私たちは普段、食べ物を口にするのはお腹を満たしたり、栄養をとったり、味を楽しんだりするためです。しかし、中には「食べ物ではないもの」をどうしても口にしてしまう人がいます。例えば氷を何度もかじってしまう、紙をちぎって食べてしまう、土を口にしてしまう、といった行動です。
一見すると「ただの変わった癖」と思われるかもしれませんが、そう単純なことではありません。そこには心や体からの「助けて」というサインが隠れていることがあります。この記事では、このような行動をここでは「異食行動」と呼び、その背景や向き合い方について、できるだけ分かりやすくお伝えしていきたいと思います。
異食行動のことを、英語では「ピカ(Pica)」と呼ぶことがあります。この言葉はラテン語で「カササギ」という鳥の名前に由来します。カササギは光るものや小石など、食べ物ではないものを好んで集める習性があります。その姿が、人間が食べ物ではないものを口にしてしまう行動に似ているため、この名前が使われるようになったのです。

異食行動といっても、その内容は人によってさまざまです。よく知られている例としては、次のようなものがあります。
これらは単に「意志が弱いから起きる」ものではありません。多くの場合、「どうしても食べたい」という強い衝動に突き動かされているのです。本人も「やめたい」と思っているのにやめられず、そのことに苦しんでいるケースも少なくありません。
異食行動の中でも比較的よく見られるのが「氷をたくさん食べる」という行動です。特に夏の暑い時期には自然な欲求と混ざり合い、さらに強まることがあります。
実は、この行動の背景には「体が必要なものを求めている」というサインが隠れていることがあります。例えば、鉄分などの栄養が不足すると、人によっては氷を無性に食べたくなることがあるのです。単なる「冷たいもの好き」とは違い、心や体からの信号かもしれません。
土や粘土を食べてしまう行動もあります。これは専門的には「ジオファジー(大地を食べる)」と呼ばれることもあります。
一部の地域では、文化的な習慣として土を食べる風習が残っているところもあります。また、妊娠中に普段は欲しがらない食べ物を急に食べたくなることがあるように、体の状態の変化と結びついて土を食べたくなる人もいます。
髪の毛を抜いて口に入れてしまう行動もあります。これも単なる「癖」と思われがちですが、実際には心の不安やストレスとつながっていることがあります。髪を噛むことで安心感を得ている場合もあり、背景には心の緊張や落ち着かなさが隠れていることもあるのです。

では、なぜ人は食べ物ではないものを口にしてしまうのでしょうか。その背景には、いくつかの理由が考えられます。

異食行動は決して「変な癖」や「意志の弱さ」ではありません。それは、心や体が出しているSOSのサインなのです。
そう感じながら苦しんでいる人は少なくありません。その裏には、体の栄養不足や心の不安が隠れていることが多いのです。

もし周囲の人が異食行動に気づいたとき、ただ「やめなさい」と叱ったり、「変なことをするな」と否定したりするだけでは解決になりません。むしろ本人の孤独感や恥ずかしさを強めてしまい、さらに苦しみを深めてしまうこともあります。
大切なのは、「なぜその行動が出ているのか」を一緒に考えることです。
こうした視点を持って背景を探っていくことが、本人を支える大きな手がかりになります。
異食行動は誰にでも起こり得るものです。氷をかじる、紙を食べる、土を口にしてしまう…。一見すると不思議な行動ですが、その裏には「心や体が助けを求めている」というメッセージがあります。
大切なのは「やめればいい」と突き放すのではなく、「どうしてそうしてしまうのか」を理解することです。そこから、本人を支えるための方法が見えてきます。
異食行動を目にしたときは、「これはSOSのサインかもしれない」と捉え、否定せず優しく寄り添うこと。その姿勢こそが、本人にとって何よりの支えになるのです。