ビジネスの現場で日常的に行われる電話対応。新入社員研修やマナー講座でも必ず取り上げられるテーマですが、いざ実際に受話器を取ると、想定外の状況に戸惑うことも少なくありません。
そのなかでも意外に多いのが「間違い電話」。
一見すると単なる誤りであり、数秒で終わるような出来事に思えますが、対応次第で相手に与える印象は大きく変わります。
今回は、実際のやり取りの例を交えながら「間違い電話への丁寧な対応」について考えてみましょう。

電話が鳴ったら、まずは会社名と自分の名前を名乗る。これは電話対応の大前提です。
例えば――
「お電話ありがとうございます。〇〇会計事務所、△△でございます。」
この第一声がしっかりしているだけで、相手は安心して話し始めることができます。
ところが、間違い電話の場合、相手は「こちらが誰なのか」を確認しようと、少し戸惑った様子で質問してくることがあります。
実際の例を見てみましょう。
相手「◇◇関係事務所さんじゃないですか?」
こちら「当社は〇〇会計事務所でございます。」
相手「え?◇◇関係事務所さんじゃないの?」
こちら「そうですね、〇〇会計事務所でございます。」
このように、相手がなかなか状況を理解できずに確認を続けるケースは少なくありません。
ここで大切なのは、「否定の言葉」だけで返すのではなく、会社名を丁寧に繰り返すことです。
単に「違います」や「間違いです」と伝えるのではなく、
「当社は〇〇会計事務所でございます。」
と、繰り返すことによって相手も納得しやすくなります。
相手がどうしても納得できない様子のときは、電話番号を確認するという一手間が効果的です。
「恐れ入りますが、お掛けになった電話番号をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
と尋ねると、多くの場合「あ、番号を間違えたのだ」と気づいてもらえます。
実際のやり取りでは、
相手「0263-〇〇-〇〇〇〇にかけました。」
こちら「ありがとうございます。私どもの番号は下4桁が〇〇〇〇になりますので、少し違っていたようですね。」
と冷静に案内すれば、相手は納得し、感謝の言葉を残して電話を終えることができます。
ここで「違います、ガチャリ」と切ってしまうのとでは、相手に残る印象は雲泥の差です。
会話の最後に、
「恐れ入りますが、お名前をお聞かせいただけますか?」
「私は〇〇会計事務所の△△と申します。」
とやり取りする場面もあります。
相手は「誤って電話をかけた側」でありながらも、最後に「丁寧に対応してくれた方の名前」を覚えることで、心に良い印象が残ります。
ビジネスの世界では、ちょっとしたご縁から取引が始まることも珍しくありません。
間違い電話の一件すらも、未来のご縁に繋がる可能性があるのです。
もうひとつよくあるのが、会社名を混同してしまうケースです。
相手「▲▲商事の◇◇ですが、●●さんお願いします。」
こちら「▲▲商事の◇◇様でいらっしゃいますね。恐れ入りますが、当社には●●という者はおりません。」
相手「あ、じゃあ□□さんは?」
こちら「申し訳ございません、□□も在籍しておりません。」
相手「あぁ、◆◆会計事務所と間違えました。すいません。」
このように、相手が別の会社と混同しているときもあります。
そんなときに「いません」とだけ答えると、相手は不安や苛立ちを覚えてしまいがちです。
しかし実際に上のようなやり取りの中で、
「いや~、自分よく間違えるんですよ。その度にすぐ切られちゃって。でも丁寧にありがとうございます。」
と感謝されることもあります。
つまり「誤りを責めず、あくまで丁寧に案内する姿勢」が、相手の心を和らげるのです。
ここまでの事例から分かることは、間違い電話といえども会社の印象を左右する大切な接点だということです。
多くの人は「間違った側が悪い」と考えがちですが、対応する側が冷たければ、その人の印象は「不親切な会社」として残ってしまいます。
一方、丁寧な受け答えをすれば、「この会社は電話対応がしっかりしている」と感じてもらえるのです。

→ 安心感を与える基本のマナー。
→ 否定ではなく、肯定表現で相手を導く。
→ 相手に気づきを与え、納得してもらえる。
→ 誤りの中にも信頼を残せる。
→ 繰り返し間違える人にも、笑顔で接する姿勢が大切。
間違い電話は一見些細な出来事に思えますが、そこにこそ“電話対応の極意”が隠されています。
「どんな状況でも、相手に安心感を与え、会社の品格を示す」。
その心構えこそが、日々の電話対応を磨き、信頼を築く第一歩となるのです。