生活習慣の大切さについて

生活習慣を「これ以上良くできない」レベルまで整える大切さ

生活習慣を「これ以上良くできない」レベルまで整える大切さ

「生活習慣を良くした方がいい」——これはおそらく誰もが耳にしてきた言葉でしょう。健康番組や雑誌、医師のアドバイスなどで繰り返し語られるため、すでに耳にタコができるほど聞き飽きてしまった方もいるかもしれません。しかし、ここであえて強調したいのは「生活習慣を良くした方がいい」ではなく、「生活習慣をこれ以上良くできない」というところまで徹底的に整えていただきたい、ということです。

なぜそこまで強調するのか。その背景には、うつ病や統合失調症、双極性障害、アルコール依存症など、精神疾患と生活習慣の深い関わりがあります。これらの病気に苦しんでいる方の多くは、特別に強制されたわけではなく、自分にとって自然だと感じる生活習慣を積み重ねてきた結果、病気の発症や悪化につながっているケースが少なくありません。つまり「自然なまま」に過ごしていると、心身にとって良くない習慣に陥ってしまうのです。

もちろん、精神疾患の原因は生活習慣だけではありません。脳の構造的・機能的な脆弱性も影響しています。たとえば、ドーパミンやセロトニンの伝達経路に弱さを抱えている方もいます。しかし、生活習慣の影響が大きいのも事実です。だからこそ、改善を目指すなら「自分の自然な流れに任せる」のではなく、あえて不自然と思えるほどに生活習慣を整える必要があります。

自然に任せると崩れていく生活リズム

自然に任せると崩れていく生活リズム

人間は意外にも「自然にしていると健康的な生活になる」生き物ではありません。たとえば気力が低下すると、多くの人はお風呂に入るのを面倒に感じます。夜はだらだら起きてしまい、朝は起きられない。食欲も偏り、1日1〜2食のドカ食いになりがちです。さらに、身体を動かすよりもゴロゴロしていた方が楽に思えてしまうものです。

実際、うつ病や統合失調症の方の多くが「朝は特に元気が出ない」「夜になると少し調子が上がる」という日内変動を経験しています。これは脳の働きや自律神経の関係で起こるものですが、放っておけば夜型生活が定着し、症状を悪化させる要因となります。

つまり「自然にしていると」多くの場合、生活習慣は乱れていく。だからこそ、意識的に不自然な努力を重ねて、健康的な生活リズムを維持する必要があるのです。

薬だけでは十分ではない理由

薬だけでは十分ではない理由

風邪やインフルエンザ、肺炎といった身体の病気は、薬を飲んで休養すれば比較的短期間で回復することが多いです。しかし精神疾患はそうはいきません。薬は症状を和らげたり安定させたりする重要な手段ですが、薬だけで根本的に改善するわけではありません。

精神疾患の改善には「生活習慣の改善」という努力が欠かせません。むしろそれこそが、薬以上に長期的な回復や再発予防のカギとなります。厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、これは医師として現場で患者さんと接する中で強く実感している現実です。

生活習慣改善の具体的なポイント

では「これ以上良くできない」ほどに整えるとは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。ポイントを整理します。

1. 就寝時間を早める

休職中や一人暮らしの方であれば、夜9時には就寝してほしいところです。たとえ早く寝すぎて夜中の3時に目が覚めても構いません。むしろその時間に活動を始める方が、夜更かしよりもはるかに健康的です。「日をまたがない就寝」を徹底することが重要です。

2. 食事は必ず1日3回、タンパク質を意識

人間の体はタンパク質で構成されています。そのため、タンパク質をしっかり摂らなければ健やかな心身は維持できません。肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などを毎食に取り入れることが理想です。加えて、ビタミンやミネラルといった微量栄養素も欠かせません。食欲がないときでもヨーグルトやバナナ、牛乳など、少量で良いので栄養を入れる努力をしましょう。どうしても摂取が難しい場合は、サプリメントで補うことも有効です。

3. 毎日入浴する

お風呂は単に清潔を保つためだけでなく、自律神経を整える役割も果たします。入浴によって全身の血管が広がり、指先まで血流が行き渡る。その後体温が下がる過程で副交感神経が優位になり、睡眠の質も向上します。できれば毎日、時間をかけて湯船に浸かることを習慣にしましょう。

4. 運動で汗をかく

適度な運動はメンタルの回復に欠かせません。筋肉を動かし、汗をかくことで心身のリズムが整います。特別なトレーニングでなくても構いません。散歩や軽いジョギング、ヨガなど、自分に合った方法で毎日少しずつ続けることが大切です。

「これ以上良くできない」レベルまで整える意義

「これ以上良くできない」レベルまで整える意義

こうした生活習慣を徹底的に整えてもなお、なかなか症状が改善しない方は確かに存在します。しかし、私の経験上はごく少数です。多くの方は、生活習慣を本気で「これ以上は無理」というレベルまで改善すると、確実に回復の兆しが見えてきます。

もちろん「厳しすぎる」「そんなことできない」と感じる方もいるでしょう。しかし、自然に任せた生活習慣の延長線上に病気があるのだとしたら、その延長線上から抜け出すには意識的な努力が必要です。

おわりに

生活習慣を整えることは、誰にとっても簡単ではありません。とくに精神疾患を抱えている方にとっては「不自然」な努力を積み重ねるような感覚になるでしょう。しかし、その努力こそが薬では補えない部分を支え、心の回復につながります。

どうか「生活習慣を良くする」だけでなく、「これ以上良くできない」と胸を張れるほどに徹底して整えてみてください。それが回復への最短の道であり、再発を防ぐ大きな力になるのです。