いじめという問題は、残念ながら社会のあらゆる場で起こり得ます。小学校から始まり、中学・高校と成長の過程でピークを迎えることが多いですが、大学や社会人になってからも形を変えて存在し続けることがあります。決して「子どもだけの問題」ではなく、誰にでも起こり得る深刻な課題です。今回は「もし自分や身近な人がいじめられたらどうすればよいのか」という点について、具体的な対策や心構えをお伝えします。

いじめの場面に直面したとき、第一に考えていただきたいのは「安全を確保すること」です。特に、集団の中で陰口やからかいが始まったときには、その場に居続けることが大きな精神的負担となります。無理に耐えようとせず、思い切ってその場を離れることが必要です。
職場であれば、直属の上司に相談するのが基本の流れになります。学校であれば担任の先生に相談するのが一般的です。しかしながら、相談しても「勘違いではないか」「うちのクラス(部署)にはいじめは存在しない」と片付けられてしまう経験をされた方も多いのではないでしょうか。いじめへの対応は、相談を受ける側にとっても大きな負担であるため、「なかったことにしたい」という心理が働いてしまうことも少なくありません。
そこで大切になるのが、「相談し続けること」です。何度も相談を重ねることで、受け止める側も「さすがに対応しなければならない」と動かざるを得なくなるのです。

相談を続ける上で、極めて有効なのが 記録を残すこと です。
いじめを受けた日時、場所、具体的な言動を一つひとつ残していく。これが、後々大きな力を発揮します。
たとえば、LINEのグループから突然外された、侮辱的なメッセージを受け取った――こうした出来事はすぐにスクリーンショットを取り、プリントアウトしてノートに貼り付けます。そして「〇月〇日、誰からどんなことを言われたか」を詳細に記録しておきましょう。
加害者側は、自分がいつどこでどんな発言をしたかを鮮明には覚えていないものです。軽い気持ちで行った行為も、被害を受けた側にとっては深い傷となります。だからこそ、被害を受けた側が残す記録は非常に大きな意味を持ちます。詳細な記録があればあるほど、被害者の証言はそのまま信頼されやすくなるのです。
相談しても改善が見られない場合には、勇気を持って「飛び越える」ことも有効です。
学校であれば担任ではなく校長先生へ、さらに必要であれば教育委員会へ。職場であれば、直属の上司ではなくその上の課長や部長へ。上位の組織に相談が持ち込まれることで、相談を軽視していた立場の人も「上から指摘される」ことを強く意識し、対応を迫られるようになります。
もちろん、飛び越えることによって一時的に反感を買うこともあります。しかし、いじめをなくすためには、より大きな力を動かす必要がある場面も存在します。その際に役立つのもやはり「記録」です。客観的な証拠があれば、上位機関も動かざるを得なくなります。

残念ながら、いじめの解決には必勝法があるわけではありません。被害を受けた本人と、味方になってくれる人が覚悟を持って加害者やその背後にある環境と向き合わなければ、状況は改善しないことが多いのです。
相談を受けた側も、「中心から外れた立場の人」と共に「集団の中心にいる人」と戦わなければならず、大きな覚悟が求められます。担任の先生や上司にとっても、見て見ぬふりをしていた方が楽であることは確かです。それでも、勇気を持って声を上げ続けなければ、状況は変わりません。
時には、親や管理職といった「味方」までもが「勘違いではないか」と言うかもしれません。それでも諦めず、何度も訴え続けることが大切です。いじめられている側が「泣き寝入り」してしまっては、残念ながら何も変わらないのです。
いじめを受けている人が悪いわけではありません。いじめを行う側が悪いに決まっています。しかし、現実問題としていじめをなくすためには、被害を受けている側も「覚悟」を持ち、味方を作り、その味方もまた覚悟を持って加害者と向き合う必要があります。
「証拠を残す」「相談を続ける」「必要なら飛び越えて訴える」――これらは全て、被害者自身とその味方の行動にかかっています。方法論だけでなく、粘り強さと気持ちの強さが不可欠なのです。
人が集まる社会には、残念ながら常にいじめの芽が存在します。完全にゼロにすることは難しいかもしれません。それでも、私たち一人ひとりが「見過ごさない」「証拠を残す」「声を上げ続ける」という姿勢を持てば、必ず状況は変えられます。
今まさに苦しんでいる方へ。どうか一人で抱え込まず、記録を取り、信頼できる人に相談し続けてください。そして、場合によっては大きな組織を動かす覚悟を持ってください。いじめは決してあなたのせいではありません。あなたの行動が、自分自身を守り、また同じように苦しむ人を救う力になるのです。