双極性障害(双極症)は、気分の波が大きく変動する精神疾患の一つです。躁(気分が高揚する状態)と抑うつ(気分が落ち込む状態)の両方が現れることから「躁うつ病」とも呼ばれてきました。統合失調症と並んで有名な精神疾患ですが、実は有病率でいえば双極性障害の方が多いとされています。
双極性障害は大きく分けて「Ⅰ型」と「Ⅱ型」があり、この二つの違いを理解することは診断・治療・日常生活での支援のいずれにおいても極めて重要です。本記事では、その特徴や違い、治療の考え方について丁寧に解説します。

Ⅰ型双極性障害の診断には「明確な躁状態」が必須条件となります。躁状態とは単に気分が明るくなることではなく、以下のような症状が少なくとも一週間以上持続するのが特徴です。
このような症状が強く出ると、仕事や学業、家庭生活に大きな支障をきたします。これが「Ⅰ型の躁状態は社会機能を損ねる」という重要な診断基準につながります。

Ⅱ型はⅠ型に比べて症状が目立ちにくい傾向があります。Ⅱ型の躁状態は「軽躁状態」と呼ばれ、次のような特徴を持ちます。
しかし、Ⅱ型では軽躁状態よりもむしろ抑うつ状態が長く続くことが多く、うつ病と間違われやすいのが大きな問題です。実際、うつ病と診断されている人の約1割はⅡ型双極性障害の可能性があるといわれています。

Ⅰ型とⅡ型は「程度の違い」だけではなく、脳科学的にも異なる特徴を持つとされています。
研究では、機能的MRI(fMRI)を用いて、感情的な刺激に対する脳の反応を比較すると次のような差が見られます。
このように、Ⅰ型は「感情が暴走しやすい」、Ⅱ型は「感情が鈍くなりがち」という違いが見えてきます。
Ⅰ型双極性障害の治療
Ⅰ型では、強い躁状態による衝動的な行動や怒りの爆発をどのように抑えるかが課題となります。治療の中心は薬物療法で、以下が用いられます。
薬によって気分の振れ幅を抑えることが、社会生活を安定させるうえで重要です。
Ⅱ型双極性障害の治療
Ⅱ型では抑うつ状態が中心となるため、うつ病との区別が難しく、治療方針を誤ると逆に症状を悪化させることがあります。
つまり、Ⅱ型は見逃されやすく、誤診によって適切な治療を受けられない人が少なくありません。臨床現場では「うつ病」と診断された患者についても、気分の波を丁寧に聴取することが欠かせません。

Ⅰ型とⅡ型ではカウンセリングの方向性も異なります。
つまり「感情の暴走を抑えるⅠ型」と「感情の鈍さを補うⅡ型」という違いが、支援方法にも反映されます。
双極性障害にはⅠ型とⅡ型があり、両者は次の点で異なります。
双極性障害は、本人や家族にとって日常生活に大きな影響を及ぼす病気ですが、適切な診断と治療により安定した生活を送ることが十分に可能です。特にⅡ型は見逃されやすいため、うつ病と診断された方も「気分の波」に心当たりがある場合は専門医に相談することをおすすめします。