企業や店舗で接客をしていると、避けられないのがクレーム対応です。中には理不尽とも思える内容のクレームを受けることもあります。しかし、たとえお客さまの言い分に無理があるように感じても、感情的に対応してしまっては事態はさらに悪化してしまいます。そこで今回は、実際のやりとりの例をもとに、理不尽なクレームに対応する際の基本的なポイントを整理してみましょう。
あるお客さまから、次のようなクレームの電話が入ったとします。
「1か月くらい前に洋服を買ったんだけどね。明日着て行こうと思って洗濯したら縮んじゃったんだよ。縮んでもう着れなくなっちゃった。どうしてくれるの?」
突然の強い口調に動揺してしまうこともあるでしょう。しかし、ここで大切なのは「冷静なふり」を貫くことです。内心は驚いたり焦ったりしていても、声のトーンや話し方は落ち着きを保つことが求められます。
たとえば次のように応じます。
「そうだったのですね。それは大変なことでございます。まず、お買い求めいただいた服がどのようなものだったか、教えていただけますか?」
このように冷静に質問を返すことで、相手の感情に引きずられず、会話の主導権を保つことができます。
理不尽なクレームの多くは、相手が感情的になっている状態で発せられます。そのペースに巻き込まれると、こちらの言葉も乱暴になったり、早口になったりしてしまいがちです。あえて「ゆっくり話す」ことを意識することで、落ち着いた空気を保ちやすくなります。
例:
「今回、まだ一度もお召しになられる前にお洗濯をされたということで、お間違いございませんか?」
焦らず、確認を重ねる姿勢が信頼感につながります。
お客さまが「せっかく買った服が縮んでしまった」という状況でショックを受けていることは事実です。その気持ちを軽んじる発言は避けるべきです。
「お客さまのご心情、深くお察しいたします。大変申し訳ございません。」
このように相手の気持ちに寄り添う一言を添えることで、対立姿勢を和らげる効果があります。
実際には、洗濯方法や使用した洗剤などによって縮みが生じることも多くあります。しかし、そこを直接的に指摘すると「責任転嫁」と受け取られてしまう可能性があります。
「恐れながら、少しお伺いしてもよろしいでしょうか。洗濯の際にご使用になられた洗剤や、洗濯機のコースについて教えていただけますか?」
と、あくまで「確認」という形で丁寧に尋ねます。ただし、相手が強く拒絶した場合は、深追いしすぎないことも大切です。
クレーム対応では、相手が話している最中に口を挟むのは禁物です。相手が一通り話し終えてから応答するようにしましょう。相手の発言を受け止める姿勢を見せることで、不満のエネルギーを落ち着かせることができます。
クレームの場面では「上司を出せ」「責任者を呼べ」と言われることがよくあります。しかし、ここで安易に上司に交代してしまうと、「担当者は役に立たない」と受け止められたり、今後も同じ要求を繰り返されやすくなります。
「大変失礼いたしました。責任者は現在席を外しております。まずは私の方で詳しくお話をお伺いし、社内で検討した上で改めて対応をさせていただきます。」
このように伝えることで、その場を乗り切りつつ、会社としての正式対応につなげることができます。
理不尽なクレームでは「誠意を見せろ」という抽象的な要求が出ることもあります。ここで即座に金銭や品物を提示してしまうのは危険です。安易に補償をしてしまうと「要求すれば応じてもらえる」と学習され、以後も繰り返される可能性があります。
対応例:
「お客さまがおっしゃる『誠意』について、具体的にどのような形をお望みでしょうか。万が一、私の解釈を誤りますと、かえってご迷惑をおかけしてしまうことになりますので。」
このように冷静に確認を取りつつ、会社としての判断を待つ姿勢を崩さないことが重要です。
クレーム対応においては、「今すぐ答えを出そう」とする必要はありません。むしろ拙速な判断はトラブルを拡大させる原因になり得ます。
「まずは詳しい内容をお伺いし、上司や関連部署とも相談した上で、改めてご連絡を差し上げます。」
と伝えることで、冷静な検討の時間を確保できます。
理不尽なクレームへの対応は、精神的にも大きな負担となります。しかし、次のような基本姿勢を守ることで、トラブルを最小限に抑えることができます。
こうした姿勢を徹底することで、社員一人ひとりが安心して対応できる環境が整い、組織としてもクレームリスクを減らすことができます。