
~知っておきたい薬の基本知識~
病院で処方される薬について、「先発品と後発品の違いって何ですか?」と疑問に思ったことがある方は少なくありません。特に「ジェネリック医薬品は本当に効果が同じなの?」と不安を感じる患者さんも多いようです。医師や薬剤師から説明を受けても、専門的な内容はわかりにくいと感じるかもしれません。
本記事では、先発品と後発品の基本的な違い、価格や効果の関係、精神科領域での具体例などを取り上げ、わかりやすく解説していきます。

先発品とは、新しく開発された「オリジナルの薬」を指します。ある製薬会社が長年の研究開発を経て新薬を完成させると、その成分には特許が与えられます。特許期間は通常20年間ですが、実際に薬を発売するまでには動物実験や臨床試験などで時間がかかるため、患者さんが薬を手にできる頃には残りの特許期間はおよそ8~10年ほどになっているケースが多いのです。
この間は「再審査期間」と呼ばれ、先発品メーカーだけがその薬を販売できる独占状態となります。再審査期間中には、市販後の副作用や有効性、安全性を再評価する調査も行われます。つまり、先発品メーカーは大きな開発コストを回収しつつ、薬の安全性を社会全体で確認していくわけです。

一方、後発品とは、特許が切れた先発品の有効成分を用いて、他の製薬会社が製造・販売する薬です。ジェネリック医薬品とも呼ばれ、日本では以前「ゾロ」と呼ばれた時期もありました。これは、特許が切れた直後に多くのメーカーから一斉に発売されたことからきています。
後発品は新しい有効成分を開発する必要がないため、開発コストが大幅に抑えられます。その結果、価格は先発品の約半額になるのが一般的です。つまり「ジェネリックが安い」というよりも、先発品は開発コストを回収するために高く設定されている、という考え方が正しいのです。

ここで多くの患者さんが気になるのは「効果や副作用は同じなのか?」という点です。結論から言えば、有効成分は同じであるため、基本的な効果や安全性は変わりません。
例えば、抗うつ薬「ジェイゾロフト」(先発品)には有効成分として「セルトラリン」が含まれています。後発品でも同じセルトラリンが使用されているため、うつ症状に対する効果は変わらないのです。
ただし、薬には有効成分以外にも添加物やコーティング剤が含まれています。1錠あたり25mgの有効成分が含まれていたとしても、錠剤全体の重さは0.5g程度あり、残りは添加物です。この部分は製薬会社ごとに異なるため、溶けやすさや体内での吸収速度にわずかな違いが生じる可能性があります。しかし、それによる効果の差はごくわずかであり、臨床試験によって一定の基準を満たしていることが確認されています。
実際には「ジェネリックに変えたら効かなくなった」と感じる方もいますが、その多くは心理的要因や体調の変動によるものと考えられています。もちろん個人差はあるため、合わないと感じた場合は医師や薬剤師に相談することが大切です。
精神科の薬の中にも、多くの後発品が登場しています。代表的な例を挙げると以下の通りです。
これにより、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)など主要な抗うつ薬は、ほぼすべてジェネリックで利用可能になっています。薬価が半額になるため、長期的に服薬を続ける患者さんにとっては経済的な負担が大きく軽減されます。
一方で、「ベルソムラ(スボレキサント)」など、一部の薬は特許期間が終了していても後発品が登場していないケースもあります。これは製造が難しい、または市場規模的に採算が合わないといった理由が背景にあると考えられます。

臨床現場でよく見られるのは、「先発品じゃないと効かない」と強くこだわる患者さんです。しかし、医師の立場からすると、先発品と後発品の違いはほとんどありません。それよりも、生活習慣の改善やカウンセリングの活用など、治療全体の質を高める取り組みの方がはるかに重要です。
もし薬の効果を実感しにくい場合、それは薬そのものの問題ではなく、他の要因(睡眠リズム、ストレス対処法、環境要因など)が影響している可能性が高いのです。
薬に対して不安を抱くのは自然なことですが、先発品か後発品かに過度にこだわるよりも、治療全体のバランスを大切にすることが、よりよい回復につながります。