求められます。
挨拶の工夫で信頼感を高める
挨拶は言葉だけでなく、姿勢や表情も大きな要素です。正しい例のように「お世話になっております」といった一言を添えることで、相手との関係性を大切にしていることが伝わります。
立って挨拶する:座ったままではなく、必ず立ち上がって姿勢を正す。
視線を合わせる:相手の目を見て話すことで誠実さが伝わる。
笑顔を意識する:堅苦しさを和らげ、場を和やかにする。
特に経営者や役職者と対面する場では、形式に沿った挨拶とともに、自然な表情や声のトーンも信頼感につながります。
実践的な応用ポイント
会議や打ち合わせで複数人が参加する場合
誰がどこに座るべきか迷う場面は少なくありません。上座・下座の原則を理解していれば、自分から「こちらにどうぞ」と相手を案内することができます。
オンライン会議における応用
物理的な座席はありませんが、画面越しの第一印象も同じように大切です。開始時には姿勢を正して挨拶し、カメラに向かって軽く会釈するだけでも印象は大きく変わります。
日常会話の中での気配り
世間話をする際も、挨拶や席次が整ってから切り出すことで、自然な流れになります。「本日はお時間いただきありがとうございます。失礼いたします」と座ったあとに「今日は暑いですね」と話題を振れば、雑談もスマートに感じられます。
座席位置や挨拶のマナーは、一見すると小さなことのように思えます。しかし、こうした基本がきちんとできているかどうかで、相手から受ける印象は大きく変わります。
誤った例にあったように、無断で座ったり形式的な挨拶だけで済ませてしまうと、相手に「配慮が足りない」という印象を与えてしまいかねません。反対に、正しい例のように丁寧に挨拶し、相手の案内を受けてから着席するだけで、誠実さや信頼感を示すことができます。
ビジネスは人と人との信頼関係の上に成り立っています。座席や挨拶といった基本を大切にしつつ、状況に応じた柔軟な判断力を身につけることが、円滑なコミュニケーションの第一歩となるのです。